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お使いクエスト発生、そして敵発見。

 飯を食って一夜を明かす、(なんだろうな・・殴り合ってスッキリしたか?)

盗賊のアジトでごろ寝しただけで熟睡したような気分だ。


「カン田、世話になったな」

 泥棒に入って殴り飛ばした人間の言う言葉じゃないが、宝箱の中身以上の何かを手に入れたような感じがする。


「そう思うなら、もう少し世話しろよ。新入り」

「新入りじゃ無ぇよ!そう言う減らず口がきけるなら、もう大丈夫だろ・・・、

最後の質問があるんだが、教えてくれ。

カン田、お前オレが部下を殴り飛ばす時、黙って見てただろ?なんでだ?」


 アノ隠し技はとにかく集中する必要がある、背後から襲う事も出来た筈だ。

「部下が死ぬかもしれない、そうは思わなかったのか?」


 少なくとも、アレは人が殺せる技だ。あいつが生きているのは運が良かっただけだ。


「・・ふぅ・・お前、自分の顔をあまり見ねぇくちだろ?

あの時のお前の顔な、人殺しのソレじゃ無かった。

それに、おれが仲間を馬鹿にした時は黙っていたが、お前はその仲間を信じて足止めをさせた」


 『仲間を信じるヤツに、おれの仲間は殺せない』

そう思ったから、と言った。


「そんな今時珍しいヤツと、おれは戦いたかったんだ。拳と拳・1体1でな」

「おれが、受けないとは思わなかったのかよ」


「結果はオレの挑戦を受けただろ?これでも盗賊家業は長いんだ、

そいつがどんなヤツかなんて大体わかる。

綺麗な制服の下に、ドブに落ちた獣の死体より臭ぇ汚ぇことを考えてるヤツなんて何度も見た。

悪党には悪党を見る目ってのがあるんだよ」


・・・・


「そんなオレが断言してやる、お前は・・こっち側の人間じゃ無ぇ。

お前は間違ったりせず、そっちを歩いて生きろよ」


・・・なんかこいつの部下やっても、いいような気がしてきた。

でもまぁ、おれもおたずね者だから迷惑かけるだろうし・・


「そっちは・・このまま泥棒を続けるのか?いずれ捕まるぞ?」

「あ~~そうだな、おれもこいつらも、やんちゃするのは最後にするさ。痛いのはもう勘弁だからな・・・そうだ、こいつを返してきてくれ」


 カン田が遊び飽きた玩具のように黄金の冠を放り投げた。

 キラキラと朝日に光る宝石と王冠、放物線が作る終点・最後にオレの腕があった。


「盗んだヤツが返しに行くなんて、格好悪いだろ?」

・・・「ああ、お使いは、なれているよ」


 そうだな、こんなスッキリとした気分での、お使いクエストは始めてな気がする。


「・・なぁ、お前、以前どこかで・・」

「知らん!・・さぁな・・・知らないな、どこにでもあるような顔だからな。

他人のそら似だろ・・」


 一瞬の怒気を誤魔化すように、オレは後を見なかった。

「そうだな、お前もオレを見習って格好に気を付けたら次ぎは忘れねぇよ!じゃあな!」


(・・フッ、最後まで良い男だなお前は・・それに比べておれは・・)

「じゃあな」多分気が付いたが、とぼけてくれたカン田に肩越しで手を振って答える。


 塔の外は晴れ、入った時とは別の世界に見える。オレは王冠をボロ袋にしまい、あの城を目指す。


 走って行けば半日はかかる距離、なんで王族のために走ってやらないと行けないんだと、

のんびり草原を・丘を・林を歩く。


(・・少し疲れたな・・それに、王冠を返すにしてもオレが顔を出すのはマズイよな。やっぱり・・)国王同士の繋がり、連絡手段を持っていると考えるべきだろう。


 まさか自国の勇者を闇殺しようとしている、とは言わないだろうが。

オレ個人を縛って捕らえる名目なんか簡単に作れるだろう。


(王族なんてそんな物だ)信じるに値しない。

 報奨は欲しいが、それを命と引き替えにはしたくない。それに・・

(王族の出す褒美は、元は市民から奪い取った税だ。なにが嬉しくてそんなヤツらの出す物に頭を下げてやらなきゃいけないんだ!)


 おれは権力者の犬じゃない、盗人の出す餌にヨダレ垂らし・尻尾振って媚びるような、

犬の真似が出来るか!


 そう思うと、この王冠がひどく穢れて見える。重みも・腰に擦れる間感覚も不愉快だ。

(・・男と漢の約束だからな、はぁ・・今更ぐちぐち言うのは男らしくない・・か)

 それさえ無ければ、その辺の岩にぶつけて砕いて捨てていた。


「少し休憩だ、城には人が減った時に入るから、その辺の森で夜まで休むぞ」


(その間、ピョートルはどうしようか。逃げるとは思わないが・・放置したら野性に返るのか?

それとも人間の冒険者に襲われるか?)

 判断が付かない、魔物を城に入れるのは騒ぎになるだろうし・・う~~~~ん。


 片手間で角ウサギをさばき、堅いムカデを分割して殺す。

多少堅くなったバッタをバラシ、デカいナメクジを斬り殺す。


「そのスライムの好物はどれだ?それを・・」

 スライムはおれが何かを言う前にバッタを飲み込み、ムカデで触手を伸ばしていた。


「・・勇さん、すみません。こいつ、勝手に・・」

「いや、いい。それよりウサギ肉をバラすから、周囲を見ていろ・・喰うだろ?」


・・・森の中で火を焚き、肉を焼く。少し休んだら、面倒な[仕事]が待っているんだ

今は何も考えず、体を休ませたい。


───────


・・・殺気?それも・・けっこうな数、なんだ?

殺意では無く、殺気。遠くから覗き様子を見ながら囲む、まるであの町のヤツらのような・・

違うか?あれは嘲り、もっと不愉快な視線、こっちは敵意か。


「どちらにしても、遠巻きでコソコソ見られるのはいい気分じゃないな。何者だ?」

 片手に銅の剣、片手に鱗の盾。数は多そうだが、斬って裂いて包囲を抜けるくらいなら出来るだろ。(敵さんが、本職でなければな)


「ピョートル、いつも通りだ。身を守れ、命を大事に」

 構えたオレ達の動きを合図に、包囲を気付かれたと理解したヤツらが木の陰から姿を現わした。


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