走り回る魔物達をしばらく見ていた。
階段を降りて少し行った所でゴーレム背中が見える・・?少し小さい・・かな?
「オーイ、無事かー。待たせたな、もう安心しろ・・オレが来た!」・・んだけど・・な。
「ああ、良かった。私達を探しに来てくれたのですね」
・・・・
「私達、貴方がきっと探してくれるだろうと思って、待ってた・・」
・・だれだ?こいつら。
「・・・敵だな」
身体の縮んだゴーレムと彷徨[さまよ]っている鎧はオレの言葉にマゴマゴと・・
マゴマゴ?・・面倒なので彷徨っている鎧を壁に蹴飛ばし、
開いたオオバサミで鎧の兜を挟んで、壁に縫い付ける。
「なぁお前ら?こっちはお客さん連れていて、余裕が有るわけじゃないんだ。ふざけてるなら後にしてくれないか?」
・・・ブルブル震える鎧はぐらりと姿を変え、ベロベロした妖怪ような・・・魔物?
「じょ・・冗談なんだ、入ってきた人間を脅かして、オレ達の住処から追い出したかっただけなんだよ・・お・・オレッチ達は人間なんか食わないよぉ~」
(・・ホフメンが生きて洞窟から出られてるから・・)それ程凶悪な魔物でも無いのだろうか。
信じるべきか、疑うべきか・・それが問題だ。
(普段なら、怪しいヤツは殺してから考えるんだが・・・今は・・なぁ~)
う~~ん、会話で解決できるか?
「それは、そうとして。お前らオレの仲間の格好をしてただろ?アイツらはどこだ?
お前等に殺られるようなヤツ等じゃないと思うが」
穴に落ちた時に怪我したとか、不意伐ち・騙[だま]し打ちとかで不覚を取らないとも限らない。
「言わないならそれでもいい、二匹いるからな。お前は頭の上から挟みで圧断して六等分にして見せしめにする、その次ぎは後のヤツだ。
アイツは足から六等分にしてにしてやる。二匹分の肉塊を組み合わせて三匹になりたくなければ・・・・知っている事は今喋れ!」
頭を挟む鋼刃がギリギリと壁を削り、ベロベロしたヤツの頭皮に密着・紫の血液っぽい物が頬を伝う。
「わ!解った!全部言う!酷い事は止めてくれ!そんな死に方はイヤだ!」
ベロベロしたヤツの一人が足元を指さし、挟まれたヤツも下に指を指して振るえている
・・下・・か。
「どうやって下に降りるんだ?」
ハサミから魔物を開放し、ホフメンと一緒に壁とか床を調べて・・
「べろべろ、下に行く方法は・・」こうだ!二人の魔物が床を強く蹴り・・床が割れた。
(・・落とし穴かよ!)
重力が消え暗闇に包まれたのは一瞬だった、床を調べていたオレは四肢に力を込め衝撃に耐える。
ガツン!という堅い衝撃、背後では壁を調べていたホフメンがジリジリと壁からずり落ちて来ている。
「手を・・放せ!受け止めてやる」信じないかも知れないが、手が疲れたらいい加減、落ちてこい!
両手を広げ待ち構えるオレの背後で、暗闇の中をドタドタと・・運動会でもしているのだろうか?元気な魔物達だな。
「・・つっ!クソッ!」
落ちて来たホフメンを受け止め・・睨まれた、感謝をする必要は無いが、睨まれるってなんだろうか。
ハァハァハァ・・・「いつまで走らせるんだ、話・・かけて・・来いよ・・ハァハァハァ・・!『ケケケ!・・ゲホッあいつらを食ったらなぁ・・スーハー・・次ぎはお前だからな・・ゲホッ・・』」
息が苦しそうな魔物は走りながら・・もう二人の魔物を追って走っていた。
ハーハーハー・・スゥ、『ケケケ!人間の生き血は・・ゲホッ!・・スゥーハー我ら魔物の・・息・・生き血・・ハー』
苦しいなら休めよ、悪いのは直ぐに降りて来ないホフメンが悪いんだからな!
(そして、何故また走る?こいつらは走るのが好きな魔物なのか?)
ゴホッ!げほ!・・ウェ!「吐きそう・・やっと・・助けに・・早く声をかけて下さいよ・・息が・・足が・・」
ヒーヒー・ハー・・「あいつらに・・一滴残らす・・血を・・ウッ」
一体の魔物が口から嘔吐[おうと]する、それに続くように二体目が・・
おう吐は続くよどこまでも・・
「うっ・・ユウ、オレも限界・・」ホフメンも貰いゲロを始めた・・・
「・・・アタシらだけ吐いて、アンタだけ吐かないなんてね!」
酸欠で顔色の悪い小僧と、さっきまで走っていたのに急に天井にぶら下がるコウモリ・・コウモリの方は限界のようだが。
(しかたない、しばくか)
振り上げた拳を下ろす・下ろさせる為にも勝敗を付ける必要がある。
そんな時も人生にはあるみたいだ。
顔色の悪い小僧の腹をワンパン!コウモリは[火炎線]でバタバタと落ちた、多分酸欠だな。
「まぁ、もう無理するなよ?・・オレの仲間は・・」
怒る気分も無くなった勇者の言葉に、泡を吹いて倒れている小僧とは別の小僧が階段を指さす。多分後ろに見える、アノ階段を上れって事だろう。
階段を上がって曲がりくねった通路を抜け進んだ先に、巨大な壁とその足元にいるスライムの騎士・・多分ピョートル達だろ思うが・・・(目線は合っているよな?)
「ああ、勇さん。助けに来てくれたのですね・・と言いたい所ですが、偽者かも知れないので・・・勝負です!」
[火炎]ピョートルが炎の魔法を打ってきた、その背後ではゴラムが拳を構えている。コイツ等!
(・・そうだな、取りあえず。殴ってから考えるのがお前らだものな!)
魔物は実力主義の塊、口や頭より結果を出して見せないと意味が無いヤツらだからな。
「ユウ!あいつら仲間じゃないのか!」ホフメンが叫ぶ。
解るよ、仲間同士は戦わないってのが人間だろ?でもな、あいつらはどこまで行っても魔物なんだ、文化が違えば思想も違う。
(でもな、文化とか思想とか言葉が違っても解り合える物がある。腕力・武力と言う生物共通言語がな!)
勇者は素早く片刃を抜き、[火炎]を切り落とす。
[爆破]!反す刀で爆発呪文を唱え、空気を振るわせた。
「ちょっと待ってろホフメン、今こいつらを黙らせる」
行くぞお前ら!
鎖分銅を振り回し、洞窟の通路を削る度に不規則に跳ね返り暴れ回る。
「狭い場所ではゴラムは動き難いだろ?」その動けるスペースをさらに鎖分銅で奪ってやった。
ゴラムの渾身の拳は鎖で絡み取り、ふところにもぐり込んで手を触れ。[氷結]の魔法がレンガの体を凍らせる。
「はは!どうだ?熱い砂漠で生きて来たお前にはちょとキツいか?」オラァ!二発目だ!
「させません!」
飛び上がったピョートルはスラヲを掴み、叩きつける。
べちゃっ!重いんだか粘着質なのか、単純な質量に運動エネルギーがかかり痛重い。
オレの身体を叩き付けたピョートルが[回復]を仲間に唱える。
その為にスラヲを犠牲にするとは・・誰に似たんだ?
洞窟の魔物より仲間の魔物が強い時、混乱した仲間に気絶させられた記憶が蘇る。




