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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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新しい装備、オオハサミ。

 一つ候補者達どうしでは争わない、一つ他国の介入は出来るだけ回避し、介入が確認した場合も教会を名乗らず、穏便に排除する事。


 一つ偽物に倒された者は、速やか帰還し治療を受ける事。信者への無用な情報提供はさける事。その他強力な魔物・魔族の介入があった場合は適時・適切な判断で行動する事。


「・・とにかく自分達は名乗らず、やる事やって帰って来いって事だな」

渡された指示書を指で挟み、ヒラヒラと風に遊ばせていたライヤーが要約する。


「魔族の介入があると教会は考えているようだな、なら魔物も倒し使命を全うするのみ」

 ライヤーの持つ指示書を奪ってふところにいれ、全ての準備を終えたヨシュアは神官の肩を掴んだ。

「行くぞ!」


「ハイハイ、ちょっとまってくれよ」

 ライヤーも神官の肩を掴むと神官は[旅の翼]を放り投げた。

目指すは偽勇者のいる[ランガ]

 翼は光りの輪を作り、男達を引っ張り上げ空に飛ばした。



───────


 ズッシリと重い鋼の刃を腰に差し、腹に鎖鎌を巻く。

 鋼の肩当てと、背中も包む鉄の胸当て(少し重いか?)グリグリと体を捻り、足を上げてみた。


「そんで、こっちが鋼の丸盾だ。要望通りだと思うんだが、持ってくれ」

 篭手に縛り着けるような丸い鋼の盾は、体を守ると言うより、敵の攻撃から身を逸らす為に使える重さを捨てて使い易さを求めた形だ。


「そっちは鋼の軽鎧だ、薄くはしたが、鉄より丈夫で軽い。中に挟んだ魔獣の皮のお陰で、衝撃も吸収出来るだろ」


 厚い鉄鎧から装備を変えたピョートルが鎧を叩いてみる。スラヲは少し嬉しそうだ。


「それと鋼の軽盾、少し大きいが鉄の盾より軽くなっている筈だ持って確かめてくれ」

 鉄の盾を薄く伸ばしてから同じ大きさに切りサイズを合わせ、鋼の棒板を縦横に張り硬度を上げてある。

「思ったより軽いですね、鉄の盾より・・二割ほど」更にスラヲが喜んでいる。そんなに重かったのか?・・・今後これ以上の重い装備が表れないといいな、フフフ。


「まあな、だが鋼鉄の盾よりは防御が弱い、忘れんなよ」

 少し嬉しそうな・・多分だが、角の生えたマスク半裸の男が親指を立てる。


「良い仕事だ、ありがとう・・これでオレも長生き出来るだろうし・・武器屋のオヤジ、長生きして良い武器を作ってくれよ?」

 おれがお礼に金貨を置こうとすると、オヤジがその手の上に手を乗せた。

・・・・


「わかったよ、生きてまた戻る。この武器がどれだけ凄いかはその時教える、無粋な事して悪かった」言葉以上の感謝はこれくらいしか知らないんだ。


「・・アンタがどんな生き方をしていたのは知らんが、カネだけが感謝を示す方法だけじゃねぇって事だ・・長生きできたら、その内酒でも奢ってくれよ。ハハハ」


・・・そうだな、おれが認識阻害無しでアンタに会う事が出来たなら、今度は一緒に酒でも飲もうか・・


 正体を隠し、名前も言わず、認識も誤魔化さないと笑い会う事すら出来ない。

(勇者って事がバレたら・・このオヤジもオレに石を投げるのだろうか?)


 はぁ・・「じゃあ達者でな」

 勇者は武器屋の扉を開けて、砂漠を目指す。最初の目的地は砂漠の中心、オアシス都市イシス、そして砂漠の向こうにある港町だ。


(海にさえ出れば、王国のヤツらも手出しが出来ないだろ)

 そこからは晴れて自由の身そう信じて、焼けるような砂を踏みながら、魔物の屍を踏み越えてでも逃げ続けるんだ。


「緑ガニ!リベンジだ!」早速出くわしたカニに新しい武器を振り上げる。

 緑のカニは目が合った瞬間[硬化]を唱え、真っ先にカニが硬質化し、殻が鉄の硬度を帯びる。


(その為にコイツがあるんだよ!)

両刃の剣に合わせるように片刃の刃が組み合わさり、本来の形を作り出す。


[大鋏]オオバサミと呼ばれるその形は、一方は形の変わった剣にしか見え無いし、もう一方も片刃の片手剣だ。


「それをこうやって、お前の足を挟めば」

バチンッ!


 テコの原理と挟む力の圧で堅い物が切れる。武器屋のオヤジは、堅い魔物を倒す為に工夫を凝らしたのだろう。簡単に硬化したカニの足が飛んだ。


(ハサミは突いたり叩いたりする物じゃない、が武器として使うなら、コレは挟むだけじゃ駄目なんだ)


 今度は分解して二本の剣として隙間に突き刺し、殻をこじ開けた。


「フハハハハ!!カニ共!ハサミはお前らだけの専売特許じゃないって事を教えてやる!」

 泡を吹いて威嚇するカニのハサミの根元に[オオバサミ]が食い込みバチンッと飛ばす。

[硬化][硬化]怯えるようにカニ共が硬化を始めるが、


「間接を硬化したら動けないよな?」

 次々にカニを足を飛ばし、殻の隙間に刃を差し込む。

(まさに蟹料理だ!緑色してなきゃきっちり喰ってやる所だよ!ははは!)


 ハサミ無双、カニも亀も斬り飛ばし、ゾンビは二刀流で斬り飛ばし、鎧は挟んで斬り飛ばす。

(片手剣にしては少し重い?、違うね、この重さが・重量が必要なんだよ)


片手剣は軽く作られているが、その分威力が落ちる。だが少し重くする事で、振り回す時に威力が上がるように作られているんだ。

 

 更に一方を防がれても、もう片一方の刃を差し込める。組み合わせれば、頭上を守らせて、その股からザクッと敵を両断出来る。


「・・・勇さん、凄く嬉しそう」

「解んないかなぁ、一人の武器職人が作りあげた傑作を、その限界まで使いたいって男の・・漢の気持ちが」

 オオハサミ、これは良い物だ。



・・・家庭科で裁縫用のハサミを振り回した経験があります。皆さんはそんな事しませんよね?

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