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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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信じる心・・コレを使えば・・

「無茶苦茶ですよ勇さんは!」「ぴゃぁぁぁ!!」

「そう怒るなって、ほら[中回復]」


 非難囂々[ごうごう]の仲間を治療し、どん引きしているホフメンを呼んだ。

全く、戦えば全力を尽くすのが戦士の礼儀だろう?お互い死ななかったんだ、そんなに怒るなよ。


「・・ピョートルさん?・・でしたか?・・その、この人はいつもこんな感じなんですか?」

 魔物!とか言ってたくせに、オレよりピョートルの方が距離が近い。

そしてオレは・・なにか避けられているような距離感・・を感じますねぇ・・。


「今日はいつもより・・マシな方だと・・チラッ・・ですよね?」

「違うぞ!誤解だぞ!いつもはもっと楽しくて愉快で、軽快痛快って、だよな?」

 警戒通解?・・文字が違うよ?


ゴラムは沈黙し、ホフメンは・・人間の事を信じないからだな、オレから距離を取っているのは。ウン!きっとそうだ!


 疲労した仲間の代わりに勇者が前に立ち、進む。鎖分銅を振り回し、目玉・トカゲニワトリを砕殺し、耐えた魔物には鎖を引いて鎌を投げる。


 死屍累々、シカバネと肉片と血液が通路に広がり、現れる魔物に魔法を唱えさせるヒマを与えない。常に先制攻撃と滅殺、仲間には怪我一つさせないぞ!


 どうだ?頼りになるだろ?チラリと背後を見て・・見てしまった。

青くなって口を押さえるホフメン、もう吐く物も無いのにな。その反対の手はピョートルの肩を掴んで支えて貰っている。


「・・大丈夫か、人間、これが弱肉強食、弱い魔物、こなければいい」

「ああ、ゴラムさん、ありがとう」


 ヤツ等だけ、仲良くなっていやがる。おかしいぞ?


 床がドロドロしている洞窟にホフメンがなれて来た頃、洞窟の奥でぽつんと置かれた宝箱を開けた。


[信じる心]・・像に埋め込まれた宝石は薄く光り、宝箱の中には宝石の名前が書かれたプレートと共に入っていた。


「・・なあ・・」なんというか・・今更感の溢れる宝石は見る者が見れば、価値ははかり知れないのだろうけど・・


「これが・・[信じる心]ですか・・父に聞いた事が有ります。ひとを・他人を信じれなくなった者が手にすると、ひとを信じられるようになるとか・・」


 ホフメンの一族は、皆が純粋でひとを信じ過ぎ。資産を騙し盗られ、ウソを見抜けず欺されて来たらしい。


「一族の中で産まれた一人が『これでは生きていけない』と精霊にお願いして、この宝石に[信じる心]を半分封じて貰ったと聞いています・・」

 お陰で人並みの生活が送れるようになったとか。


「宝石を砕けば、私達一族の者は元の[なんでも信じてしまう]ようになるとか・・ユウ、貴方はコレを砕きに来たのだろ?」そうすれば馬車でも宿でも簡単に奪えるからな。


そうなのか?知らなかったけど・・

「阿呆クサ、じゃあ売り物にもならないじゃねぇか」

 ホフメンの一族が馬鹿になる為の宝石なんか、恐くて道具屋にも持って行けない。


はぁ「最初の冒険はこんなもんかな、取りあえず・・帰るか」


(ひょっとしたら・・この宝石を守る為に魔物が?・・)

それ程凶悪でも無かったのは、その精霊とやらの契約に縛られていたからか?


「・・えあ?・・ああ、そうか。じゃあオレの家・・宿まで・・」

「一応、ホフメン家伝来の宝って事で、オヤジさんに見せてやろうぜ・・それで今回は残念会って事で酒と肴だ、カネの心配はいらないぞ。宿の売り上げに貢献してやるぜ!」


 冒険の成果は今一だったが、命を賭けて戦い手に入れた宝や銭での馬鹿騒ぎ、これも冒険の醍醐味だろう。


「じゃぁ・・この[信じる心]は・・」

「やる、オレ達が持っていても仕方ないし」持ち主が解っているんだ、オレが持っている必要とか意味が無い。


「もし必要だったら・・オヤジさんに見せた後で元の場所に戻す位はする。」無料でな。


 間違いとか手違いで持って来たのなら、元の場所に戻すのは持ち出したヤツの責任だろ?

 と言う事で、体力とか魔力を回復させる為にも飯食って休ませてもらう。

さあ帰ろうぜ、馬車の待つあの宿に。


──────── 


・・・すごいガン見してくるオヤジと、[信じる心]持つホフメン。悪かったな、攫[さらった]った感じになってしまって。


「・・息子が無事なら・・なにも言いますまい。酒と肴でしたか、別料金でご用意させていただきますよ」

「酒は良い物を多めに頼む、砂漠の酒には興味があるんだ」

 そう、酒は必要なんだ。オレ達にはな。


「おお、ゴーレムを仲間に・・どれ程、腕の立つ方と思いましたが・・」

 酒を飲ませ、和解したオヤジは仲間のゴーレムを見てオレの肩を叩く。


「ああオヤジ、こっちの騎士さんは魔法だって使うんだ。こう[中回復]って」

 こっちの酔わせたホフメンも魔物を恐れず、ピョートルの傍に座り魔法の真似をする。


・・あとな、スラヲが緑から赤色に変色しているのは・・酔っているからか?スラヲベスになってフワフワして相棒が座り辛そうになっているぞ。


 サボテンか竜舌蘭の樹液を発酵させ、蒸留した酒は火が着くほど強い。夜は寒くなる砂漠で身体を暖める為だろうが・・くっは~~キツい!


「この酒をですね、この・・かじゅつしゅで・・子供は薄めまして・・へへ」

「なんら~~子供だと~~」クキッ・・プッ・・ハ~~~喉が・喉が染みる・・・


 酒の回転が速かったオヤジが潰れた。

「水を飲んで・・やすまんれます・・」

「ああ、いい。ゴラム~~オヤジさんを運んでくれ~~」


「ピョートル、こっちは[解毒]~~たの~~」

「・・[解毒]・・大丈夫ですか?水・持って来ましょうか?」

 何かを察していたように酒の量を減らし、[解毒]まで使い、酔いから意識を保っていたピョートルがテキパキと動く。


「ほらスラヲ、お前にも[解毒]だ。水も飲みなさい」


「んんん・・良し、何とか大丈夫だ」

 まだ頭は熱いが、やっておくを済まさないとな。


「・・それで、結局は馬車泥棒ですか。確かに・・宝と言うには今一でしたが・・」

 ピョートルは、オレがホフメン親子を酔わせて眠らせ、馬車を奪う計画を立てていると推理したのだ!

 

 なんてヤツだ、オレがそんな酷い事をするとでも・・

「酒会の料金以上にお金を置いておき、『酔ってた見たいだが、馬車を売る約束をしたからな』とか一筆書いて砂漠を抜けるつもりだったのでしょう?」


 う~~んそれは良い案だ。

相棒が悪に染まってきた・・良い感じだ。

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