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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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戦いを終わらせる最後の武器は笑顔だね。

[魔盗]ピョートルの魔法が勇者の精神力を盗む。

(チッ、面倒な)


 回復と攻撃の魔法、それに織り交ぜて牽制攻撃と防御。

誰だ!そんな面倒くさい戦い方を教えたヤツは、そして前では力を溜めるゴラム。

 魔法力まで回復されて持久戦になったら、勝てるのか難しいだろうが!


 ゴラムの腕に絡み付いた鎖を手放し、二振りの刃に持ち替える。

(お前ら・・峰打ちとか期待するなよ?)勇者がニタリと笑う。


「お!おい!オレはどうすればいい!あいつらは・・あの魔物は、味方なのか敵なのか、どっちだ!」

ホフメンは鉄槍を構え、おろおろとオレ達の様子を見ている。


・・・・「ホフメンさん、しばらく待機・願えますか?・・前に出ると危ないので」

 ピョートルの言葉に身体を硬直させ、オレの顔をジッと見て・・どうしようって顔だ。


「どうしたいか解らない時は、とりあえずはなにもしない事だ。

 事態を観察し・理解してから冷静に判断しても遅くない。むしろ慌てて何も考えず行動する方が危険なんだよ」・・・それが必要な場合もあるっちゃあ、あるが。

 信じてくれるかな?


「・・ど・どうなんだ?信じて良いのか?」


「ピョートル!少しタンマだ!こっちを済ませる!」

「ハイ!」・・・いい返事だ、オレだと解っているのに戦いを続ける気なのも、良く解っているじゃないか。


「ホフメン!オレの言葉を信じる必要は無いぞ。ただ自分の頭で考え、そいつの言葉・行動が正しいか判断しろ!

 ホフメン、世界中の全ての人間・生物がお前を裏切っても、ホフメン・自分だけは裏切らないし、自分を裏切っちゃ駄目だ。


怪我も空腹も悲しみも怒りも、自分の本心を誤魔化し・裏切っていたら結局は傷が深くなるだけだ」

[自分を裏切るな][自分の事だけは、信じろ]


「・・それがわかれば、自分の信じた事だけは、信じる事が出来るはずだ。自分の頭で考えろ」


「・・信じる・・いいや無理だ、アンタの言葉は信じられない。人間なんて嘘つきの裏切り者ばかりだ・・誰も・・信じない・・・おれは・・オレは・・」

 大人の男が泣きそうな顔をするなよ、簡単な事だろ?


「いいか、自分の足を見ろ。地面に立っているヤツは誰だ?ホフマン、お前自身だろ?

手で顔を触れて見ろ、その手に触れたのは誰だ?ホフマン、お前だろ?」

 そこに立ち、そこで息をしている。同じ空間には一人の自分しか、いないんだ。


「いま自分がそこにいる、その当たり前の事から理解していけ。

裏切られて苦しんだ自分を、偽らず自分だと理解するしかないんだよ」


 誰もが理解してくれなくても、自分だけは本当の自分を理解しているはずだ。


「他人を信じなくても、自分を信じろ。自分だけを信じて、自分が信じるヤツだけ信じろ。

裏切られたら・・自分のヒトを見る目が悪かったんだと、未熟だったと思え。

 学習の機会だったと・次ぎに生かせ。


 他人に裏切らせてしまった自分の無力に怒れ。

 自分の力の無さに・・ヤツ等が裏切っても・・・力を付けて、仲間が安心して着いてこれるような自分を目指す切っ掛けだったと・・笑える自分を・・クソッ」

 強く無ければ・仲間を守れる位に強くならなければ・・もう笑えないじゃないか。


[自分を信じろ][自分が信じる、仲間を信じろ]

 自虐だな。オレ自身が、自分を本当に信じているのか?


「・・アンタは、強いんだな・・」

 逆だ、誰も信じられないから、自分だけを信じたい。もう誰も信じないから、自分が信じているヤツらが裏切っても、仕方ないと、予防線を張っているだけの疑心暗鬼なんだ。


「自分を信じる・・そんな事、考えた事無かったよ。・・そうだよな、自分だけは自分をホフメンを信じなけりゃぁな」


 槍を構えたホフメンはしばらく考え、「おれは、少し下がっておくよ。これはアンタ達の戦いなんだろ?」と。


「巻き込まれない様にお願いします。あと魔物が来たら大声で叫んで下さい」

「ああ、助けてやる・・正し、こいつらをしばいてからだ!」


 二刀の鋼を遠心力で振り回し、ピョートルの盾に火花が散る!

「いきなり!・・それこそ勇さんだ!」

「五月蠅い!しっかり防御しやがって!」


 勇者の強打は防がれ、その隙を突いて力を溜めた拳が襲う!


 ピョートルの盾を蹴り飛ばし、その反動で身体を後に飛ばす。

グハッ!(下がっても・・この!)拳の圧で身体が跳ね飛ばされる。


 擦っただけだと思ったのに、ダメージが痛い。

 二刀流の基本はやはり攻めだと思う、盾を装備したヤツ・身体が鎧みたいなヤツには二刀の受けは防御に一歩劣るから。


(それに、受けに回ったら勝てない、少なくともこいつらをボコれない)


 休まない、とにかく攻める。ゴラムの力溜め、気合い溜め、正拳突きをまともに受けたら[中回復]・・・[魔盗]コイツまた!


「いいかげんにしろよ相棒、勇さんもうオコだよ・怒」

「たまには負けて下さいよ、その為の仲間でしょう?」


・・・ぐぬぬぬぬぬんんんぐるえい・・しゃがぬうぅん・じゃるたん。


 言ってくれる、だがこっちも負けられない、意地があるんだよ!

「今から本気のレベルを上げる、参ったするなら今の内だぞ」


「・・仲間を殺す気なんて、しないですよね?」


 今までは試合、訓練の延長だ。だがここからは真剣、殺す気は無いが・・死んだらごめんってレベル。(死ぬなよ?)クケケケケ・・・


 壁を走り天井を蹴り[爆破]で目くらまし、二刀を持って独楽のように回った勇者はピョートルに向かう。


「受けます!」盾を構え踏ん張る一体と一匹。

「甘いんだよ!」ワザと最初の二刀を外し、逆手に持ち替えたハサミは牙の形となって盾と身体の隙間に突き刺す。ニヤリ!


[爆破]盾の内側で両手のひらを合わせ、爆発の魔法を喰らわせる。


ヒッ!兜の内から悲鳴が聞こえたが、容赦はしない。

「今度は[火炎線]だ、耐性があるからって、この距離でも耐えられるかな?」


 ぷぎゃ!悲鳴と煙、爆破の目くらましが煙と共に深く視覚を奪。

(けどな、そっちの巨体は丸見えなんだよ!)


 オオバサミを引き抜いたオレは飛び上がるように巨影に向かい、煙に攻撃をしようか迷うゴラムの背後に回る。


「よう、元気か?」なら解るよな?

 オオバサミを広げた勇者は、その巨体の首を二つの鋼で挟んでいる。

動くと切り取る、そんな笑顔にゴラムの拳から力が抜け落ちた。


「やはり、戦いを終わらせる最後の武器は笑顔だな」

 それは違う、そんな視線を感じたとか、感じ無いとか。


信じるって事を、説明するのはむつかしいなぁ。

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