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戦いが終わって、死屍累々。

「やっぱりな、思った通りだ」

 目を覚ましたカン田は、天上を見ながら自分の状態を確かめるように腕を上げた。


「なにが思った通りだよ、勝手に倒れやがって」

 倒れた盗賊の一人に包帯を巻ながら、ようやく起きたカン田の声に顔を向ける。


鎧と武器を剥いだ盗賊をぐるぐる巻にして転がす、[回復]は使わないからしばらくは

起きる事が出来ないだろうが、死にはしない・・と思う。


「オレに勝ったくせに、城に突き出さないって信じていたぜ。

そんな目をしていたから、そうだろうなとは思ってたが・・・オレの感も鈍っちゃいねぇってな」


「なにを言いやがる、アレはお前の勝ちだ。お前、本気じゃなかっただろ?」

[加速]も唱え直さず、ただの殴り合い勝負・それも横槍が入っての結果だ。認められるか!


「何を言いやがる・・か、勝負ってのは最後まで立ってたヤツが勝者って決ってるんだ。

だから、オレこそ『何を言ってやがる』だ。お前こそ、あの痛そうな拳・使わなかったくせによ」


・・・『勇者はレベルがあが』「ウルセェ!クソッ!男の話に口出しするな!クソッ」

 イラつく、そんな事のために・・戦っているんじゃないんだ・・


「大丈夫か?」

「勇さんは、時々ああなるんですよ。」

 いきなり大声を上げた勇者の行動に、言葉少なくピョートルが説明する。

 多分それ以上の説明をされたら、怒りが再発していたかもしれない。


(カン田が敗北を認めたから・・か?、それともオレが勝利を確信したからか・・)


 自分が勝ったなど、思っていない・・とは言えないと、心の奥底で勝ったと思ったからか?

 誰か、何者かが、自分の深層を覗かれているようで気持ち悪い。


「カン田、なぜ[加速]を唱え直さなかったんだ?それにそれ以外の魔法も・・あるだろ?」

[加速]だけを憶えるなんて事は無い。


「・・[加速]か、オレの魔法はあとは[幻惑]と[鈍足]しか使えねぇ。もしそれを使ったら・お前、

本気を出していただろ?」


・・「本気だった・・・さ」本気、[人に向ける力]としての限界だった。


「やっぱりな、お前の本気はソコに寝ているヤツらを巻き込む・・だろ?」

「チッ、仲間思いが!」


 おれがイライラした頭を掻きながら舌打ちをする、がそのカン田[らしい]言葉になぜかイライラが消えるような気がする。


「休む」

 起きた時縛られていたり、牢に入れられていたらお前ら殺す。とは言わなかった。

 多分大丈夫だと・・信じて・・信じて?だと?


 次ぎに目を覚ました時は、ベッドに寝かされていた。

(手足は・・無事、縛られていない。周りも・・普通の部屋だ!)


 どうなった?ここはどこだ?

 飛び起きた瞬間、頭がグラ付く。貧血か?それとも毒か?


ベットから這うように歩き、扉に手を置いた。

(・・その前に武器だ、なにか・・なにか無いか?)


 ベットの脇に銅の剣が・・まるで呪いだ、よく探せば盾もおいてある・道具袋も。

(なかは・・薬草と毒消し・・あと金も・・)


・・・「どうなっている?」

 扉を開けるとピョートルが扉の横に座り、扉を開けたオレを見上げていた。

よく見れば鎧は汚れ、疲れ切っているように見える。


「起きて下さいました・・か・・」


 スライムの上からピョートルが崩れ落ちた、

(意識を失ったのか?なぜだ?)


・・よほど疲れていたのか、決してスライムから落ちる事の無い騎士がスライムから落ちるなんて。


「交代だ、お前はベッドに寝ていろ」

 魔物が寝てる所を襲うヤツは・・多分いない、まだフラフラする体を床に、

もう一眠りする事にする。



 ぐぉぉぉぉ・・・

 きゅるるるるるるる・・・・

死ぬ・・死ぬ・・・・


(うるさい・・なんだ・・なんの音だ・・) 

 遠くから聞こえる僅かな悲鳴に目が覚める。


(・・体の熱がとれてる、まさか・・こいつが?)床に転がるスライムがやったのか?

・・まさかな。


 扉を開けるとそこには・・・死屍累々、包帯の生物がいくつも転がり、呻いていた。


「ミイラ男か?」


「ハァハァハァ・・この・・ままじゃ・・そうなる・・ぞ・・」

 大男[カン田]が呻く[うめく]一体なにがあった?


「もう・・2日も、水も食い物も・・無い・・腹が・・減って・・動けない・・んだ」

どうやらあれから丸2日間、眠っていたらしい。


「食い物は・・食料はどこにしまってあるんだ、あと水も」

 アジトだから、それくらい置いてあるだろ?


「水は・・瓶の中だ・・が・・う・動けねぇんだ・・」

 と言うことは、動けないから食い物も・・

「わかった、水と食い物だな。待ってろ・・死ぬなよ?」


「苦労をかけるなぁ・・すまない」

「・・それは・・言わない約束だろ?・・・って以外と元気なんじゃないか?」


「あと・・喰わせてもらって悪ぃが・・味が無ぇな」

「飢餓状態の胃袋には刺激物は毒なんだよ!」オレの腕が悪い訳ではない!


 ヘヘヘ、「そっちは[回復]で体力も傷も戻ってるんだ、冗談くらい付き合えよ」

「回復で体力と傷が治っても、その分疲れは出るんだ。状態的には同じくらいなんだ」

 オレは残りの盗賊にも粥[かゆ]を喰わせ、起き上がらせる。


(けっこうぎりぎりのヤツもいたな、そいつには[回復]をかけておいたから

もう大丈夫だろうけど・・)


 塔の魔物を殺しスライムに与えると、丸呑みしてシュウシュウと消化している。

オレとピョートルは鳥系魔物の足を焼いて喰う、血が作られる感覚、胃が食料を待ち構えていたのがよく解る。

ああ、本当に疲れがとれる・・そんな感じだ。



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