お嬢様は邪神の像をもって来いと言う。
「そっちの足を上げろ、そんで手は壁から放せ、体はこっちで支えてやる」
罠に引っかかった男の肩を掴み、腰の所はpが持ち上げる。
っ・「痛てててて・・すまねぇ・・あんた[回復]は使えるか・・無理なら、仲間を呼んでくれ・」
「罠を外してからだ、[回復]一時的には出血を止められるが罠の解除は出来ないんだからな」
しゃべれるくらいなら槍を抜いても即死はしない・よな?。
男の体を持ち上げ。足を床から放すと壁から飛び出した槍が引く。
[回復]勇者の回復が男の傷を癒し、その上からpが布を巻いていく。
「[回復]は体力しだいだからな、一度遺跡から出すぞ」
「勝手に決めるな!」
勇者に抱えられているグッタリとした男の代わりにリーダーっぽい男が答える。
(じゃあどうしろと言うんだ?)
「[回復]はこっちでも使えるヤツがいる、コイツがどじっただけでお前が仕切るな」
・・・・・
「・・でもさ、リーダー。この状態のフライを背負っていくのか?
オレ達だけで3人で進んだ方がまだ安全じゃねぇの?」
軽装の男がヤレヤレ顔でリーダーを止め、オレにウインクした。
「なぁリーダー、アンタはこの隊の隊長だ。そしてオレらパーティーのリーダーだ、新入りが勝手に動くのは気に食わないのは解るけどよ、あっちは別口のヤツなんだよ。」
あの女は複数のチームを雇い、部隊を作る上でこの男を隊長にしたのだろう。だとすると、他のチームは・・
「そっちもすまねぇな、探索チームは護衛以外に別口報酬が付くんだよ。・・分け前でもめるってのはチームが分裂する原因にもなるから、リーダーは神経質になっているんだよ」
その情報は他のチームには知られて無いのか、リーダーの男はあからさまに渋い顔を作り向こうを向く。
(・・たしかにな、探索で報酬が上がるなら護衛は適当にして、探索に殺到するだろな・・て事は、ここまでの護衛で生き残った理由もそれか)
「で・・結局どうすればいいんだ?オレ的にはさっきの報酬の話も聞く必要があるから戻るが、
[ついでに]この男を運んでやってもいいぞ」
笑顔で話しを逸らされたけれど、確定で報酬が増えるなら契約内容も変って来る。
チッ「今回の依頼は問題だらけだ、チッ!オレらも戻る。コイツはオレが運ぶから貸せ。
クソッ、未開遺跡の探索依頼だって聞いたのに兵士も出てくるわ、こんなヤツを雇うわ・・どうなってるんだよ」
機嫌の悪いリーダーは勇者から男を奪い、運んでいく。その後の軽装の男と無言で頭をさげた男。
(最後のヤツ・・僧侶か?)戦士・狩人・僧侶・そして戦士か?二枚の盾で守りつつ探索するには丁度いいのか?
「すまねぇな、コイツがドジった。傷は塞いだから死にはしないが、そのまま行くのも放置はできねぇし、帰って来た」
全員が戻ってのリーダーが言った言葉はそれだった。
リーダーの男が、お嬢様を警護していた女に手を振り、フライだったか?その男を横に寝かせ、
「そっちもすまねぇ」お嬢様にも頭を下げて笑う。
・・なんだ?この男は?女目当てか?
「謝罪など・・・私としては秘物を手に入れる事が出来るのであれば、どなたに報酬をお支払いしても構いませんので。不可能とおっしゃるなら、謝罪など必要はりませんわ。代わりの方を用意しますので・・無論ここまで護衛していただいた分の報酬はお支払いいたしますよ」
戻って来たオレ達を一瞥したお嬢様は、男のくさい笑顔を受け流し、全てを察したように微笑んで、予想通りの答えが返ってきた。
「じゃあ、オレが今からその秘物を持って来た場合、支払いはどうなる?そっちの4人組と同じ報酬を払うのか?単純計算で4倍になるのか?」
・・・「そうですね、[秘物を買い取る]形の契約になりますのでそう考えていただいて結構です」
「そんな馬鹿な!」リーダーが声を上げ、その反応を聞き流すようにお嬢様は勇者の方に目を向けていた。
「ジョンさん?は解っていたようですね」
なんで疑問符なんだよ、まあそれは置いておくとして。
「・・それは、貴族の考え方じゃないけどな、商人の考え方だ。
商人は商品の質が良ければ買う相手の仕入れ先は二の次だ。ヤツらは第1に儲かること・第2に自分の身の安全、その次ぎぐらいが違法性だ。
それも商人自身の心情とか許容範囲の問題で、特に気にしないヤツなら盗品だろうと商品棚に並べるだろ?」
だからこそ、商人は悪に傾き易いと言われている。本質は人と物を繋ぐ重要な橋渡しなんだけれど。
「オレ達が盗賊だとでも言うのか!」
「まぁ、ジョンさんは商人の経験もおありで?」
「恩人が商人なんだよ」それだけだ。
女はリーダーの激昂[げっこう]を無視してオレをさぐってくる、嫌な感じだ。
「・・ムノフさん?そのように声を荒げられても、契約は変りませんよ?正しく必要な物を用意していただく事で、こちらも報酬を正しくお支払いします。違いますか?」
「なあリーダー、コイツ・・ジョンを今だけチーム入れたらどうだ?フライが倒れた穴埋めにもなるし、多分コイツレベル以上に役立つ気がするんだ」
「ふざけるな、こんな怪しいヤツを入れて報酬も山分けするのか?これ以上人数増やして取り分を減らしてどうするんだよ!」
「・・なぁ、勧誘はありがたいが。オレとpは別口だからな?二人分もらうぞ?」
元より、こいつらの仲間になるつもりも無いが。
「こいつ!やっぱりか!あとから現れて報酬を掠め盗ろうって魂胆だろ!こんなヤツを信用できるか」
「私としては、秘物を用意していただいた方に報酬をお支払う事は、変りませんわ。
貴方達も、報酬と私の家のコネクションが必要なのでは?」
「なら、ここでごねて醜態を見せるのは得策とは思えませんわ」
頼れる方と言うのは、言葉は少なく結果だけ示せるものですから。お嬢様はこっちを見ながら同意を求めるように微笑む。
(オレはただお前達と話したく無いだけだ、こっちを巻き込もうとするな)
「あら?冷たいお態度。ふふふ、興味が尽きませんわ。ですがこのまま押し問答をしていても始まりませんので、契約の内容をハッキリいたしましょう」
金持ち+邪神像+お嬢様・・・ふふふ、楽しくなるのかなぁ?




