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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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武闘僧[モンク]

(それだけじゃねぇんだよ!)


 武闘家は確かに早い、そして攻撃力も強く回避力も高い。

ヤツの言う[流砂功]ってのが本物なら、この砂漠で正面対決なんて阿呆のする事だ。


「ただし、おれも[爆破]を使う場合を除いてな!」


ピョートルの[爆破]を喰らいながらも突進してくる武闘家の目の前で[爆破]を起こす。

ざまぁ見ろ!確かにお前は強い、だが魔法を使えない武闘家なら、ただ早くて回避力の高いだけの獣に過ぎないんだよ!


「くっ、貴様も魔法を使うのか。だが所詮そんな初歩の魔法でどうにかなると思っているのか!」

ダメージを追った風のヤツは、魔法から身を守るように素早くガードの姿勢をとっている。


 [爆破]の砂煙りに包まれ飛び退いた武闘家に対し、オレは砂煙の中に突っ込んで行き、片刃を逆掛けに振り上げて切りつける。


チンッ!小手の金属板に刃が走り火花散る、不意伐ちの追撃は更に砂を巻き上げその目を狙う。


(ヤバイ!)直感的に身を引いて跳び下がり、ピョートルの護衛に戻った。

 武闘家のヤツ、きっちり防御してやがった!両手を横にしたガードの隙間から見える眼光が獲物を狙う獣の目だ。


「おしかった、今の攻撃で突っ込んでいたら渾身の右で粉砕してやった物を。砂漠で目潰しなんか当たり前の攻撃だ、私には通じ無い!」


 武闘家は守りの構えから攻撃の構えに戻し、真っ直ぐ突っ込んでくる。


(なんだ?同じ攻撃だと?突っ込んで来るだけじゃあ、通じ無いと解って無いのか?)


ピョートルの[爆破]、範囲攻撃の衝撃は方向さえ合っていれば必ずあたる。次いでオレの[爆破]を炸裂させる。

 自分の間近で破裂する魔力は、振動が骨と内臓を通り抜け、身体の中に流れる血に熱が混じる。


ゲホッ、「どうだ、いいかげん負けを認めろよ。お前には勝ち目なんて無ぇんだよ」

 こっちも限界が近いが、鉄と皮の防具がダメージを軽減している。向こうは所詮布の防具だ、ダメージは向こうの方が多いはず。


「・・フッ、知らないのか?偽者、拳聖の武具かただの武闘着なわけが無いだろ?」

砂と埃で汚れ見える武闘着は・・何所も破れていない?本人の顔と髪に負傷のあとがあったから、勘違いしていた、コイツの防具は普通の武闘着じゃないのか?


「東の国で作られた特別な糸で編まれた布から出来ている、軽さ丈夫さ、そして対衝撃対斬撃・対打撃、それに冷気と熱に強い特別製だ。お前の下級魔法なんか効くか!」

 ニヤリと笑う武闘家はダメージを負ったフリも止め、瞬きの間に拳の距離まで詰め渾身の拳が盾ごとオレを吹き飛ばした。


 魔物の体当たりを喰らったような衝撃、体が宙に浮き意識が飛ぶ。

ゴシャッ!背中にクッションが・・ピョートル??

「大丈夫ですか!」オレを受け止めた相棒が背中で叫ぶ。


「・・大・・丈夫だ、それよりアイツ。魔法が効いてない、どうしよう」

遠距離でチクチクとやってたら、勝てるだろうか?


「偽者め、さらに絶望を見せてやる[大真空]!」

 武闘家が魔法を唱えると風が巻き上がり、砂の竜巻が重なるように捻れ勇者に迫る。


 顔目鼻、体中に切り裂くような砂と空気の刃、素早く屈んで防御したピョートルは[大真空]をやり過ごし、オレの体は砂漠の中を引き摺り回されたようにスタボロ。


「~~つ!痛~~!![中回復]!・・ハァハァハァ、」死ぬ所だった!

[大真空]だと、コイツまさか僧侶の魔法を使うのか?


「その絶望の顔が見たかったんだ、お前みたいな偽者のせいで私達が味わった屈辱、怒り少しは理解したか?」


「・・知るか、お前こそ偽者だろ。武闘家じゃ無ぇのかよ」

まさかコイツ、転職組か?僧侶を転職して武闘家になったとか?

(・・・違う、こいつの歳で僧侶も極めず武闘家になるなんて、教会が許さない・・って事はこいつ・・)


「武闘僧・・[モンク]か?お前」

 教会の私兵、武器を持つ僧侶、戦う僧侶。普通は僧侶の才能に恵まれなかった人間が成る下級兵だ。


「良く知ってるな、偽者。だがお前の知識には間違いがある。

世の中には稀に、生まれ付き武闘僧・つまり武闘家と僧侶、両方の職業を与えられ成長する[ダブル]と言う人間がいる。それが私だ!」


・・・・卑怯、卑怯だ!狡い!ズルだ!チートだ!汚い!流石教会は汚い!


(そんなヤツがオレを否定し、オレを殴り・オレを拘束し、オレを殺すとか言うのか?

・・・ガキが、お前ら能力の有るヤツが本物で、おれは出来損ないなの解ってるよ。

 オレの取り得なんか死んで蘇る、魔王を殺すまで・精霊とか神がオレを見放すまで蘇るだけのちょっと強いだけの人間だよ・・生き返るだけの偽者勇者だよ)


 その取り得すら否定し、『死にたく無い!』って言って逃げ出したオレは、お前らからすれば本物の役立たずだろうさ。


・・・寒気がする、ちょっとだけ・・最近ちょっとだけまともになった気がしてたのに・・気持ち悪い[何か]から抜け出せたと思ってたのに・・


「勇さん!」

・・ああ「ああ大丈夫だ、まだいける」まだヒトとして踏ん張れる。


だから心配するな、勝つさ。こんな強いだけのヤツなんか、オレ達は何度も倒してきただろ?それにコイツからはあの悪魔神官ほどの悪意は感じ無いんだよ!


 ゴモリーやヤールほどの力の差も感じない、

(ただ、久し振りに知らない他人に否定されたのが、キツかっただけだよ)


「・・なあ、武闘僧。お前の目的はオレか?それとも魔物の殲滅か?」

 多分オレが狙いだろうが、確認は必要だ。それによって作戦を変える必要もあるし。


「?私が指令を受けたのはお前の捕縛、逆らえば殺して死体を持ち帰る事。だから抵抗してくれて構わないぞ。存分に無駄な抵抗をしてみせろ」


 ウン解った、お前の足を斬り飛ばして逃げさせてもらう。どうせ武闘僧、僧侶の回復魔法だって使えるんだろ?直ぐに回復をかければ繋がるだろうし。


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