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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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魔物を倒すと、カネは振り込まれる。

(宿のオヤジには気付かれ無かったか・・それともオレの事はもう忘れているのか)

後は・・こっちだな。


 勇者の手には1枚の金属板がある、勇者・僧侶・魔法使い・戦士・盗賊・商人、彼等が魔物を倒す時、そこに魔物にかけられた懸賞金が記憶され入金される。


(職業神だっけか?魔物を倒す度にカネが手に入るとか・・ほんとは悪魔なんじゃないか?)

 勇者を指名した神、僧侶が祈る神・戦士が祈る神、人々が登録したり神殿から渡される金属板には、魔物の種類や数に応じて入金がされる。


 信者や王家・貴族からむしり取った[寄付金]が財源とか噂で聞くけど・・一度神殿を通すから教会なんぞが権威を振りかざすんだよ。

 しょせん他人から集めた金を分配するだけの、銀行業のくせに!あいつら嫌い。


(身分証としても使える・・ていうか、それがネックなんだよな)

 教会に行けば現金を引き出せる、店で使えばそのまま現金を持つ必要もない。

ただし・・使った場所、人物が特定される・・可能生がある。


 冒険者や職業持ちが大量のカネを持たずに戦えるのはこの金属板のお陰だ。それ以外にカネを手に入れる方法は魔物や獣から部位を剥ぎ取るか、ヤツらの落としたアイテムを売ったり、ダンジョンでカネになりそうな物を回収してカネに変えるくらい。


(レベルアップの声が聞こえるから、入金はされているはず。そのカネさえ使えれば)

新しい武器も防具も道具も買える。

 [変化]は店の人間は誤魔化せるだろうが、この板は無理だろう・・が、認識阻害なら・・


 城の近くでバッタ・カラス・ウサギ・スライム・アリクイ・お化け・芋虫・ムカデ・コウモリ、その他諸々を何年も狩り続けたんだ。多少は入っているだろう。



 スゥ─────

 よし、覚悟を決めたオレ達は金貨で買った[旅の翼]をふところに武器屋の扉を開く。

 中に並べられているのは、最初の町には置かれていない強そうな武器と防具の数々。


「いらしゃい!今日は何をお求めですか戦士のだんな」


 勢い良くオヤジの声が招き入れる・・・なんでこの男、上半身裸で角の生えたマスクをかぶっているんだろうか?


「・・大丈夫でしょうか?・・あの男、魔物じゃぁ」ピョートルが小さく耳打ちする。

「魔物が町で武器屋をやってるようなら、この町はすでに魔王の手に落ちているはず」

多分大丈夫だ、・・・・と信じたい。


「武器を見たい、それと防具も・・軽くて動きやすい物は有るか」

店の中に置かれた鋼の剣や鉄の槍、刃のブーメラン茨のムチ、それと大金槌・・


(これなら、鋼の剣1択なんだけどな)

なにか違う気がする。


「この辺の魔物は堅いのが多いでしょう?だから大金槌が売れるんですよ。でもその分重量がありますからね」


 威力は有る、が動きが鈍る上に動く敵に命中させるのは至難って事か。

「それを仲間で補う為にブーメランを使うのか」


「へぇ、後はムチで牽制[けんせい]とかですね・・どれも今ひとつって顔ですか・・う~ん」

 オレの表情を見てオヤジが腕を組む、客によって勧める武器を変えるのだろう。


「後は防具か・・鋼の鎧と鋼の盾、鉄兜か・・それと・・みかわしのローブ?魔法のローブか」

 薄いが軽く、敵の攻撃さえ見えているなら躱せると言われているローブ。


「兄さん、良い目しているねぇ。ローブもいいけどよ、どうだい?鋼の防具は。良い鉄を使って叩き上げているから堅さは自慢出来るぞ、どうだい?」

どうだ・どうだと鉄製の防具を進めてきた。


 厚い鉄鎧よりは軽くなる鋼の鎧、鉄の盾は・・オレが身に付けるか?

