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地獄を作り出す領主の思惑は。・・知らん、殺すよ?

 臭い蒸気と壁に着く汚い煤、階段の上にはべちゃべちゃと泥のように積もったカビのようなヌメリが張り付いていた。


 壁をこすった時に見えた赤い線は、どこか崩れた曲線の幾何学[キカガク]模様。

狂った曲線は階下まで続き、口を開けた化物の腹の中を目指している気がする。


(アレをやっとくか・・)口に炭を放り込んで噛む、釘と炭の味が唾液に混ざり不味い。

 誰かに聞いたんだったか、炭に毒消し効果があるらしいのですが・・・不味い。

本当に苦くて不味い。不味さによる気付け効果の方が、有るんじゃ無いかとも思う。


(炭が毒を吸着するとか言ってたが、本当だろか?)

 にがくて泣きそうになる。


・・・黄色い炎が揺れている、赤い篝火[かがり火]が周囲を囲み、立ち眩みを起こしそうな糞尿の匂いに混じる甘酸っぱい匂い。


(毒?甘い息?魔物?)頭が混乱を始めようとし、炭を噛んでいなければ意識を持っていかれるような空気が充満していた。


(とにかくこの煙はマズイ!)

 地面を這うように煙を避け、手に触れた床の液体には我慢するしかない。


 中央に積まれ、燃えている木材にかけられる液体が蒸発し、キツい小便の匂いが散る。

そして麻のような葉が大量に乗せられ、煙が混じる。


 奥で笑う四肢をもがれたナニカ、裸で踊る男女の顔は凶気で笑い崩れ、黒い布で顔を隠した黒ローブの男が歌うようになにかを歌う。


 燃える木材の炎の足元に、焼け損ないの手足が転がり、目を隠された人間がフラフラと炎に向かって歩いていた。


(・・口元のアレはなんだ?・・)歯が全て抜かれ、頬を裂かれ・・

 立ち止まると、異形の人間が焼きごてを押して進ませる。


 檻の中の痩せた子供は恐怖狂ったのか、麻の煙が頭に入ったのか天井を見上げて笑い、1人の子供が狂ったように笑いながら、目隠しをされた人間に手を伸ばしていた。


(子供を人質にしているのか・・それで親を目の前で?・・)

 

 見つめる子供の目が暗く光り、口から垂れる唾液が黄色く濁って見える。


 吐き気がする、この場の空気だけじゃない、全て見なかった事にして・・消して終いたい。


(落ち着け、高ぶるな、呼吸を乱すな) 

 多く息をすれば、それだけ多く煙りを吸う事になる。

目的は邪神像の破壊、その他は目的を達成してから・・消せばいい。


 歪んだ景色の中で一人、祭壇に向かう場所で貴賓席のように飾り立てた席に、黒い鎧姿が見え、そしてその鎧はグラスを片手になにか指示を飛ばしていた。


 Gblぁrあlaギァ!!!

 目隠しされた人間が炎に焼かれて悲鳴を上げる、喉を焼きながら悶え、その背後から焼きごてで体を押さえ、逃がさないようにしていた。


 !(片目だけ抉りとってある・・・のか?)

目隠しが焼け落ち顔が見えた。まぶたも切り取られ、炎の中で空洞が赤い涙を流し、片目は狂ったように笑う子供を見ていた。


(もう・・無理・・限界だ・・ここにいるヤツ・・全部・・殺す)

 順番なんか知るか、目的なんか知るか、全部ぶっ壊してやる・・


 最初に喉を掻き切られたのは黒いローブの男、そのまま炎に放り込み、焼きごてのヤツ等の頭と肩を適当に刻み、炎の中に蹴り飛ばしてやる。


 裸で狂乱する男の腹に、拳がめり込むほど殴り、股間を踏み潰す。


 女も同じだ、腹を殴り着け、笑う女の気道を絞め押さえ、ついでにアバラを踏み折る。

(殺さないだけマシだ、息をする度に苦しんでいろ!)


