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領主を操る真の黒幕、逃げ道はなさそうだ。

「あれ?おや?おかしいですね?・・人間界ではこういった方が契約し易いと白い知り合いに聞いたのですが・・間違いましたか?」

 少女人形の映像は右手に、左手をあごに置き、悪魔は首を傾げる風な姿をみせた。


「・・なんでオレが悪魔と契約するんだ・・呼び出したのは・・そいつだろ」


 床に貼り付けられた領主はオレを睨み、這い蹲り[はいつくばり]ながらもなんとか書物のページを開こうとしていた。


「そう・・だ、私が喚んだのだ。この[人皮の書]に書かれた通りに祭壇を作り・・儀式を行い・・法陣も・・贄も・・私が用意した・・私に・・従うのだ」


・・中年の魔法少年は見るに堪えないだろうが・・悪魔の感覚はわからないからな。意外と

『その姿!悪魔的マリアージュだ!』とか言い出んじゃないか?


「止めて下さいよ、悪魔だって美しい物は好きなんですから。確かに崩壊の美学・腐敗の中・醜悪の美を愛する事もありますが」

 よく解らない美学を語る悪魔は心を読むように肩を上げ、人形に口を寄せると人形はシャボン玉のように弾けて消えた。


「にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!ふんぐるい・むぐる・うなふ!いあ!いあ!」

 領主の声がこだまする、どこか不快な言葉と発音、

(なんだ?あの呪文は・・)


「はぁ・・馬鹿は面倒だ・・ですね、ハエの羽ばたき程度には不快ですよ・・説明してやりましょうか?・・いいですか?人間、

 地獄の扉を開きテーブルを用意して飾り付け、食事を用意し、楽器も奏でさせたとして・・なぜ私がお前を相手にしてやる必要がある?・・私は今この方と話しているのですよ?これ以上邪魔をすると殺しますよ?」


「な?なんだと!?・・オレが喚んだのだ、この書でも・・召喚した者に従うのでは無いのか?」


「・・そう・・だな、悪魔は召喚者に従う・・のだろ?」

 いや、それは人間側のイメジーに過ぎないのか?


う~~ふふっふ「そうですね、魔王様や魔神の御柱の方々なら、暇潰しに願いを叶える事も有りましょうね・・ですがそれも、召喚者より魅力ある者がその場にいない場合でしょう?

カラスの後にヒバリの声が聞こえたなら、カラスの鳴き声は雑音にしかなりませんよね?」

 悪魔は勇者の方を向き、黒い顔に目を浮かべて細めてみている。


・・・・オレが興味の対象って事か、クソッ・・

[勇者の試練]そんなスキルが頭に浮かぶ、魔物に狙われやすくなるとか、完全に呪いだ。


「と言うわけで、私ヤール・ヤーは貴方に興味津々、是非とも御契約を。貴方の使い魔に私をしていただけませんか?」


「・・」

いやだ、と言わせない圧力と黒い魔力の塊がオレの周囲を包んで、逃がすつもりもなさそうなくせによく言う。


「使い魔だと?ワシが喚んだ悪魔はそんな低位の悪魔なのか?人間のガキに簡単になびくような、ザコ悪魔だと?」


「・・魔神の方々と比べたら低位かも知れませんが、人間達からすればたいした物だと自負しますよ?そう人間の魔法などには到底及ばない純粋な悪魔なものですからね・・だから、

