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プロト、魂を与えれた機械。

・・・・

 異臭と共に目が覚めた、ダイニングから漂う生ゴミを煮込んだような悪臭。

「・・おは・・よう・・ございます」


「やあおはよう!きょうもいい天気だ!さぁ席に座りたまえ、スープの時間だよ

今日のスープはなんだい?」


 鍋を前にナニカを煮込んでいるロボが振り向く、悪臭の元は緑と灰色の煙を上げ

赤色の液体を皿にそそぎ始めた。

「ハカセ・キョウハ・ミミズとスコップモグラ・クワガタ・・デス」


・・・

「ハハハ、みみずは滋養強壮に効くらしいし、モグラはほ乳類だ。きっと美味しはず」

 博士もひきつきながら、[手を震えさせて]笑っていた。


「・・?ロボ?なんだ?」

 ロボの目が勇者をじっと見つめるように顔を近づけ、固まった。


「?アレ?キミには言って無かったかな?この子の中に入った精霊との契約で

名前を与えているんだよ?アレ?」

 博士もオレも記憶が混乱しているように頭を捻る。


「キミのアイデアで魂を入れる手段を探した結果、魂では無く、精霊を宿らせる事で

人間とのコミュニケーションをとれるようにしたのだよ」


『父と子と精霊の名において』と言うじゃ無いか。笑いながらスープにスプーンを入れ口

にアレを流し込む。ゲホッ!ゲホッ!


 天罰でもくらったように顔の色がみるみる変る、(やっぱり神ってヤツは・・)

人間にひどい事しかしないようだ。


ゲホッ!「そうだな、ワシ、ガウスの一人息子プロト。料理はアレだが働き者で人間の友となる

機械の体を持つ、最初の隣人だ」


・・・・チッ、


「キミのアイデア、発想、そして生命まで与えたのだ、プロトはまだ人間の区別が少ししか出来ないが、キミの名前くらいは憶えさせてもいいだろう!聞かせてくれ

『君の名は』」


「・・・勇だ」吐き気がする、このスープの匂いだけが原因じゃない。


「ガウス・プロト・勇・・よし!プロト、大事な名前だ憶えておくのだぞ?」

 プロトと呼ばれたロボはオレの顔を覗き込み、U・U・UUU・・

数度オレの名を声にすると、黄色い目の点滅が青に変った。


「U・スープ・U・スープ」

 正直食べたくない、何かないか?この毒物の摂取を回避する何かが。


「そう言えば、スープの具材もそうだけど。変った事は無いか?

たとえばこの周囲も魔物達が攻め込んでくるような」


「ハッ、ソイツ等は全員スープの具材にしてやるわい!プロトは単純な家事だけでなく戦闘も出来るように設計しているからな・・・・」


「・・他にも、何かあるんだな?」

 口を濁した博士に食い入るように聞く、

(博士はスープを食いながらでも良いんだぜ?おれは・・またの機会って事・・

にはなりそうにないか・・)

 ジ~~~~と光る目と起動音が近い、顔が近いんだよ!待て、あと少しだけ待ってくれ。

 覚悟を決める時間を下さい!


「・・まあアレだ、設計図がどこかへ行ってしまったじゃ。

といってもプロト本体がここにいる訳だし。ひとの為のロボが増える事に異存がある訳でなし、

改造のアイデアも、この先の改良計画も頭の中にあるのだから、何も問題無いといえばそうなのだ」


 いわゆるパクリか、発明の権利をどこかに取られて馬鹿を見る。

研究一筋の人間はよくそんな目に合うらしい。


「粗悪な模造品が作られる前になんとかするべきだな、オレが調べておくよ」

 それじゃっ、立上がろうとしたオレの肩をロボ・・プロトが掴む。


「スープ・・U・スープ・・」

「解ったよ、調査は喰ってからだ。」手加減を頼む、神と精霊の加護がありますように

・・・ガメオベラ!ブヘッ!・・・


 誰かがチーンと鐘を鳴らす、やはり神は駄目だ、今度からは別のモノに祈る事にしよう。

そう強く心に誓った。


 目が覚めた時、シーツは埃が溜まりベットの板が割れ・・

(・・・同じ・・か)


 割れた木の板の扉のノブを回し、金属をこすって鍵が開く。

 灰色の空・・・か。


 リビングルームに行くと、ギコッ・ギコッ・ギコッ・・

「ハカセ・・ハカセ・・ハカセ・・」

 

ベットの上にある白骨、なぜか毛布を掛けられ汚れがその場所に溜まって虫が湧いている。

ギィ・・扉を開け、ロボがスープを運んでくる。


「ハカセ・ゲンキ・ナイ・・スープ・・スープ・・ゲンキ・ナル・・ハカセ・ハカセ」 

スープはハカセと呼ばれた白骨の口にそそがれ、ベットのシーツを汚していく。


「ハカセ・ハカセ・ベット・ヨゴレタ・・ベット・ヨゴレタ・・」

 ロボはオレには気が付かないのか、シーツと毛布を取り替え、白骨を戻して去って行った。


 空洞の眼窩は何も写さず、開いた口に残った歯はスープで汚れている。

頭の髪も抜け落ち体も骨がぎりぎりで残っていた。


 白骨の横にある小さな机、その中にしまわれた本・・日記を取り出し、博士の文字を目で追う。



・・・魔王が現れ世界は変った、男は魔物と戦い、傷付き倒れ、畑は荒れ森も川も海も奪われ、大人も子供も苦しんでいる。

(書き始めは・・同じか・・・)


・・・・・・

 

 男がやってきた、そいつは私の求めていた物を持って来たと言う。

何と言うことだ!神に祈りが通じたのか!ああ神よ!私は今日を忘れない!


 重心の問題も男の言葉で解決した、もうこれでガラクタなどと言わせんぞ!


 ああ・・ああ、歩く事は出来ても動く度、何かさせる度に命令をしなければならないなんて

・・これでは糸が外れただけの操り人形ではないか・・どうしたらいいのだ。


 悪戦苦闘の日々が続き、私は部屋を歩いては壁にぶつかるロボに自分の姿を重ね見る・・

壁・そして壁だ。進んでも壁、戻っても壁ばかり、そんな時に魔鉱石を譲ってくれた男が現れた。


 一晩私の話を聞き、翌朝ロボを見た男は言った。「魂が入っていないと」

そうだ!魂だ!その発想は無かった!

 ワシは早速、ものに魂を宿らせる方法、その事例を探し始め、ついにその技術を組み込む方法に成功した!


 呼び出した精霊と契約し、ロボに命を吹き込んだのだ。

そしてロボとなった精霊に[プロト]と名付ける。ああ、我が子よ!プロト!

 今日がお前の産まれた日だ!私は真っ白な我が子[プロト]にあらゆる事を教えていこう。そうだ!先ず私の名前とお前の名だプロトよ、私の鉄の子供プロト。


勇者は機械を壊し、時を繰り返す事で機械は魂を持つ。

勇者が壊したのは、魂を持つ機械だったのか、それともプロト、

博士が作り出した鉄の友人なのだろうか。そして時が巻戻った時、

そこに立つ物に魂はあるのだろうか。

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