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こっちが本物のお嬢さまか?

「ああ・・疲れた・・」クソ・・体がだるい・・が、臭い・・


「ゆ・・ジョンさん」

「ああ、疲れたな。湯・・借りれるかな」

 ピョートルが後から付いてくる、頭はハッキリしないが随分恥ずかしい事を言ったような気がする・・だから顔を見せるのは、小っ恥ずかしいんだよ。


「ジョンさん、私達は仲間でいいんですよね・・」

「当然だ、オレより先に死ぬなよ?まぁオレは死なないから、ピョートル達も死ぬ事なんて無いんだけどな」ハハッ。


 その為には、お互い強くならないとな。ああ生きるってのは大変だ。

でも・・まぁ今夜くらいは、もう休もうぜ。いろいろ有り過ぎたからな。


「頼りにしてますよ、ジョンさん」

「ああこっちもだ、頼らせて貰う・・という事で先ずは厨房へ行こうぜ。お湯を借りてこのくさい臭いを剥ぎ取とるんだ」


 湯を借りたら、次ぎは井戸だ。井戸で体が冷え切るまで水浴びしてから、ゆっくり湯に漬けたタオルで体を温め、体を拭く。

(背中くらいは拭いてやるぜ?相棒)そんな気分だった。



 

 夜が明けた、勇者の寝ぼけた頭にドアのノックが響く。

(・・スライムを水洗いしたら・・伸びるんだ、知らなかった・・)

 毒スライムのように広がるスラヲをしぼって丸くする、なんとも不思議な手触りだった。

「勇・・ジョンさん、お呼びですよ。早く起きて下さい!」


・・「あ・ああ、起きてる。起きてるから、そんなドンドンしなくてもいいから」


最初はコンコンだったノックの音は、カンカンと変化し今は拳で殴っているような暴虐の嵐になっている。扉の硬度は大丈夫だろうか?


「申しわけございません、お嬢様が・・『何としても起こしなさい』と仰ったもので」

・・「宮仕えの大変な所だな、直ぐに行くと伝えてくれ」


(何としても・・か、権力者の[何としても]は絶対良い事が無いよな・・ばっくれるか?・・)

駄目だな、領主が死んだばかりだし・・オレのいない間に何を言われるか解った物じゃない。


[欠席裁判]そんな単語が頭に浮かぶ、たしか・・訴えた者勝ちになるんだったっけ?

「イエ、私に案内するように言われてますので・・こちらに顔を洗う為のお湯も」

・・・


 寝ぼけた顔を洗い、寝癖頭を塗れタオルで押さえ・・

「下着を替えたいんだけど?」

「お手伝い、いたしましょうか?」

・・・出て行って欲しい。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか。頼むぞ、大きな音がしたら暴れ回りながら音の場所に来てくれよ?」

 屋敷の窓でも割って騒ぎを起こせば、こっちだって逃げやすくなる。

・・「放火以外でな?」


「ハイ!」「ピッ!」二つの頼もしい返事を聞いて部屋を出た。


「・・一応私もいるのですか・・」

「ああ、聞かせた。その方が警戒してくれるだろ?」

 二つの現場を警戒してくれるなら、監視と包囲の人数が減る。オレの方を捕らえるメリットは多いだろうが、魔物を捕らえるメリットは少ないだろうし、おれの逃げ足は結構早いぞ。


(普通は、魔物を人質するとかは考え無いだろうし・・)手を出せばオレを敵に廻す。

二つの面で警戒させておけば良いだろう。


 ダイニングに並べられた野菜とスープ、白いパンとそれに・・

「おはようございます、ジョン様。なにか?」


 邪悪な面を完全に隠し、見た目は上級貴族の笑顔で迎えられ、白いメイドは部屋の壁側に立って椅子を引く準備をしていた。


「肉・・はいらない」見るだけでも気分が悪い、こんな物を朝から出すなんて悪趣味過ぎる、極まっているだろ!


「ふふ?大ニワトリの燻製は苦手ですか?昨夜は暴れ牛鳥のステーキをおいしそうに食べていただいたので、お肉をご用意したのですが」


・・人肉じゃないのか?あの男は確かにそう・・


「変わったお肉をお出しして、出所を聞かれたら困りますもの。それに・・熟成や味付けを少し変えるだけで、お父様には解らなかった見たいですわ・・フフフッ」


チッ、それも全て手の内って事か?どれだけの下準備と計略までして、この家のヤツらも掌握した上でって・・完全に[お父様]は道化だな。

 

 悪役の道化・・か、人間の部類では最悪の男だったが、その悪事すら正義と吹き込まれてやっていたのなら・・


(それでも、やった事は虐殺だ)あの男は一片たりとも許すべきでは無いが。

 哀れなピエロだったのかも知れない。


「そうか・・でも、肉はいい」仮にどちらが本当で嘘だとしても、この屋敷で出された肉を、今後も食う気にはならないだろう。


「それで・・・『なんとしても』の話はなんだ?飯が冷めるから、とかじゃ無いよな?」

良い事と悪い事、どちらを先に聞くか?おれは悪い事を先に聞きたい人間だ。


(・・悪い事を先に言われたら・・それ以上悪い報告は無いって事だからな)


「それは・・食事をしながらお話ししませんか?他の方々はまだお休みのご様子ですし・・ゆっくりと・・ね?」

 全ての計画が上手く行ったからご機嫌なのか、ウインクとか。

 正体を知っているオレからすれば恐怖でしかない。


(毒蛇の鱗とか・毒蛾の羽根とかが、いくら綺麗でもな・・)

「2つ質問するが、いいか?」


「食事をしながらと言う事であれば」

 ふわりと席に腰を下ろし、椅子がススッと正される。仕方ないのでオレもそれに続けて座った。


「・・まず一つ目だ、お嬢様。あんたは、昨日と同じヤツか?」

 そう、目の前の女は、昨夜オレを見下ろしていたヤツと何か違う。

 魔力の深さ、目から感じる威圧感・・まるで人間みたいに見える。



次話になりますが、お嬢様と契約したゴモリーさんと言う悪魔です。そしてかの悪魔は[女性愛]を授けてくれる悪魔とされています。つまりお嬢様は・・・

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