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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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レンガ像との闘い、次は勝つ!

 振り上げた拳の脇をこするように二本の刃を走らせ、振り向きざまに両剣を叩き込む。

堅い・重い手応えの中に石を切るような感触。


 グォォォ

ヤツは痛みを感じない体で振り向き、左腕を突き出す。


(掌?)開いたレンガ手はハサミを弾き、オレの体を跳ね飛ばす。


 素早い勇者の動きに攻撃の面積を広げる事で対応する、背後に飛ばされ体勢の崩れた勇者に追撃の[投砂]、砂漠の砂を巨大なシャベルのような手ですくい上げ、その体勢のまま投げ付けた。


 散弾の混じった砂の雪崩れが全身を襲い、砂煙で視界が曇る。

「ペッ!ゴホッ!」無茶苦茶しやがって!


 単純な力と巨体、それに体の固さ。『存在がチートだ』とか泣き言を言えたらよかったんだが。


 勇者は砂煙の中、迷わず地面に伏せた。

カニのように・トカゲのように地面を這って動き、ヤツの背後に回ると重ねたオオバサミの先端で切りつけた。


 一本ずつが鋼の剣のような重さがある、それを遠心力を加えて叩き落とす。

ガリGggガガッギリ!!


 レンガの体に深い溝、ヤツが音に気づき振り向くと勇者は飛び退き地面に伏せる。


(二発目だ!)

 思いっ切り振りかぶり、ハサミを叩き下ろす。

ガリガキガキ!!

 火花を上げて二つ目の溝がレンガに刻まれ、直ぐさま地面に伏せる。


・・・? ん?なんだ?

 レンガ像は振り向かず、動きを止めている。


?・・・じゃあもう一回・・バレないようにこっそりと少しだけ動いて位置を変え、立上がってハサミを振り上げた。

 その瞬間、壁のような何かが真横から現れ勇者を撥[は]ねる。


ミシッ、ゴキッ!

 お!ぉお!完全に無防備な胴をはね飛ばしたのは、レンガ像の手の平。


 背中の死角しか襲って来ないなら、ワザと背中を見せ付けて、襲って来る勇者をはたく。

死角を死角で無くす、襲撃の場所が解っていれば迎え撃つことも簡単にできるとよんだのか?。


(ゴヘッ!それも、自分の防御と耐久力に自信が有るからだろ!)

 守りのタイミングが外れて攻撃を受けても耐えられる、そう考えての反撃。


(全力で打つ事に集中し過ぎた、クソ、アバラが折れたか?)

 息をする度に刺すように痛い、[中回復]ジワジワと胸に熱が上がり、痛みが和らいで行く。


([回復]でも良かったか?・・何度もかけ直す隙も無かったから正解か?

コイツ、見た目以上に考えてやがる)後は戦闘経験か?強い!


 回復の最中も拳をかわし、正面に立たない勇者に[投砂]が襲う。


(全体攻撃かよ!クソ!)

 躱せない攻撃を続けられると立っていられない、倒れたらそのまま砂に埋められる。


・・・なら、

「やってやる、正面対決だ」言葉が通じるかは解らないが、投砂をかいくぐり背後に立ったオレは宣言するように声を上げた。


 GGGooo・・

 レンガ像にも意思が伝わったのか、低い呻り[うなり]を上げて勇者と向かい合う。


 胸の痛みは消えた、呼吸も出来る。緊張はあるが、冷静だ。


[筋力集中]体中の筋肉を絞め、血圧を上げ心拍数を上げる。目に熱がこもり全身が熱い。極限まで筋肉を固め、吐き出す息と共に全身の力を抜いた。


 血圧と心拍で、血液は普段は使って無い筋肉にまで酸素を運ぶ。

数秒間の全身全力使用。


 ザッ、かけ出した瞬間に失敗に気付く。くそ、砂で足が取られる、スピードが遅い!

平地の半分ほどの早さで距離を詰める。


 レンガ像はその場で腰を落とし、正拳で勇者を向かい打つ。

ガキン!右の拳は勇者の剣を捕らえ、そのまま押しつぶす威力があった。


「負けるか!!!!!」

 左で受けた剣を肩で押さえ、右手に持った剣で左の剣を打ち押し込む。


 片手剣として威力を上げる為、刀身の上部が厚めに打ってあるハサミは厚い部分を打つと、刃が堅い魔物の体を押し切るように出来ているようだった。


 ビキッ!ビシッ!

 レンガの拳に片刃がめり込み、ヒビを作った。


「ハァハァハァ・・どうだ、片手は奪ってやったぞ、投砂はもうできないだろ」

 こっちも全力を超えたせいで体中がギシギシいっているが、ヤツの攻撃手段の半分は奪った。


(これで・・やっと五分くらいか・・)


 ゴゴゴゴゴ!!!

 ヒビの入った拳を引き戻し、正拳の構えを取る。やはりまだ戦えるか。


「戦士さん!こっちだ!」

 周囲全体の砂煙が落ち着き、どこか背後から声がした。


「戦士さん!馬車の方へ、魔物の数が増えてます!囲まれる前に!」

 あ゛?・・


 そうだった、商隊を逃がす為に時間稼ぎをしていた・・のか?

・・アレ?レンガ像を倒すのは目的・・?・・


「戦士さん急いで!」

チッ、舌打ちして馬車を睨み、レンガ像に向く。


「邪魔が入った!勝負は持ち越しだ!オレの1敗・1分け、次ぎは最後までやってやる!」


(空気の読めないヤツが!)

確かに助けに入ったやつを置いて逃げるってのも外道だが・・・


「ピョートル!撤収だ!馬車に乗れ!」

大声で叫び、ふところから鎖鎌を解いて取り出し・・鎌と鎖でオオバサミの持ち手を絡めて括る。


「ハイ!」返事が聞こえた時、完成[デス大鎌鎖[改]]

「コイツをぶん回す、怪我したく無ければ近づくな!」


 両手で鎖を掴み、大鎖鎌を振り回す。範囲・威力ともに[大]、空中の魔法コウモリが一撃で引き裂かれ、夜のていおうの皮膜が破れて落ちた。


ハサミをヒモでくくって振りまわすのは危険です。

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