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人間は、第一印象でお互い見る目も変わる。

 契約の内容は護衛と[秘物]の引き渡し、護衛は帰るまでの日数。

当然雇い主であるお嬢様は、日数が無意味にかかるのは喜ばしくない。

 当然自分達を売り出したい冒険者なら、日数も少なく依頼を達成したい。


「だから、コイツに横取りされるのは許せないんだ。コイツがオレらの後から付いて来て宝をかっさらう。そんな危険がある以上、おれはコイツを信用しない」


「オレはカネしか興味がないから、遺跡の外で護衛しているだけでもいい。そっちが時間をかけて探索してくれても構わない。その方が安全で報酬が増えるんだろ?」


 とにかくカネ、そう言う風に見せる必要がある。カネにがめつい人間はカネで黙り、カネさえ払えば裏切らない。カネで雇う者にはその方が信用される場合もあるからな。


「私としては、ジョンさんともっと懇意にしたいのですが・・そうですね、遺跡の事も良く解らない若輩[じゃくはい]者ですが、遺跡を前に地団駄を踏むのはいけません・・・

なので、こうしましょう」


 勇者とリーダーは一枚の洋紙に拇印を押す、内容は先に秘物を手に入れた者に報酬が支払われる。冒険者達が罠を解除した後を勇者がついて来ても、秘物を先に盗られていたら報酬は無い。

当然その逆も、これでお互い競争して秘物を見つけるしかない。


「三者とも、お互い意味のある契約か」

ふふふっ「私は無駄な時間を送る事なく、お二人は秘物の取り合いを限定的でも防げる。安心して依頼を遂行していただけますよね?」


・・・(この女、どうせオレ達が遺跡で命を落としても、遺跡の危険度を計る生け贄にして、次ぎヤツらを用意するつもりだろう)ふところに旅人の翼とか隠して、安全確保はしているはずだろ。


「やはり貴方は物を見抜く目を持っているようですね、少し恐いですわ。フフッ」

 細くした目は鋭い、鋭利なナイフのように光って見える。


 お嬢様の微笑みにオレは口角を上げて答える、悪人同士にある同調感覚のように皮肉に笑いあった。


 有能な手札は必要、だが有能過ぎて切れすぎる頭の持ち主は、指先を切るような事になりかねないそうだろ?(この女が自分をどこまで高位に置いているか、だよな)


 自分ほど賢く尊い者なら、この男でも使いこなせる。とか思ってくれたら幸いなんだが。


「おれは言った通り、安全で確実な儲けの方が重要だ。が、欲もある。

カネはいくらあっても困る事はないからな。拾えるカネは拾う主義だ」


「ゆ・・ジョンさん、それはあまりにも・・」


「装備も宿の安全もカネしだい、次ぎの仕事を探すにもカネがあれば安全で楽な仕事を細々と受けるだけで生きていけるだろ?」

 pーの言葉を塞ぐように、彼等に解りやすい理由を答える。


(誰が王に命狙われているなんて言える?下手したら通報されるだろ。)

・・・そう言えば、ピョートルに自分が勇者だって言っていなかった事に気が付いたが、黙っておく、もしそれで魔物の本能で襲ってきたら・・・・・殺すしかないから・・。


「ジョンの言う事は確かだぜ?カネさえあれば、危険を冒してランクを上げる必要も無ぇし・名声だって付いて来る。やっぱオレと合うんじゃないか?なぁジョン」


「オレは気に食わない、顔を隠しているのも怪し過ぎる。賞金首か野盗かもしれねぇし、背中を見せたらザクッ、なんてシャレになんねぇからな」


・・・・「疑うのは勝手だが、そっちが行かないならオレ達が取りに行くだけだ。多分雇い主のお嬢様も、ソレを期待しての報酬なんだろう?」


「疑ってなんていませんわ、命の恩人ですもの。夜盗・山賊の人間なら私はとうに攫われていますもの」それに実力も。

 最後の言葉を小さく言ったのは、リーダーを逆撫でしない為だろう。



 翌朝早くリーダーが率いる3人パーティーが遺跡に入って行くのが見えた、当然オレは昼過ぎからだ。一度攻略した遺跡なんて、一晩もかからないだろう。


・・・「あ・どうも、」昼前にようやく目覚めた戦士の男が、まだ辛そうな顔で話掛けてきた。瀕死からの[回復]なので、体力が戻っていないようだった。


「あいつ、『自分が助けた』見たいな事をいったんだろ?すまねぇな、あいつアシュミ・・パーティーの女戦士なんだが、アイツを狙っててな。・・本人には丸バレしてるから拒否られているんだが・・ハハ」


(それで昨日は無言の返事か、この連中もドロドロしてんなぁ)

「・・ああ、大丈夫だ、気にしてない。そっちのパーティー内の事に首を突っ込む気は無いから」


「後な、アシュミも『ありがとう』と伝えてくれって。お嬢様の前では言いにくい感じだったからってな。お前、お嬢さんにかなり気に入られて」


「さて行くか!悪いな、オレ達も遺跡に入るが報酬を独り占めしても怨むなよ?」

 言葉の最後は聞かない事にして、そそくさと荷物をまとめます。


(アレに気に入られるだって?とんでもない話だ)それに、こうやって話が伝わる事も計算の内な気がするんだが。


「ハハッ、命の恩人を怨むかよ。それに護衛料はきっちりいただくんだ、ただ働きじゃねぇからな、命があるだけめっけもの、ってこった」


・・・(たしか、この男だったよな?最初に人質にしたヤツは・・血が抜けて性格が変ったのか?)

 随分穏やかな・・・ひょっとして最初の事が無ければ本来の性格がこっちなのか?


(第1印象な・・やっぱり重要だよな、お互いに)

 知らない者同士なら、お互い強硬になるだろう。が、話して知り合えば・・最初のぶつかりが馬鹿見たいだ。


 助けた、かいのあるヤツだったんだなぁ。助けて後悔するようなヤツなら不快な気分を引きずったままで探索する事になる所だった。


(そうなったら、あいつらがミスっていても放置してたかも)

 今なら少しくらいは、助けてやってもいいか。


・・・・

「えっと確か、この辺は・・天井からガスか霧だったな」

「ジョンさん?私が罠を解除しなくても?」


「いいんだよ、下手に解除して怪しまれても面倒だ・・というか、人間を舐めるなよ?もしスラヲの解除を誰かに見られたら、人間はスライムを奴隷にして罠解除させる程度の事はするぞ?」


 人間のほとんどは、スライムなんか経験値と小銭にしか見えて無いんだよ。

[起き上がって仲間にして欲しそうな顔]をしたり、話掛けて仲間にしたりとか、考え無いんだよ・・人間は。

(・・・たしか延々とスライムを殺し続けた魔女の噂もどこかで聞いたような・・・)


 必要最低限、それも周囲を念入りに調べてから解除してもらう。

・・・先に進んだ気配・・?どんな方法で進んだんだ?


 石壁に小さい切り傷、足の爪先しか残って無い足後。跳んだり壁に張り付いたり、凄いな狩人、罠の発見もあの男がやっているんだろうか?

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