ゴーレムFIGHT!・・レディ!・・Go!!
「つまり、馬車だ」
馬車があればスラヲの水分ボディーでも砂漠を越えられる、昔っから『砂漠を越えるには馬車か太った商人だ』って言うからな。
「スイマセン・・スラヲの為に・・」
「ん?違うぞ?馬車はいずれ必要だったんだ、それに仲間の為に必要な事をするのは飯を食うのと同じくらい当たり前の事だ。スマナイなんて言うな、思う必要すらないんだよ」
そうだなぁ・・そこは、『やはり砂漠越えは馬車が必要ですよね?なんで徒歩で行こうなんて考えたんですか?』くらいは言って欲しいところだ。
それに、ちょうどいい御者?も見つけたんだ。ヤツを勧誘する事も決定事項なんだ。
「まさか、ゾンビを仲間に?!確かに何度も何度も起き上がっては去って行きましたけど・・それかさまよっている鎧のヒトを?それとも回復スライムでしょうか?」
確かにヤツ等は何度倒しても懲りずに起き上がり、仲間にして欲しそうな顔をしているけれども。なんかこっちをチラ見しながら去って行くけれどもだ。 違うぞ?
特に「ゾンビは候補には無い、あれは違う感じがする」
大体スミスってなんだよ、オレの偽名がジョンでヤツがスミス・・ジョン=スミスなんて駄目に決っている。ジョン=タイターと同じくらい駄目なんだ!
世界線がどうにかしてしまう、オレの六感がそう危険視しているんだ。
ゾンビを仲間にする事は、それくらい危険なんだと!
「スラヲ、そんな顔をしても駄目だ。携帯食としても連れて行くわけにはいかない」
何と言うか・・本能が、ゾンビは駄目だと言っている。
世界が浸食されると言うか、関わると大変な事になるような・・ゾクリ、背筋が氷る感覚。
会話するだけでも世界が毒されるような予感がする。
「フフフ、解らないか?アイツだ。ゴーレムだ、死なないらしいしタフで丈夫、ヤツの拳を何度も喰らったオレが言うんだ。間違い無く『仲間に引入れるべきだ』とな!」
「確か彼は、砂漠の守護者と呼ばれてるのですよね?・・・・」
何故か非難されているような視線を感じる、違うぞ?拳で説得はするが・・酷い事は・・するかなぁ・・
(確かにピョートルを捕まえた時は、すまなかったと思うよ・・いつか埋め合わせはするさ・・たしか世界のどこかには、[雷神の剣]とか言うのが有るとか聞くし、見つけたら専用装備にするからさ、[ピョートル雷神]なんて格好いいだろ?)
「オレは殴り合った時に解ったんだ、ヤツは強敵を求めていると」キリッ!
・・なんだよ、その『ほんとうですかぁ?』見たいな感じは!本当だぞ。
ヤツはこんな砂漠に埋もれているような魔物じゃない、もっと世界に出られる逸材だ。今は少し強引かも知れないが仲間に勧誘する。そして世界中にゴーレム像が立つくらい有名にしてやるんだ!
────────
「と、言うわけだ。ゴーレム、お前が負けたらオレ達の仲間になって貰う。それが足の遅いお前から、逃げずに最後まで戦う条件だ。いいかげん、逃げ出すヤツ等との戦いは飽きているだろ?」
オレ達が負けたらオレは死ぬ、それくらいの対価は賭けるさ。絶対勝つけどな!
みかわしのマントで日を遮りながら、砂漠の周囲を歩きまわり。ヤツを見つけたのは最も昼の熱い時間。ヤツは陽炎をまとい、砂漠を徘徊しながら敵を探していたのだ。
GUggggG!
ゴーレムはオレの言葉に反応するように目を光らせ、拳を振り上げた。
「契約成立だな!ボロボロに切り刻んでやるから覚悟しろ!」
また悪役のような事を、そんな声が聞こえたような気がしたが、男は細かい事は気にしない!
どうやって直したのか、ヒビの消えた拳を正面から受ける。骨身に染みるいい拳だ、へへへ、お前・世界を狙えるぞ。
『ゴーレムFIGHT!・・・レディ!・・Goo!!!』
回り込むようにピョートルが剣を振り下ろし、金属の音を立てて弾き飛ばされた。
「コツコツでいい、とにかく正面からぶつかるな!」
真正面からぶつかるような馬鹿は、オレ一人で十分だ。
(それに、[魔法を使うな]だからな)
コイツを仲間にするなら、魔法は無粋感が酷く大きい。粋[イキ]じゃないそんな戦いで敗北させた所でお互い納得出来ないだろう?なぁ?ゴーレム!
技と技・剣と拳・その上で倒し認めさせる、ゴーレムにはそれが必要だと感じた。
「ヘッ、相棒は無視かよ・・・相手はオレだけって事だな?」いいね、ますます惚れたぜ。
二刀に別れたハサミを振り上げ、堅い腕に打ち込む。切っ先が入れば!
?(コイツ、腕を引きやがった!)昨夜の戦いで学習したのか?
四角い目がオレを捉え、左手が砂をすくう。横薙ぎの投砂、敵が一人であれば砂の量も少なくていいと考えたのか?
ペッ、「砂の量より速度を取ったのか!」小石が混ざった砂の波はまるで豪雨、昨夜の投砂が津波なら、こっちは暴風だ。
砂の暴風に怯んだ体に寒気が走る、ヤバイ!
砂煙の中から巨大な拳が、(躱せない!)
「勇さん!」どこかで声がした、スローモーションに見える岩塊のような拳はメキメキと体の中に音を立てさせ、肺の中から酸素を奪った。
ゲハッ!死ぬ!
吹っ飛んだオレをかばうように、ピョートルが盾を構えている。
(痛ぇ、死ぬ程痛ぇ!)
視界は赤いし足はガクガクする、打たれて無いはずの頭も痛いし息をするだけで痛ぇ。クソッ、手加減しろよ!
「大丈夫ですか![回復]」
「やめろ、そいつはだ・・駄目だ」
回復の光りを押し退け、振るえる体を何とか立たせる。ここからだ、死ぬなよオレ。
次ぎに拳を喰らったら、立てない。(ハハハ・・一応好奇心は満たされたか?昨日のオレ、一応立っているけど満身創痍だぞ)
それでも、立っている。ハハハハハ!!!すげぇ!
すげぇ痛みが痛すぎて笑えてくるぞ!!
はぁーはぁーはぁーーーーパチッ・バチッ、留め金を外す堅い音、そして砂漠の上に鉄の胸当てが落ちる。
勇者は鎧を外した、その鎧は重すぎたからだ。
堅く重い革靴を脱ぐ、その靴では思うように歩め無いからだ。
篭手も盾も外した、それらは邪魔になるからだ。
勇者はオオバサミを掴み、そして構える。自分の信じた身体と、叩き込まれた技。
それらを一つにし、目の前の強敵を倒す為に。
「なにしてるんですか!鎧を脱いであの拳が中たったら・・」
どっちにしても、死ぬ。なら、鎧は重い・盾も篭手もいらない・靴も動き難い。
真剣勝負ってのは、一撃でどちらかが死ぬもんじゃないか。
ゴーレムFIGHT、第一条、頭を破壊されたら、失格になる!