「・・ああ、それでなんだが・・この中にいくらほど残っている・・見てくれないか」


 心臓の鼓動が高まる、あのクソ神殿、クソ神のヤツが使用を停止していたり、犯罪登録していたり・・登録抹消していたら・・即座に店をでて逃げるしかない。


「・・?・・だんな、これは本人さんの物でしょうね?・・まぁ持ち主が死亡してたら神様の目ってヤツで、板の情報は消されますけど・・」

 武器屋のオヤジは怪訝[けげん]な声でオレを見る。


「間違い無くオレの物だ、現金の仕事が多かったからな、少し使って無かったんだ」

 そう言って金貨の入った袋をカウンターに置く、少し口を開くと金貨が見えただろう。


「この辺の魔物を狩って稼いだはずなんだが、よく解らなくてな」

 その土地に居着かない探検家や冒険者なら、魔物1匹を倒すとどのくらい入金されるのか知らないのは当然、怪しまれた時の言い訳も十分考えてあるんだ。


「なるほど、そうでしたか。確かにお連れさんはあんまり見ない感じですしね」

少しお待ち下さい、そういって武器屋のオヤジは裏に入って行く。


(落ち着け、顔に出すな・表情を変えるな・心拍・心音をコントールしろ・・・・)


 あちこち武器を見るフリをしながら、冷静を演じる・・?コレは・・


「お待ちどう、あんた・・・一体何者だい?」

 金属板を持つ男がマスクの向こうから目を光らせる、

(マズイ!バレた!)


「・・・」

「ああ、言いたく無いのは解った、凄腕の戦士さんなら名前を聞いて置こうと思ったんだよ。114730Gもあったぜ、すげぇなあんた」


「あ・ああ・ははは、見ての通り・・貧乏性でな、装備はケチるなってのは・・解っているんだが・・・つい・・な」

 革鎧や鱗の盾、皮の兜がボロボロになっていたのでソレを見せる。


「駄目だぜ、戦士さん。防具をケチって死んでもカネは教会に寄付されるだけで、墓が大きくなる訳じゃねぇんだから・・ハハハッ」

 武器屋ジョークと言う所だろう、少し場が和んだ。


「それで・・コレなんだけど・・売り物か」

 武器屋の片隅で蜘蛛が糸を張る錆びた金属の刃、鋼の剣のように重く片刃と両刃の対になった巨大な武器。


「・・ああ、まぁそうなんだが・・そいつは・・止めといた方がいい、使いこなせるような武器じゃねぇよ・・」


「それで、打ち直しと磨きを入れて調整したらいくらになる」

 多分オレが思っている物だ、そしてコイツは使い方しだいで強力な武器になる。


「・・本気か?・・そいつは確かに攻撃力は高いが・・それにソレは出戻りだ、それも二度も。意味解るだろ?」

 持ち主が使うのを諦めた。もしくは、使用者が死んで仲間が売りに来た。そう言う武器は曰く付きと呼ばれ、冒険者ならまず買ったりはしない。


「死者は死者を呼ぶ、いくらケチで貧乏性でも、そいつは止めときなよ」


「それでも、ここに置かれているって事は、それだけ造ったヤツが自信が有ったって事だろ?」

だから溶かれず置かれ眠っている、そうだろ?


「・・・オレのオヤジの力作だ、良い鉄・強い火、それを何日も叩いて作りあげたもんだ。お陰で[いわく]が付いた時、オヤジは引退しちまったけどな・・捨てられずにおいて有るんだよ・・」


「じゃあ決りだ、その力作・使いこなしてやる。あと鋼の鎧と鋼の盾と・・」

「待ってくれ!本気か?最初の客もそう言ったんだよ、ガキの頃にソレを買ったヤツを憶えている!

でも返って来たときは店に投げ捨てるように言ったんだぞ?

『こんな物、使えるか!』てな。

 形が珍しいから使って見たいってのは解るがよ、止めて置いたほうがいい」


「・・形が珍しいから?・・そいつは違う、これは機能的なんだよ、凄くな。作った人間の頭にあった使い方を、そいつは出来なかった、わからなかっただけだ」

 オレには解る、コイツは普通じゃない使い方をして始めて本来の使い方なんだ。


「・・アンタはオヤジの事を理解できるって言うのか?オレでも出来なかった事を」

武器屋のおやじは、マスクの中から覗き込むように勇者を見つめる。


「だったら証明してやるよ、オレがソレを使いこなし戦ってやる。口じゃ無く結果でな」

武器は使ってこそ真価がわかる、戦いの中でしか価値を示せないんだ。


・・・オヤジにソレを渡すと、『一日待ってくれ』と焼き直し・磨き・研いで置くと。

鎧の調整もその時にしてくれるらしい。


 後一日か、あまり長居はしたくないんだが。


魔物を倒した時にお金が手に入る理由、私なりに考えてみましたが、どうでしょうか?

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