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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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武闘僧は女の子?

 その為には殴るか切るか、魔法で弱らせる必要があるな。

今は・・ギリギリだな、まだ朝日が出て無くて助かったよ。


 武器を腰に差し両手を空にして構える、そのスタイル・構えに反応してスライム騎士が前にでて盾を構えた。


「無駄だ、お前の魔法は私には通じ無い。前の魔物を打ち倒しお前の小細工も粉砕してやる。先ずはそっちの魔物だ、覚悟しろ!」


 素早い拳の連撃に盾を構えたピョートルが耐える、一度引いてから水平蹴り、バックステップから跳び蹴り。好き勝手やってくれる。


「少し丈夫なだけの壁・カカシと変わらないぞ、今すぐぶっ壊してくれる!」

 拳に力を込め、腰を落とす正拳突き。


ガキィィィィンンン!!

 ゴーレムの拳と引けを取らない拳は、鉄の盾を鐘楼の鐘のように響かせた。


「終りだ!」ピョートルが攻撃をしてこない事を利用して、連続の力溜めと正拳突きを繰り出した。

「阿呆か、終りはお前だ」「「[氷結]」」


 空気中の霧と霞みから一気に温度を奪い、拡散する氷結。直接の威力は薄いが、湿度の高い空気を冷やすと水分が砂に落ちる。


「さらに[氷結]!」

連続で[氷結]を唱え、砂に染みこむ前の水分を氷らせた。

(元々夜風で砂が冷えてたからな、それにさっきまでの霧のお陰で空気中に十分、水も有った)


「少し冷えたが、それがどうした」

 ヤツが拳を突き出すのと同時に、オレが突っ込む。


?「なんだ、これは!」

足元の砂は一時的に氷り着き、ゴツゴツとしたヤスリのような地面に変わっている。

(その靴じゃあ、滑るような動きは出来ねぇだろ?)


 その隙をオレが見逃すはずが無い、

(どうせ斬撃耐性もある防具だ。オオバサミの本気の一撃を食らえ!)


 片刃の峰打ちではない、鋼の剣二本分の重量と遠心力、それに堅い地面で足の踏ん張りも効いた本来の威力だ。


 ザクッッッ!肉を切り堅い毛皮を裂く手応え、そのまま振り抜き・円を描くように体を回転させ二度目の円撃を・・・?


「ちょ!ちょまて、お前・・女か!?」

 白い肌、薄い胸元を守るようにしてあったサラシが切れ、腹筋の薄い白肌と少しの膨らみに腕が止る。


・・・?・・「キッ!貴様!」

 左の拳・・だったと思う、何かがチカッとしてゴンッ!となった。


 すまない、おれはなにを言っているか解らないが、実際なにが起こったのか理解できなかった。


 気が付けば馬乗りにされ、右手は胸を隠し、左拳を何度も打下ろすヤツがいた。

 素早く左回りに体をうつ伏せにして体を丸め、暴れ馬のように背中のヤツを弾き飛ばして逃げた。


軽い体重のヤツは簡単に転がり落ち、座ったままのヤツは、立上がったオレを見上げていたそして。

とても怒っていた。


・・・・沈黙、にらみ合うヤツとオレ、どうしよう・・


「いつまで見ているんだ、早くあっちを向け」

「・・お、おう」


「勇さん、どうなっているんです?向こうは人間の女なのですか?」

「・・どうも、そうらしい・・今の内に逃げるべきだとは思うが・・」

 

 服を破り、胸を覗いて逃げ出す偽勇者・・駄目だな、ただでさえ世間の目が厳しいのに別ベクトルで悪評が高まってしまう。


 サラサラと絹ズレる音と、ゴソゴソと着替える音と気配。

耳を集中してしまうのは仕方ないだろ、男なんだから。


「よし、取りあえずこっちを向け偽勇者」

「・・スマン、服を破くつもりは無かったんだ・・」破れるとは思ったけど、それは覗くためとかじゃ無かったんだ。


「その話はするな、忘れろ。お前もどうせ、つまらない物を見たと思っているんだろ」

 胸の所を何とか括り、オレの目がそっちに動くと手で隠してくる。


「正直に言う、綺麗だった」

 白くて女の子らしい腹と胸元、多くの女性を見た事は無いが、むさ苦しい野郎共の腹筋と胸筋とは比べようも無い。


「・・・・」何故か顔を赤くして拳を構える武闘僧の女、力を溜めて攻撃力が上がったのか?


「ホントお前は何なんだ、弱いくせに小細工ばかり、そのくせ・・嘘付きでひとを惑わせる、死にたく無いからって嘘ばかり、・・・・そうか!これがお前の手なんだな?」

 なにか悟ったような顔で目を開き、やる気をみなぎらせた武闘僧が拳にさらに力を溜めていた。


 困った。オレはガキの頃から『大人の言う事を聞け』『年寄りは大事にしろ』『女子供に手を上げるヤツはクズだ』その他、ヒトとして良い事をするように育てられている。


 男同士の喧嘩ならいざ知らず、年下の女の子と本気で殴り合う?それも腕にズッシリと重い、鋼の刃を使って?・・・無理だ。


「待てっ!少しまってくれ・・お前はオレが捕まったらどうなるか知っているのか」

 拷問を受けて死ぬ、死ぬ程いたぶられ、神も世界も呪うほど拷問を受けて殺され続け、勇者を交代させるつもりなんだ、やつらは。


「知らん!神官長様は、お前をもう一度神託の間に連れて行くと仰られたのだ。お前が勇者に相応しくないと、神様の神託を得た後の事なんか知るわけがない」


・・・その時のオレは、どんな肉塊になっているんだろうな。


「・・おれは、拷問されて、自分から勇者に相応しく無いと、心から思うまでいたぶられ、何度も殺され・生き返らせて殺すらしい。それでも・・それを知ってもオレを捕まえるっているのか・・」


 その時、おれはどう答えて欲しかったんだろう。

 味方してほしい、敵対するのを止めてほしい、無視してほしい・・多分そんな所だろうか。


「また嘘か!嘘ウソうそ・・ばかりだなお前は。教会がそんな事をするはずが無いだろう!」

 教会の光り・表の部分しか知らない少女は、オレの言葉を鼻で笑い、もう十分だとばかりに足先で地面の様子をはかり腰を落とす。


 そうだな、おれは嘘つきで臆病者だ。どうせ何を言っても聞いてくれないし、解ってくれるヤツなんていない。


 再認識したよ、ありがとう。

 オレはハサミを下ろし、鎌を外した。


 女子供を本気で殴るには枷になる、敵を殺す為の武器は[重すぎる]。

 殺せない武器・呪われた[胴の剣]お前なら、・・・本気でやってもヒトを殺す事はない、その程度の武器だろう?。


まあ、それでも殴り合うしか解決できない事もある。

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