怪しいフードの人影。
鎖分銅を砂に垂らして霧を進む、蛇のような後が砂に残るようにして歩き、元の場所に戻るような事になればわかるようした。
(何者だ?)どうせ魔物か悪魔関係だと思うが・・他人を巻き込むなよ、オレが今から殺してやるから。
しばらく歩くと鎖の後が繋がった・・なら右か左か・・・
取りあえず右に行ってみる。
どんな形の円かは解らないが、どこかを基点にして迷路の捻れを作っているはず。このまま線が十字に重なるか・・それとも二つ目の円になるか・・
・・・線は二つ目の円を作った。
(と言う事は・・空間じゃなく、感覚か?)
霧の中にいる人間の方向感覚を狂わせる、空間の捻れなら最初の線と何所かでクロスすると思ったんだけどなぁ・・馬鹿だからわかんねぇや。こうなれば力尽くで解決あるのみ!
そう『やはり暴力、暴力が全てを解決させるのね』と昔聞いた事がある。
「ピョートル、[爆破]だ、オレと同時に魔法を使って霧を吹き飛ばす」
それで多分何かか変わる、空間の捻れて反転してたら、、、衝撃がオレ達に返って来たりしてな。
「「爆破」」集中し、呼吸を合わせて魔法を放つ。衝撃と爆音、爆風が霧を飛ばし霞んでいた風景の中から町の姿が現れて見えた。
「良し、取りあえず宿まで急ぐぞ。一晩きっちり眠って砂漠用の装備を買って・・」
霧の晴れた方向に向かい、足を動かす勇者とスライムの騎士は町に近い所まで来て立ち止まった。
「勇さん、こっち見てませんかアレ」
真っ直ぐこちらを見ている様に立つフードの人影の視線、オレ達が右に動けば右に左に動けば左に動く。
「・・見てるな、大丈夫だ認識阻害がある、オレ達にはなにもおかしい所は無いはず」
馬車の商人も冒険者もスラヲには気が付かなかった、スラヲのヤツ・・スライム的に平べったくなってたんだぞ。
(本当に、なんに見えてたんだかな)
「そう・・ですよね」
跳ねる様に動くスライムの騎士は、勇者の少し後に続きフードの視線を交すように町に向かう。
「待て」
丁度、ピョートルがフードの横姿が見えるような位置まで来た時に声がした。
・・・気にすんな、無視しろ。アイコンタクトと手の動きで指示を伝え、聞こえ無いフリをしてそのまま歩かせる。
「お前!聞こえてるだろ!聞こえ無いフリをするな、解ってるんだぞ!」
大声でフードの人間が怒ったように声を上げて来る。
勇者は再度同じ合図を送り、無視する事に決めた。少し微妙な雰囲気をピョートルが出しているが、ヤツを見るな・顔を向けるな・相手をするなよ。
絶対面倒なヤツだ、関わらない方がいいと本能が言う。
多分[やから]か極道か、もっと面倒な人間の気配しかしない。
「おい?・・アレ?本当に聞こえて無いのか?なぁ?ワザとだろ?無視してるんだよな?・・?あれ?術で音も歪ませてしまったのか???」
・・・少しおかしなヤツだった。
(術?音も歪ませたって事はアレはコイツの嫌がらせだったのか?)
「待て!そっちのお前、ちょっと笑っただろ!解ってるんだぞ!」
すまんピョートル、オレ・顔に出てた見たいだ。
「?・・アレ、急に音が・・アレ?景色が、ようやく町か、良かった助かった」
取りあえず誤魔化しつつ、片手を目の上にして町を見つけたフリをした。
・・・どうかな?
「・・気のせいだったか、よし。「オイお前、待て!」」
フードも全部無かった事にして、『オイ、待て!』を言い直した。
「・・・オレ達の事ですか?」
フードの見ている方向にはオレ達しかいないんだが・・・イヤだなぁ・・
「お前の後にいるヤツ、お前はなんだ?どうして体から魔物の臭いがしてる?」
「・・昨夜魔物に襲われまして、戦っていたら魔物の体液が体に着いたんでしょう?
町の誰かに聞いてくれたらわかりますよ。
夜にレンガ・・ゴーレムに襲われた商隊があった?かって。それで逃げたら霧に囲まれ道に迷って、ようやくオレ達、町まで戻ってきたって所なのに・・」
『霧はお前の術のせいだろ?』そのせいで迷わされた、そんな感じで言えば罪悪感で見逃してくれるだろうか?
「・・おかしいな、お前達は砂漠から来たのだろ?それなのに何故そっちのヤツから・・スライムの臭いがするんだ?あの魔物は砂漠にはいない筈だが?」
スライム臭ってなんだよ!・・・うどんの臭い?
「さ・・さあ?よく解りませんね」
逃げるぞ、後手で合図を送り。じりじりと後退しながらフードから距離を取る。
勇者の背中にピョートルの影が重なるくらいの距離になった時、フードが気合いを上げた。
神聖に克する邪悪なる者よ、その動きを封じ歩みを止めよ!
[禁!]
「ぴっ!」スラヲが悲鳴を上げ、体を振動させた。
「[不動封印縛]魔力で動きを禁じる事で、相手を一時的に押さえる術だ。お前、私がそいつを押さえていなければ、そいつに後から襲われていた所だぞ」
・・・「それは・・どうなんでしょうか?」
(封印?・・魔物を封じたり眠らせたりするアレか?・・・何者だ?)
「知らないのも無理は無い、我らは世界の影で強大な魔物をあちこちで封じている組織の者だ。
危うく魔物が町に入り込む所だったんだが、これも我らの役目だ。その魔物はここで滅ぼしてやろう」
フードのヤツが自慢げに声を上げ、動けないピョートルに歩き近づいて来る。
『滅ぼす』だと?・・・そんな事、させるわけが無いだろう?
拳に力を込めたフードがオレの横を通る瞬間、オオバサミを振り抜いた。