表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/693

勝てない戦いを勝つために。

悪魔神官・戦い前編です。

「勇さん!」盾で炎を防いだピョートルがオレの崩れる姿に駆け出すのが見える。


「来るな!コイツ、即死魔法の使い手だ!」オレの方がまだピョートルよりレベルは高いはず、

(その証拠に即死魔法でまだ死んでいない、抵抗出来ている!)


 崩れる膝に合わせて体を落とし、体重を後にして転がるように距離を取って・・・逃げる。

「死音に耐える事が出来ても同じこと[大火炎]」

 悪魔神官が追撃の炎を放つ! 


(クソッ!体勢が立て直せない、直撃喰らう!)

「ソレは私が防ぎます!」転がるオレの前に飛び出し、ピョートルが盾を構える。


 体と同じサイズの火炎を受けとめ、耐えきったその身体に勇者の[回復]が掛る。

「ヤツでも魔力には底があるはず、耐えきるだけでも勝ち目が見えて来る、それまで生き残れ!」


「耐える事ができるならな[大氷結]」

 氷りの壁が現れて割れ砕け・突風が氷りの破片を吹き飛ばし・落ちた破片が周囲を氷らせて行く。


「ぴぎゃ!」スラヲの足元?に氷結が広がり、体を捕らえ始めている。

「待ってろ[火炎]!」地面に火炎を打込み、氷結の浸蝕を防ぐ。


「大氷結まで使うのかよ!」氷りで動きが鈍ったら魔法で狙い撃ちにされる、

 どれだけ戦い慣れてるんだよ、ヤツとの距離が遠すぎる。



 一方的に魔法を放たれて防戦一方、こっちの薬草もそろそろ尽きそうだ。

(簡単にバカスカ魔法を打ちやがって!ヤツの魔力は底なしかよ!)


「ピョートル、薬草をくれ!こっちの手持ちはゼロだ!」


「勇さん!こっちは残り2です!なんとか手は・・・

!勇さんのアノ凄い魔法は使えないんですか!」

 盾を構えながら薬草を放り投げ、左右に跳んで魔法の照準をかわしながら叫ぶ。


「無理だ、あんなイカサマ、本物の魔法使いには通用しない!」

 魔法の遅延を使った重ね掛け、[[[]]]見た目が普通の[氷結]や[火炎]に見えるが威力だけは3倍になる。油断した相手にしか通用しない小細工魔法だ。


 集中・詠唱・発動[発現・照準・発射]の行程の内、発射の行程を遅らせる事で出来たダマシに過ぎない。


(何か手は無いか、何か・何か手は・・)

「勇さん!自分!どうやら火炎が効きにくい様です!火炎魔法はいくらでも盾になりますから、自分を盾にして距離を詰めて下さい!」


「馬鹿!そんなのは直ぐにバレて狙い撃ちされるだけだろ!とにかく安全策だけを考えるんだ!」

 それにヤツには即死魔法がある、体力があってもアノ呪文だけはどうしようも無い。



 勇者達が防御に徹している間、一方的に責めている悪魔神官もまた焦れていた。

この生意気な人間は、圧倒的な力の差を見せ付け、絶望させて殺すのが普通。


(だがなんだ、この人間は。弱者のくせにしぶとく身を固め、薬草を使っていやがる。それに魔物、あの魔物が人間を守っているのも不愉快だ。


 魔法はまだ使える、ヤツらを殺しきる大魔法も十分余裕がある、魔法力が切れたとしてもメイスで肉塊にする事も出来る・・・だがあの男の不快な目、あの目を絶望に変えて悲鳴の内に血ヘドを吐かせて殺すのだ・・)


 邪教徒の本能がざわつき、溢れる殺意と共に神官まで勤め上げた冷静な思考が交わり、冷静な判断が鈍る。


・・そうだ・・「そこの魔物、お前の主人は誰だ?魔王様ではないのか?私は魔王様にも仕える邪教徒ですよ、お前が今その男の背後から襲うなら、私が魔王様にお願いし、直々の配下に加えてもらう事もできるのだぞ?」


「・・本当ですか?」

 スライムに乗った騎士は迷う様子を見せながら盾を下ろした、人間の男の目は騎士の方に向き、騎士が前に出る姿に驚いている。

(あと一押しか)


「ああ、その鍛えた体、私の魔法をこれほど耐え抜いたスライム騎士はお前が始めてだ。

そのスライムも素晴らしい!お前の部族も召し抱えてもらおうじゃないか!お前はスライム騎士の部隊を任され、より高みに!より強い力を与えられるだろう!」


「そう・・ですか・・では・・[爆破]」

 前に出て来た騎士の手が私に向き・・[爆破]だと

 不意伐ちで放たれた衝撃が体を打ち抜き、オレが用意していた呪文が途切れた。

?何故だ?なぜ私に?


「お前は魔王様では無い、お前は私を・・・私達の部族を知らない。私達魔物の全てが戦いだけを求めている訳では無い・・それに・・」


 逆らう魔物の言葉を最後まで聞く気は無い、「なら燃え尽きろ[大火炎]」



「爆破?いつの間に[爆破]なんて使えるようになったんだ」

「少し前にレベルアップしまして、その時に。それより不意伐ちが成功したのに、勇さんが飛び込んでくれないから!」


 大火炎を左右に跳び分かれて避けながら叫ぶ、

(知らない間に、どんどん強くなっていくなぁ、魔物の方がレベルが上がりやすいとかか?)


 大火炎の熱が地面を焼き、二つに分かれた勇者とピョートルは視線の合図で先行を決める。

(ようやく[爆破]一発分か・・でも!)


 たかが魔法一つのダメージ、だが届かないと思っていた敵に、ダメージが通ったんだ。可能生はゼロじゃない!


「魔法一つあたった程度で!」勝てるつもりか![大氷結]

 悪魔神官の前に氷壁を作り出し、勇者の出鼻を挫く。

(届かないんだよ!お前らザコの武器なんかが!)死ね!


 氷壁は砕け勇者を襲う、細かい氷りは針のように鋭く、ナイフのような氷塊はたとえ鉄でも傷を作る。


 [火炎]盾を構えた勇者は最小限の炎で身を守り、引き下がりながらその攻撃を軽減させた。


(クソが!左右に分かれたせいで、まとめて始末出来ん!これでは、せっかくの魔法も単発で打っているような物、どうにかして・・)


 悪魔神官の考えを読んだように、勇者と魔物・二つの影が重なった。

これで、ヤツらが突っ込んで来たらまとめて始末してやる!

(そのまま来いよ、雑魚共が!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