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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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族長を口説き落とす勇者様。

「・・私の・・勇者様?」サフィールの目がオレを映す、

(バカ!何を!)その目は驚きと疑いを浮かべ、何かを読み取ろうとするように目を開いていた。


「これは失言、ですがこの事も勝利を確定させる一つの鍵なのです。

 こちらに勇者様がいて、敵は魔物。


 これだけでも戦争の勝利には十分ですが時間がありませんし、なにより私の勇者様は、お前達を救うのが使命ではありませんから」


[おれ達は人間の死体の数・戦争の犠牲には責任を持たない]つまり、『自分たちが死にたく無ければ、自分たちで戦え』と悪魔は言った。


(でもな!ここは過去の世界だろ!この時代の勇者が別にいる・・はずだからオレが[勇者]として関わるのは不味く無いか?)


(そこは大丈夫です、この男を黙らせさえすれば誰も知る事は出来ませんので)


 黙らせるってなぁ・・まあ弱みでも握れば・・・


「そこで質問です、黒水の場所を教えなさい。それがこ戦いの鍵となるのですから」


 戦士達に力を認めさせ、勇者と名乗った男の仲魔の質問に困惑しながらも、オレの目を見ながらサフィールは口を開いた。


「詳しい場所は・・私にも解りません」

「ハッ?今更なにを、お前・脳味噌掻き回されたいのか?あぁん?」


 素早く手を伸ばすヤールを押える為に勇者は腕を回す、丁度腕を組む様な形で引っ張ると『あふん』とか、なにか力の抜ける声を出して悪魔は大人しくなった。


「少し落ち着け、いま『詳しい場所は』って言っただろ?」

 それはつまり大体の場所の見当くらいは着いているって事だろ・・だよな?

(全く知らないって事なら、呆れて組んだ腕から力が抜けるぞ?ホントに)


「私の知る限りでは・・北西の枯れた岩山の谷間に、死の谷と言う場所があると・・・・

 そこには呪われた黒く固まった土と、腐った空気が近寄るもの全てを呪い殺すとだけ・・

本当に詳しい場所は知らないのです」


 近寄れば死ぬ、そんな場所を好んでヒトに言いふらす大人はいないと。


(確かにな・・子供は危険とか危ない場所に行きたがるからな・・)

 それでも族長とかに伝わっているってのは、責任ある人間が近づかないようにって事だろうか。


「このオアシスから見て北西だな?」他の町とか場所が基点なら捜索範囲は更に広がるからな?


 コクンと頷くサフィールに今度はオレからの質問だ。


「・・あとな、戦争が終わったら・・なんて話は縁起が悪いからしたくないが、報酬の話だ。

オレ達の目的は・・あの椰子与さんの腕に装備している[星の腕輪]だ、戦争が終わって落ち着いてからでいい、あれを片方オレ達の報酬としてくれ」


 元々のこの場所に来た目的は[星の腕輪]を手に入れる為、それが今は戦争に巻き込まれ・・・愚痴は置いておくとして。


「旦那だろ?なんとか説得出来ないか?」族長命令とかならカドが立つだろうけど、夫の泣き落としでも、熱意ある説得でも命令よりは効果はある・・よな?


「・・それは・・他の物ではいけませんか、たとえば・・・土地とか」

「旅の途中のオレに土地なんて貰ってもど、どうしようも無いだろ」

 それにここは過去の世界だ、土地を貰っても帰る時にはこの世界の人間の手に返すしかない物をもらっても・・


「お前、アホですか?砂しかない砂漠を全部差し出されても私の勇者様は喜びませんよ?『今直ぐ宝を出せ!』と言わない勇者様の優しさに感謝しなさい」

 ね~~て腕の力を強くするな、体を押し付けるな!


「・・それでは、人はどうでしょう。良く働きま・・・」

「お・ま・え・は・・奴隷・・・商人・・か?」殺すぞ?