 男が4人、女が3人、ローブが一人と、焼きごてを持つ拷問官みたいなヤツを3人。

殺したヤツと苦しんでいるヤツが濡れた床に転がり、ようやく黒い鎧が勇者に気が付いた。


(この場の主催だろ?お前は殺すよ?)この場に積まれた犠牲者の為じゃない、

オレが、気持ち悪いから、ただオレが、不快だから殺す。


 燃え盛る炎は今は無視する。見下ろし、見下すように階上にいる鎧を標的と決め、邪魔するヤツ等は切って刎ねて跳ばす。


「お!お前!こんな事をして!」

「知るか、死ね」鎧の目に鎌を押し入れ、引っ掛けて引っ張と兜がずれて太った男の顔が現れた。

・・デブ?たしかコイツ・・


「今晩は、侵入者君。まさか今日いきなり忍びこんで来るとはね、驚いたよ」

 炎を上げる木材の向こう、貴賓席よりさらに上の位置に作られた最上席。


 黒いカーテン被われた場所から聞いた声がする。

「そっちこそ、像を手に入れた当日にこんな儀式を始めるなんてな。オレ達が消えるまで待てなかったのかよ、領主様よ?」


 鎧の男は口から赤い泡を拭いてまだ転がっている、しぶといヤツだ。

放置しておいてもどうせ死ぬ、でもまぁ・・


 はんたい方の目にも鎌を押し入れて差し込んだ、だって殺すって決めていたからな。


「用事は済んだかね?ならそろそろご退場戴きたいのだが?」

 弓を構えた男が2人、領主の左右に立ち。気が付けば他にも3人ほど闇の中から弓を構えていた。


(多分、本職だな。猟師かそれとも狩人か・・炎の明かりが邪魔だな)

こっちは丸見えで、向こうは影から4方からか。


 この煙の対策もしているだろうし、下手に動けばイガ栗みたいにされちまうな。


「黙って帰らせてくれるとは思わないんだが、退場出口はどこだ?死体になって出て行けとか、三流の悪党のような事は言うなよ?」


フッ「この私が悪党とは、なにも知らぬ走狗がよく言う。どうせどこかの無能貴族に雇われた間諜か密兵だろうが、それとも教会に有ると聞く機密機関か?」


「機密機関が貴族の噂に上がったらお終いだな、秘密に出来てないんじゃないか?」


 本当に秘密なら人の口にも出ない物だ。あとは公式な機関の中にまぎれて活動しているとか?どっちにしても、正体を見破られる前に敵を殺すか、自決するだろ?

 その方が有耶無耶[うやむや]に出来るからな。


「なら、王家か?あの平和呆けが、お前みたいな暗殺者を雇うのか?雇ったのは誰だ?宰相か?」

 質問が多い、なにが言いたい・・・?


「つまり、今までの質問からすると、依頼人を話せば逃がしてくれるのか?そうなんだろ?」


(喋っても殺すつもりだろうけどな。悪党呼ばわりされて怒るとか、本気で本物の善人のつもりじゃないだろな?だとすればこの領主、相当に頭がイカレテいらっしゃる)


麻の煙を吸過ぎて、頭がどうかして、いらしたのかもしれませんね?フフフ。


「依頼人の名を明かし、その上で私に協力・・忠誠を誓うなら命は助けよう。私は能力の有る人間を必要としているからな」


 阿呆か?、この惨状を見て忠誠だとか?本気で正義を気取っているのか?


・・(違うな、本気で完全に、自分が正しい事をしていると思っている。そしてそんな自分に皆が付いて来ると確信しているんだ)


 周りの弓兵か猟師も、本気でこの男に忠誠を誓っているのだろう。

・・・わからん・全く解らないな、そんな気持ちは。


気持ち悪いと感じた方はすいませんでした、それほどでもないと思った方は安心してください。こんな外道はそうそういませんから。多分出てこないはずですので。

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