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交渉、ようやく出口が見えた。

(・・ああ、邪神像・・確かコイツ・・)服の中にしまってたような・・


まだ熱い身体をさぐり、指先が堅い石に触れ、ゆっくりと取り出すと邪神像だった。

(これで・・依頼完了・・か、疲れた・・)?一瞬コイツ、動かなかったか?


・・指で肉を押さえた反応?それとも体内の神経が電撃の名残に反応しただけ・・だよな?


「!!ぎ・げ・が・・・ギグ・・人間・・め!・・コレで・・が・っだと・・思う・・な!邪ジン・・サマ・・像は・・世界中・・に・・


呪わ・・れろ・人間!・・苦しみの生を・・精々・・生きていろ!

地獄・・は・・ぞご・に・・魔界の・・炎の・・中で・・待っているから・・な!」


 悪魔神官は不意に立上がり、勇者に手を伸ばす。


 体はへたり込み、脱力で足が立とうとしない。そんな状態で、もう一戦なんて逃げるのも無理だ、魔法一つでもこの距離で放たれたら避ける事も無理だ!


「勇さん!」ピョートルが体当たりして悪魔神官を階下に突き落とす、


「すまん、助かった・・もう大丈夫だよな?」


・・『勇者はレベルが上がった・・・体力が・・』

チッ・・今更かよ・・


 階段の下で手足をひんまげ、割れた仮面の内から悪魔の素顔が覗く。剥き出した目玉と歪ん口・・青黒い肌、醜いがそれでも命を賭けて戦い合ったヤツだ。


「仮面くらい・・直してやるか・・」レベルが上がったせいで、体が少しだけ動くようになっているからな。

「ピョートル、肩を貸してくれ」


 オレ達はフラフラになりながら階段を下り、悪魔神官の傍に立つ。

「そっちを頼む」

 仮面の位置を直し、死体を祭壇の脇に寝かせた。

 いずれは遺跡の魔物の糧になるか骨になり土に還るか・・少なくとも敵である人間に荒らされる事は少ないだろう。


 死んでからも敵である人間に足蹴にされるほど不快な事は無いだろうし、そんな人間の姿もオレは見たくない。


 さて・・戻るか・・(大丈夫だろな、ホントに)

 探索は帰るまでが探索・・だったか?帰る途中で、魔物に襲われて倒れるなんて不幸過ぎる。


 よいしょ、やたら不快で重い像を袋に入れ、槍を杖に・・鉄の杖を戴こう。

・・・([棍棒]と[ヒノキの棒]の代わりだからな、泥棒じゃないぞ?)


「よし、オレは鉄の杖を持つからピョートルは鉄の槍を」

 ピョートルは剣を使いたそうだが、今は槍を使ってくれ。


(持ちにくい・・なんだよ、この棘・・邪魔)

重いわ持ちにくいわで、予想以上に鈍器に特化している。クソッ失敗した。


・・・・


「よう、そっちが先だったんだな」

「・・・まあ・・そうだな」

 遺跡の魔物と罠を避けながら戻って来たのに、最後の最後で面倒な事になった。

(たしか・・ウェン?)狩人の男が待ち構えていたように通路に立ち、その後を続くよに戦士と・・僧侶か。


(契約では一応[先に手に入れた方に報酬を渡す]って事になってるが・・)