 怒気が沸き立つ、なんだ?コイツ、

 族長とか大将とか、ひとより少し立場が上だと勘違いしているヤツは、直ぐ他人を差し出し、命や生命を交渉の材料に使う。


(ここのヤツらがいいヤツで、強くタフなヤツが多いのは解る。でもな、他人がどうこうして交渉の材料に使う事は・・拳を交えたオレが許さない)

 

「ご!誤解です!勇者様、勇者様が魔王を倒す為に旅を御続けられるなら、従者として我々の中から戦士をお出ししようかと!」

 殺意と怒りを込めて睨む勇者に焦り、手を振って誤解を解こうとした。


(チッ、それでも本人の承諾無しで決める事じゃねぇだろ・・まぁ何となく立候補しそうな漢の顔は浮かぶけど・・なぁ)


「それでも、駄目だ。・・詳しくは言えないが、アレが無いと困るんだよ・・凄く」

 過去の人間を連れて戻ったら、歴史が変わってしまうしな。


 他には何も要求しない、その言葉でようやく

「なんとかしましょう」と言葉を引き出した。

 

 いや、解るよ。夫婦でも奥さんの所有物・国宝を本人がいない場所で取引に使い、勝手になんとかしようってんだから、

でも、こっちも[星の腕輪]が無いと帰れないんだ。仲魔も待ってるんだしな。


「しかし・・その為には・・私と・・私達部族と契約して頂かないと駄目だと思います。・・それは大丈夫ですか?」

 なにか言い難くそうな顔で、契約の追加を聞いてくる。でも、オレの方も『何が何でも』必要なんでね。

(契約ねぇ・・譲渡しても売るなとか、他人に譲り渡すなって所だろ?)

 後は、必要が無くなればできる限り返品しろって所か。


「いいよ、こっちは頭を下げて譲ってもらう立場だ。無茶苦茶・無理難題な要求で無ければ飲むつもりだから」


 仲魔を寄こせとか、何年間の無償奉仕とか、奴隷になれとかでなければ何とかする覚悟はるつもりだ・・・。


(覚悟は・ある・つもり、っていい加減な感じはするよねぇ?)


 勇者の返事に明らかにホッとした表情を浮かべ、「ありがとうございます」と。


「こちらこそだ」腕がガッチリとホールドされていなければ握手で契約完了していた所だよ。

わかるかい?その腕を掴む悪魔くん?


「報酬の約束は済んだようなので、次ぎに戦争の方針ですが。

お前、本日から各部族をまとめ軍を作りなさい。

 このまま戦えば戦力比から言っても負け確定、他の部族も各個撃破されて終りです。


 それなら魔物と手を結んでいない部族を集めて対抗して戦った方が勝率は上がります・・

ひょっとしてお前達は、私の勇者様だけを戦わせて『ハイこれで終り』などと考えてませんよね?」


 ・・て言うか、それ、じいさんに聞いた話なんだが、[まだ]その段階にもなって無かったのか?

このサフィールが部族をまとめ上げて、王を名乗るんだよな?たしか。


「そ・・それは・・しかし、他の者ではいけませんか?石積みの[ピラミット]の反対側に私などよりもっと相応しい方がいらっしゃるので」

 何とか代表の指名を拒否・移譲しようとするサフィール、その気持ちはわかるが。


「黙れ、勇者様はお前を選んだのです。他の人間の側には立ちません。「それにその男なら・・」気にする事はありませんから」

 その男・・多分死んだか買収されているか、ヤールの情報網で得ているのだろうか。


「しかし・・私には・・この目が・・ですから」


 ヒトと違う目の色、そして族長になるまでにあった差別と偏見は、族長となった今でも古傷となっているのだろう、「でも、そんなの気にする事か?綺麗な色じゃないか」砂漠で緑の瞳を持つ男、妖精の目だっけ?べつに醜悪も嫌悪も無いけど!!


「痛たたたた」(なにする!悪魔!)


([なにする]ではありません、私がいるその場所であちこちに色目を使って!この可愛い勇者さま!])


・・・「ハハハ、そう言われたのは二人目ですよ。一人は妻ですが、ハハハ」

 照れるように顔を背けて、笑っている。待て!お前男だろ!何だその照れは!

口説くって説得の意味があります。あとヤールは勘違いされがちですが、中身は女性で見た目は男の格好をした悪魔ですからね。そして基本ゴモリーさんを除き、悪魔と天使に性別はありません・・どちらにも化けられると言う意味で。

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