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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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馬車をもらうために、男を冒険に誘ってみた。

「世界は広い、砂漠の中で強敵を待つより、オレと来い!もっと強くなれるんだよ、お前は」

 強敵との戦いを求めているんだろゴーレム!

 そうでも無けりゃぁ、オレばかりに攻撃を集中しないはずだ。


「・・お前は、もっと強くなる、のか?」

「そう有りたい」なれるかは、解らない。

 もっと強くならないと駄目なのは解るんだけどな・・・才能が・・伸び代が・・素質が・・


「大丈夫ですよ、勇さんは強くなります。私が保証します!」

 相棒は良い事を言う、全くいいヤツだなお前は。本当に


「お前も、強くなった、のか?」

「ええ、スラヲの速度も上がりましたし、厚手の鉄鎧でもへっちゃらですよ・・ね?」

「ぴぇ!」スラヲとピョートルの感覚のズレが見える・・ような気がするよ?


「・・お前達は、強くなる、オレも強く、なる」

ゴーレムの目がひかり、俺たちを認めてくれたようだ。


「なら、契約は成立だな。今からオレとお前は仲間だ、・・ゴーレム?お前、名前はあるのか」

良し!新しい仲間、一緒に強くなって行こうぜ。そしてオレを守ってくれよ。


「[ゴラム]だ人間、『コンゴトモ・ヨロシク』」・・・・

 起き上がったら身体は治るんじゃ無いのか?

 崩れたままのゴラムは片手を差し出し、オレ達は手を掴み合っているんだが・・


(ひょっとしたら・・殺さないとダメなのか?)

・・無機物っぽい体だけど、回復魔法は通じるよな?


「回復は・・いるよな?ちょっと待ってろ」今、ピョートルの[中回復]をかけるからな。


「回復はいい、[瞑想]で再生する」そう言うと、ゴーレムの目の光りが消えて動かなくなった。


後で聞くと、粉々になっても砂漠で[瞑想]しているだけで再生し、たとえ死んでも砂漠の砂と太陽と[ピラミットパワー]で復活するらしい。


「だから、オレが死んでも、ピラミットで待っている」らしい。

・・・・・


「すごいな、ゴラムは」

 オレ達は、もうこうやって半日くらい布の下で影を作って休みながら、ゴラムの体のブロックが再生し、積み上がっているのを見ていた。


「・・回復をかけた方が早いのでは?・・確かにすごくはありますが」

 砂が少しずつ集まりブロックを作る、そのブロックがカタカタと動き出し、勝手に積み上がっていく姿は、透明人間の積み木遊びにも見えた。


(・・陽炎の中に、透明な魔物が隠れていたりしてな・・)

 [瞑想]を始め沈黙しているゴーレムに、[回復]をかけて大丈夫な物か、今は解らない以上待つしかないんだ、ゆっくり休もうぜ。


 勇者は寝転がり、風で揺れる布を天井に目を瞑る。

(風が乾燥しているからか、二重に天幕を張ったお陰で暑さが大分マシだなぁ・・・・)

少し寝た。


「すまない、待たせた」

 砂漠が夕日で染まる頃ゴーレムの巨体が立ち上がり、見下ろしているのか頭を下げているのか解らない。


「いや、いい」

装備を買ってやりたいが、[認識阻害]がどうなっているのかわから無いからな。

おまけに次ぎの目的地に向かうとしても、その巨体だ。行動は夜の方が都合がいいだろう。



・・・・遅い、砂漠だから動きが遅いのだと思っていたが違った。

ゴーレムは平地でも歩きが遅い種族だった。


(まぁ、急ぐ旅でも無いからいいけど・・少し考え無いと駄目っぽいな)


────────


 夜中じゅう歩き、日が上がる頃になってようやく目的の場所が見えてきた。

砂漠を越える為に必要な馬車を持つ男の家は、町から遠く一軒だけぽつんと建っていた。


(砂漠の端にある宿屋か・・なんでこんな所に・・)

 商人の情報は正確で、遠くからでも馬小屋と柵に囲まれた広場が見える。


「あそこか・・・家主と馬が怯えるから、この辺でゴラムは待機だ。ピョートル頼んだ」

 この三人なら危険は無いと思うが、阿呆[冒険者]が来たら判断は任せる。


(殺しさえしなければ、手足の4~5本は仕方ない犠牲だ。勝てないと判断したら逃げろって言ってあるし)


 うなずくゴラムとピョートル、なぜかスラヲも[キリッ]としているのは後輩が出来たからだろうか?


・・・先輩・後輩の垣根とか、関係無い無いパーティーにしたいんだけど・・・



「なるほど・・砂漠を越えるのに、私の馬車が必要だと・・」

 朝から宿屋の戸を叩き、頭を下げて紹介状を見せた勇者に、町から離れて青年と二人で住む男は難しそうな顔でうなり、腕を組む。


 男の持つ馬車は車輪も太く、車軸もかなり丈夫で世界中を旅する為に作らせたと言う、男の言葉に間違いの無い立派な馬車だった。


「しかし・・アレは私が腰を痛め、旅を諦めた際に息子に上げてしまい・・」

 その息子は部屋から出ない、全くの宝の持ち腐れになっていた。


「『仲間を集めて旅をする!』そう言っていたあの子は、最初の洞窟で酷い裏切りにあったようで・・もう他人を信じないのです」


 父親は困ったような、仕方ないような複雑な顔でオレを見る。

 町で買い物をする事もある男は、商人の紹介状を無視する訳にもいかず。かといって無理に息子から馬車を取り上げる事も出来ず、[理解してほしい]そんな感じだった。


 息子も方も、昼間は働き家事もする普通の・少し真面目な男らしい。ただ他人を信じないだけなのだと言う。


・・・まあ・解る、おれも同じだからな。息子が馬や猫に心を開き、世話する所も同じだ。

単純に[人間嫌い][人間不信]なんだろう。


「じゃあ、もし息子さんが馬車を譲る事を承諾すれば、譲っていただけるのですか」

 当然その代金も支払う事が前提で。


「・・アレは息子の馬車だからな、そうする事を認めるのであれば」

 その言葉を聞いたオレは笑顔で返し、そのまま馬の餌やりをしている男を捕らえて縄を打ち猿ぐつわを噛ませて担ぎ出す。


「さあ、楽しい冒険の始まりだ!」

 モガァー!モガァー!

 男も目を白黒丸くして喜んでいる、確か最初の冒険がどうとか言っていたな、まずはそこからだ!


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