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全ては悪魔の、掌の上。

「お・・お前、あいつらと戦うつもりなのか?なんでだ、死ぬのが恐くないのか?お前を無理矢理従わせていたオレが、『逃げろ』って言ってるんだぞ!?」


「ええ、逃げるしかないですよね。でもそれは勇さんを置いてって事ではないですよね?いつも見たく、卑怯で卑劣で狡賢くて生き意地汚い作戦を考えて下さい!」

 ピョートルは盾を構え、スラヲも気合いを込めて踏ん張っている、なんで?なんでだ?


「勇さん、私も隠していた事がありまして・・勇さんが勇者じゃないか・・とか思った事があるんです・・」


 魔物達の住む森で、勇者が寝ている間に彼等と交わした会話。

「酷い人間だ」「恐ろしい人間」「恐いヤツ」そんな言葉の中に一つだけあった、

[勇者]と言う単語、地精が勇者に興味を持ったのもそんな気配を感じたかららしい。


「勇さん、勇さんが勇者でもそうでなくても変わらない所がありますよ・・それは狡くて臆病で卑怯で高圧的で口が悪くて、目付きも悪い。慎重で、それでいて・・・優しい所です」


・・・・

「勇さん、勇さんが戦うのが嫌ならオレが戦います。スラヲも、だから恐いと言ってあきらめ無いで下さい・・大丈夫です、オレも恐いんですから」

 生きて逃げましょう。そう背中を向けたままピョートルは言った。


 小さい背中が大きく見えた、コイツに守られていたから格上のヤツとも戦えたのだろう。

(おれは・・コイツを盾に・・逃げるのか?・・自分だけ?)


 現実から?自分から?自分が目をつむってきた事に対して逃げられるのか?

・・・無理だ、それだけは出来ない。それは・・違う。絶対・・違う!


「・・わかった・・ふぅ・・スマン、逃げるぞ相棒!」

頭を切り換えろ!今必要なのは、部屋のすみで振るえて泣く事じゃない、生きる為に・盾となっているこいつらを連れて逃げ延びることだ。


「ハイ!」

 必要なのは、少しの隙も見逃さない事。その為ならハッタリでも嘘っぱちでもやってやる!


「良い感じがしますよ?勇者様、ここで少し戦力の増強はいかがかな?互いの利益には叶っているはずですよ?」

 黒い悪魔が首を傾け顔を近づけて来る、


(なんだ?いつの間にこいつら敵対を?)


 敵の敵は一時的にでも味方に出来る、敵の数・戦力を減らすため味方に着けられる時には味方に引入れておくべきだ。

(べきなんだけどな・・)


得体が知れない、そもそも敵対関係すら何故そうなっているのか不明なんだ。


「はぁい!私、あの女嫌い!勇者様・あの女は全ての黒幕、倒すべき魔神!これでは駄目ですか?」心を読んだように悪魔は宣言し、左手は胸に右手はオレに向ける。


 味方に引入れるべきか、その伸ばした手を掴むべきか。


「・・勇者様?なにか勘違いをなさっているようなので、お断りして置きますが、この惨状を作り出した本人・・お父様は死亡、

 私は父が『勇者や神殿に頼らず、魔王を倒す』方法を教えて差し上げただけ。それも父の願いだったのですよ?」


?「いや、それはおかしい。あんたが唆[そそのか]したから、領主が地獄を作ったんだろ?」

順序・順番がおかしい、それではまるで・・


「わたくしゴモリーは、この娘・・ルベリア・ウェンディの願いを叶える為に彼女と契約し、この体の・・人生の2/3を代価として受け取る代わりに、一生の贅沢と娯楽を与え生涯をまっとうさせる事が目的なのですよ?」


・・「どう言う事だ?この地獄が贅沢?娯楽だと?こんな事がか?」


 魔物の価値観もヒトとは違うのだ、地獄に住む悪魔の価値観が人間と同じでは無いのだろう。だとすれば・・なぜそんな言い訳をする?


