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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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めっちゃ痛い、肩もおなかも。

 空白・・・・・・何もかもが消えた世界の中でただ一つ、男の槍だけが目に映る。緑に汚れた槍・・それはなんだ?コイツは、イマ・何を言った、何を言っているんだ・・・


「まあ、カネは払ったから大丈夫だろ?ああ、人間の方は無傷だぜ?」


 コイツは何を言っている、カネは払った。なんのカネだ・・・

・・・おいオマエ・・なんの事を言っているんだ?


「スライムとチビのカネだ、一発でやっちまった。雑魚だったぜ、あれじゃあ高く売れ無かっただろな」

 耳の奥が熱い、入って来るコイツの言葉を拒否するようにジンジンと痺れを起こしていた。


「・・殺した・・のか」

 後頭部が熱い、目もおかしい、全身の感覚がぶれて現実感を感じ無い。


「ああ」にやけ顔の男の言葉、その瞬間オレの中の血液の温度下がった。

 足は勝手に動き、手は強くハサミを握ってた。


 左手のハサミは腹に、右手のハサミは男の首に走っていた。

ジャ・・キン!


 男の影を裂くように鋼が交叉し、空っぽの手応えに刃を水平に開き裂く。

(どこだ)ドコニ・ニゲタ。右周りに影の尾を探す。


「オイオイ、たかが魔物だろ?本気か?」

 耳障りな声が馬車の上から聞こえる、早く消さないと・・


 馬車の上に影が立っていた、(そこか)幌の骨を掴んで這い上がり横薙ぎに刃を振る。

逃げるな、殺す。頭にはそれだけしない。


 星影に隠れて男が跳ぶ、オレの目はソレを捉え追うように身体を跳ばす。

 ガチッ!!!鋼刃が止められ金属の火花が散る、


(なんで切れない、何が邪魔を?)


 鉄槍が切断の邪魔をする、(不快)なんで切れないんだよ。

二つに分けた刃を滑らせるように突きを放つ。


「チッ!マジか」にやけ顔の男が飛び退いて躱し、猫のように爪先立ち背中を丸めて

オレの顔を見ている。


 [追撃]男が立上がり息をして言葉を話すだけで不快だ。待ち構えている男に向かい足が動く。


「慌てるなよ」男の口が不快に動き、槍の穂先がオレのアバラを横殴る。

ミシッ!肺が押し潰れ呼吸が切れる。それが、なんだ。


 槍の根元には男がいる、柄に身体を滑らせ右のハサミを振り上げる。

男は槍を手放し、オレの肩に鉄のような手刀を突き刺さした。


 肩の骨を押さえられ前進が止る、それでも振り抜いたハサミは男の身体を逆袈裟に切り上げた。


 堅い、年輪を重ねた古木のように堅く弾力が鋼の刃を反発した手応え。

男の服を斬り、薄皮の裂けた男の胸から赤い血が流れていた。


 かなり深く突かれたのか左腕が重い、[中回復]熱が傷を被い回復が始まる。

向こうも同じように[中回復]を使って回復を始めていた。


 こちらが回復を始めたら、普通はそうするよな。

オレは、肩の傷が治る前に駆けだし、その首を狙う!


「死ね」


 一振りの横薙ぎは簡単にかわされ、上がらない左腕を身体で振り回すようにハサミを振る。


 ドン!今度は身体をぶつける様に腕を止められた。

「この距離なら、手が出ないだろ?いいから話を」


「[爆破]」男に身体を押さえられたゼロ距離からの魔法、振動と衝撃が身体を吹き飛ばし意識が一瞬切れる。


 不意を付かれた男の体勢が崩れているのが目に写る、瞬間切れた意識は繋がり振り上げた鋼刃が加速しその頭に振り下ろさせた。


「ユウ!止めろ!」

 ホフメンの声に身体が止り、男は起き上がり態に手刀を突き出した。

・・腹が!


 指先が腹筋を貫き、焼けた鉄の棒を刺さされたような痛みに身体が悲鳴を上げる。

「くそっ」痛みで泣きそうだ、ホフメンお前・・


「ピョートルは生きている!スラヲもだ!殺すな・・大丈夫か」

 大丈夫じゃない、すごく・・いたい。



「お前・・本気で殺しに来てんのな、焦ったぜ」


 自らの回復魔法で治療を終えた男は、いつの間にか勝手に水を樽から注ぎ出し、水を片手に寛[くつろ]ぎ始めていた。くそっ、こっちは見た目以上に重傷なのにな!


(コイツ・・やっぱりか)見た目・傷を負って見えたが、全て薄皮が切れただけでダメージ自体は入って無かったか。


(何が焦ったぜ、だ)


「お前の・・魔物な、アイツオレが馬車に入った瞬間真っ先に人間をかばいやがったんだ。人間を守る魔物だぜ?どんなヤツが持ち主か気になるだろ?」


 持ち主・・嫌な言い方だ、教会の人間ならそんな物かも知れないが・・


「そいつがどんなヤツかを知るには、そいつが何に怒りを覚えるかを知るのが一番早い」そうだろ?


「その為に、わざわざ槍に汚れを?」

 馬車の中で、一撃でのされたピョートルの鼻血、ソレを槍に塗り付けご丁寧に薬草と[不動封印縛]を施され動けなくなっていた。


「まぁな、レベルの割りに変な[騙し]が掛っていたからな。一応警戒してって所だ」


「それで、何かわかったか」おれにはこいつが、不気味なヤツって感じは抜けないんだが。


「・・仲間の為に怒れるヤツ・・って所はな、あとは滅茶苦茶だな自滅覚悟・・じゃ無いな、後先も考え無いって所か?」


 ・・後先か、そんな事を考えて戦えるのか?目の前の敵さえいなくなればいいんじゃないのか?


「仲間だからな」

傷つけられても何も感じ無いなら、仲間とも思って無いからじゃないか?


「ようやく仲間って認めたな、あとは・・お前さんが勇者かって話だが・・ああ、そんなに警戒するなよ、少し話を聞きたいだけだからよ」


 少し・・か、どうせまともには聞かないんだろうが・・[話も聞かず]ってヤツよりはマシか。


 おれは半信半疑のまま、ヤツ[ライヤー]の質問に答える感じで話し出し、今までの事を聞かせる事になった。



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