[ザコ]などと言われては、傷付きます・そう・・傷付くのですよ?」

 悪魔は一切領主を見ずに、俺に向かってそう言った。


「そんなのは・・見れば・・解る」

 何も感じ無い程の暗闇、遠い夜空の闇が手を伸ばして届かない程深く、見える世界を被う程の想像出来ない程の闇の深遠。そいつが作り笑いの顔でこっちを見ているのだ。


「勇さん・・勇様には理解していただいているようで、大変恐縮・ご機嫌・最高。やはり仕える方には、自分を理解していただきたいですからね」


 違う、コイツは強すぎて・強大過ぎて普通の人間には解らない強さの高みが見えないだけだ。

大地の広さを知らない人間に、国の大きさが理解出来ないように。

山を登った事の無い人間には山の高さを数字で知っても、本当の高さを想像出来ない様に。


「ああ、想像も出来ない程の強さだ。正直こんな悪魔が世界にいると知っただけで、もう安眠できないだろうな」


 逃げられ無い、まだ悪魔が本気の殺意を見せていないから生きていられるだけ。

 体の感覚生存本能が麻痺して、生きている感じがしない。一瞬でも力を抜けば、悪魔の気が変わり、生きているのが嫌なくらいの拷問・激痛・地獄に引き摺り込まれてもおかしくない。


「そんな私を使い魔に出来るのですよ?どうです?貴方の戦列に悪魔をお一人加えて見る気がでましたか?」


「・・魔王と戦え・・とか言っても?」

「もちろんです!粉骨砕身、この身この体が滅びるまで尽くし戦いますよ!」


「なら!魔王を滅ぼせ!ワシが喚んだのだ!今すぐ魔王を倒し、世界を救うのだ!」

「うるさいですね、これで3度?勇様の前ですからハエも殺さずにいたと言うのに」


 悪魔の指がクルリと回り、下を指す。

 それだけで領主は突然脱力し、動かなくなった。

「・・・なにを、した?」

「心臓を止めました」オレの独り言のような言葉にそう簡単に答え、和やかに目を細めた。


「まぁ、それは困りましたね」

女の声が領主の居た場所のさらに奥から聞こえ、

ガフッ!今度は口から領主は液体を吐き出し、息をし始めた。


「・・おや?貴女は?・・おやおや?これはこれは、こんな所で貴女様にお会いできようとは・・真逆まさか、貴女様の筋書きでございましたか」


 悪魔は大げさに恐縮するように・そして知り合いに挨拶するように、右手を上げてから袈裟懸けに太股まで下ろし、深く頭を下げた。


「筋書きなど・・お父様が望んだ事を叶える為に助言しただけですわ」

 そいつは煙を防ぐマスクもせずに扇で口元を隠し、多分笑いながら答えた。


「やっぱり、アンタが黒幕か。オレから見れば領主以上の怪物だとは思ってたけどな」

 ルベリア・ウェンディ、殺意も魔力も悪魔の臭いもしないくせに、オレの本能が警戒信号を最大にさせ続けている・・・・恐い女だ。


「・・なぜ?私が怪物などと、ただのか弱い女の身で何が出来るというのですか?」


「・・なにも気配が無い人間なんていない、普通の女なら顔を隠す俺みたいなヤツには、訝しむ[いぶかしむ]とか警戒するとかする。アンタには、そんな気配の動きすらなかった」


「・・ああ!そうでしたの?確かに普通の子女のする感覚を私、知りませんでしたので、ああ、ありがとうごさいます。これでもっと魅力的な人間の女性を演じられますわ」


 本気で感謝するような口調と声色、高い地位の女とも思えないような皮肉も何もない・・まるで童女が新しい知識を得たような、喜びの感情に[見えた]。


(演じられる?・・どこまでが演技だ?・・・[どこから]が演技なんだ?)


「全てですよ?知らないのですか?女は常に演じているのですよ?父の前・家族の前・友達の前・お客様の前・社交界、全てです。


 朝、目を覚まして鏡を見た瞬間から演技を始めるのです。貴族の娘として産まれたなら、それが当然のように育てられるのですよ?」

 フフフッ、作ったような、でも本当に嬉しそうに笑う。演技と本音が混ざって区別が付かない。


「・・それが嫌で、悪魔を」

「お~~とスイマセン、勇様。男女お二人で睦め合い・盛上がる事は大変艶めかしいですが、私を忘れないで戴きたい。ワタシは寂しい!相手して下さい!勇様」


 そしてこっちも正体も解らない化物が一体、後頭部に重い痺れと熱が肩まで広がり汗が止らない・・逃げたい・・逃げ道はどこだ・・



黒幕だとおもったら、さらに影の黒幕が現れる。それぞれの立場も異なり、話が混乱してきました。

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