「・・こんな物が娯楽?贅沢?そんなわけありませんわ。

 私はウェンディ、つまりこの人間と契約したのですよ?当然、人間の価値に合わせた物を提供するに決まっているでは有りませんか」


・・・なにを言っているんだ?どう言う事?


「なんでしょう?勇さん、この噛み合ってない感じは?どうなっているんですか?」

オレと同じ疑問を持ったピョートルがチラリと後のオレを見た。


「・・少し整理する・・」


 ゴモリーの契約相手はウェンディだ、そして贅沢を与える・・だとすれば・・

「邪魔な父親・・領主を殺してもらい、その資産と土地・家を全て自分の物にする?」


「ピンポーン!大正解です!」

 満面な笑みを浮かべ、パチパチとからかう様に拍手までしてきた。


「だがそうなると、黒幕はやはりアンタって事になる。その責任はとって貰う」

女でも殺す、中身が悪魔なら・・多分殺せる・・今は勝てないだろうから、逃げを優先するが。


(アレは人間の皮を被っただけの悪魔だ・・)


「フフフッ、まだまだですよ勇者様。私を殺した所で、この地獄はどうします?領地を奪い家を奪った後、別の支配者が来たとしても、公[おおやけ]にできないでしょう?

 

 貴族が・・子爵の位を与えた貴族がこんな虐殺を?それも表では信心深く寄付も多大に収める敬虔な信徒が?・・・だれも公にしたくありませんよね?」


 もしこんな虐殺が広まれば、教会も王家も威信を失う。だとすればこの土地に待っているのは・・[浄化]・・皆殺しだ。


「はい!その通りです。この領地全部を浄化しようとしますよね?教会も国も。そうなれば、この土地にいる全ての人間も動物も全て」


 殺し尽くされる、下手をすれば領地以外にも、ここに係わった者・この土地に親族がいる農夫なども迫害の対象になるだろう。


・・?・!?コイツ、この女まさか!


「その[浄化]も迫害も、勇者様が望んだ結果とは程遠いはず「「だから、この女」私」を殺さずに領地を引き継がせ、無かった事にする事が一番よい終り方だと思いますが?」


 勇者の性格・父親の性格と行動力、国と教会勢力の動き、その全てを読んだ上で父親を操り・・あの白いメイドを使って『毒消し』の言葉で一つで、夜の屋敷を怪しませて侵入させた?


「・・悪魔、お前の感覚ではあのゴモリーはどの程度の力だ、勝てるか?」

レベルが違い過ぎて強さの差が解らない、オレ達より強い悪魔の目から見たらどうなのだろうか。


「・・無理ですな?あちらは体の馴染みも万全ですし、私はこちらの世界に来たばかり。格も上で・ハァ、勝てませぬですな」

 勇者様が、その全てを賭けたなら話は別ですが。ぼそりと小さく呟き、その目の光りが僅かに光る。


(何度も死に続け、何度も戦い続けろって事か・・)


「弱い領民達も全て殺されますが、彼等を殺す為に私と戦いますか?フフッ」

 この惨状の犠牲になったのも弱い領民達、そしてそいつらの仇をとってもその家族か親戚が浄化される・・クソッ!


「・・なら、オレ達が黙っていると言ったら、逃がしてくれるのか?」

「戦う必要が有りませんもの、私の望みは手に余る程の財に囲まれて贅沢をする事。そのためには全力を尽くしますが・・」

 当然、[そんな当たり前の事を]、ってそんな顔してやがる。



・・・「もしかしてだ。自分が悪魔だから、この世界に悪魔の数が増える事で教会の目をかわしやすくするってのも、計画の内か?」

「フフッ、それは・・どうだと思いますか?」


(悪魔め)


・・と言う感じでしたが、どうだったでしょうか?ゴモリーさんの策謀が上手く決った、って感じは表現できていたでようか。まぁ悪魔なんですけど。

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