「そんな顔すんなよ、オレが斥候だから先にいるだけで敵じゃないんだぜ?」


 片手のナイフをしまい手の平を見せるように肩を上げる、敵意は無いって感じを見せるが・・カネが絡めば人は変る、平気で人を裏切り、欺すもんだ。


「・・おい、お前。像を持っているのか?」

リーダーの男の目がオレの持つ袋に向き、明らかに敵意のある声だ。


「持っている」抵抗するなら一人は道連れに出来るが・・こっちは全滅するだろう。

確実に殺して、オレたちの口を塞いでくるだろう。魔物でも・・魔物なら遠慮無く殺しに来るか。


「・・そうか、それで・・どうする?こっちは一戦交えてやってもいいんだぞ?」


「リーダー!、そりゃぁ駄目だ!しっかり契約までしておいて、後で奪い取るなんてのは、そりゃ冒険者じゃねぇよ。野盗のする事だ!」


「・・そうですね、契約を交す前なら乱暴な手段ではありますが、冒険者の間でも稀にある事ですが。

 ・・自分達が先を越されたからと言って・・契約破りは、それに自ら契約を軽視する人間は、自分の時に契約を反故にされても、神は味方してくれません」


 正義を失う、多分そんな事を僧侶の男が言った。

(世の中には元々正義なんて無いんだ、正しい・正しく無いでは無く、[正当性]を主張できるかどうかだろ?)と思うんだけれど。


「そんなもん、お前らが黙っていれば解りっこないだろ!お前らはどっちの味方だ!」

「バレるって、あのお嬢様の目を見ただろ?ありゃぁただもんじゃ無いって!」


「お前らアレか?薬草を恵んで貰った程度でコイツの味方する気か?この仕事がどれだけオレ達にとって重要か、お前らは解らないのか?」


 冒険者達がもめている間にオレは呼吸を整えて置く、こいつらの倫理がカネの誘惑に負けた時、全力で逃げ出せるように準備だけはしておく。


「おい、よかったなお前の味方ばっかりだ。お前の蒔いた薬草がこんなに役にたって。

お前のお陰でこっちはパーティー崩壊の危機だぜ!」

 声を荒げ柄に手を置くと空気がひりつく、剣が鞘から抜けた瞬間から戦闘が始まってしまう。


「落ち着けって!契約破りがバレたら、今後もうまともな依頼は受けられねぇんだぞ!それじゃあ、有名になるとか金持ちになるとかのリーダーの夢も叶わなくなるんだ!」


「そうですよ!例えここで秘物を奪ったとしても、あの女性はそれに気が付くでしょう。

 貴族同士のたわいない雑談に私達の契約違反が出た瞬間、冒険者組合は私達に重要な依頼は与えなくなる。そして貴族達からもです。


 私は彼の味方ではありませんが、それでも双方で交わした約束の反故で、多くの人達から信用を無くすより、今は耐えるべきだと。それくらいは解りませんか?」


「ゆ・・ジョンさん、逃げる時は合図をして下さい、私が盾になります」

ピョートルは覚悟を決めたように盾を構え始めている。

「いいよ、こんな所で覚悟なんか決めるな。」相手は多分話せばわかる・・と思う。

後は彼らと、俺たちの損得の問題だろ、それに。


(・・・なんか・・本気で面倒になって来た・・)


「なあ!そっち!」

「ちょっと待ってろ!もめてるのが解んないのか!」

 怒られた、少し冷静になってると思ったのに・・


「いいから!聞け!そっちにも得になる提案だ!殺し合うより建設的な話がある、そっちに殺し合いか・何もしないで報酬をあきらめるか、それ以外に選択指が無いなら話を聞いてくれ!」


「ウルセェ!お前が決めるなと言っただろ!どのみち最初にころ***」

 僧侶に口を塞がれたリーダーの男が、僧侶をにらむ。


「ムノフ、少し冷静になりなさい。敵と味方、損と得、そこを見分ける為には常に冷静に、でないといつか全てを失いますよ」

 僧侶がさとすように静かに口にする。


・・チッ「解った・わーたよ、話を聞けばいいんだな?その後でオレが判断する、それな、らお前らも納得すんだよな?」


「・・それで・・建設的とは?・・もし双方・・いえ正直に言いましょう。私達に利益がある話なら聞かせて下さい・・」


「そうだな、ジョン、お前の話しだいでオレはお前の味方になってやる。当然、今のパーティーを裏切れって話ならお断りだけどな」

 狩人はおどけているが、目は勇者を値踏みするように細めて光る。


 僧侶と狩人には話が出来そうな空気が出来た。

(よし・・二人が交渉のテーブルに着いて、一人は様子見って所か。これなら・・話は、進められる)


「・・そっちは秘物が欲しいのか、カネが欲しいのかは知らない。が、こっちもカネは欲しいし、あのお嬢様にも用がある。そこで提案だ・・・」


「こっちは見ての通り、体力も魔法力も限界が近い。そしてこの遺跡の出口はまだ先だ・・」


「つまり、護衛をしろってことか?・・う~~ん、今ジョンに雇われるのは・・リーダーが・・」


「そうじゃない、今からお嬢様に秘物を渡すまでの間、パーティーに入れてくれって提案だ。そうしたら秘物はここにいる全員で持ち帰った事になるだろ?」


「!?・・そいつは・・!どうなんだ?」

 狩人の男が驚き、確認するように仲間の方に振り向いて、二人の顔を見た。


「確かに・・私、イエ・・・リーダーは貴方には決して雇われる事は無いでしょうが・・貴方からの提案で一時的にパーティーに加入するのであれば・・」

「でもいいのか?取り分は・・かなり減るぜ?」

今度はオレの方に向いて聞いてくる、忙しいそうだな。


「こっちは・・顔を知られると困る、そっちは利益とパイプが手に入る・・あとオレ達は。体力が限界だ、出来れば外まで連れて行って欲しい」


「知られたくない事情と体力、でこっちカネと依頼成功の結果と名声が手にはいる。

二の二だな・・リーダー、どうする?おれは乗るべきだと思う」

(て言うか、これ以上の話は無いと思う・・・ジョンか・・コイツ、体力無いって言ってっけど・・)


「私も乗る方に賛成します。メリット・デメリットを考えても。これ以上お互いにとって有益な形は、私には思い付きません」

・・それに、私は彼とは戦うべきでは無いと・・


「・・リーダーはオレだ、オレはお前が嫌い・・か好きじゃ無い。気に食わない。

それでもお前は・・[オレのパーティー]に入るって言っているんだよな?」


「ああ、こっちは、面倒事は困る。穏便に済むなら従う」


「報酬も6等分・・7等分か・・フゥ・・解った、だが先に秘物っての渡して貰おうか・・それが条件だ。オレ達の手で[秘物]を渡す、当然オレが報酬を受け取り分配する。それでいいなら」

 リーダーの男は手を伸ばし、『よこせ』というように、手の平を開いたり閉じたりしてきた。


・・・(不味いな・・アレ・・多分、精神汚染する類いの物だ・・う~~ん)

「いい、正し[ただし]・・そっちの僧侶が持ってくれ、かなりヤバイ物なんだ」


 オレは袋から邪神像を取り出し、僧侶のバックパックに入れる。布に包んだままだから姿は見えないはずなんだが・・


「・・これは・・よくこんな物を持っていられましたね・・」

 邪悪な波動を感じたように男が顔を顰め[しかめ]、明らかに嫌そうな・・苦痛でも感じるように眉間を押さえ、十字を切る。


「オレは魔物の使う力に・・・耐性がある」適当に答えて置く事にした。

(多分、勇者の力だろうな。[邪悪な波動]耐性とか?・・ハハ、どっちかと言うと魔物側の存在だったりしてな、勇者ってのは)




ようやく邪神の像が手に入りました、まだ邪神像の話は続くのですが、なにに使うのでしょうね。

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