ようやく到着、砂漠の町[オアシス]
日の光に浮かぶ砂色の壁、大地の砂と同じ砂でこねて作った日干しレンガを砂で覆って、大地の保護色が無知な旅人を拒絶している都、砂漠の交易都市オアシス。
(って無知な旅人ってオレ達か?位置をある程度把握して無いと日中でも見落とす感じだ。防犯とかそんな意味もあるんだろうけどさぁ)
限られた水・限られた生存領域、そんな場所を魔物から・・外敵から守る為にカモフラージュしてこの町を守り続けている壁か。
「アレがオアシスです!ようやく・・ようやく見つけました!」
・・そうだね、ホフメンくん。本当によかったよ。
「見た感じ、かなり閉鎖的に見えるけど・・入って大丈夫なのか?」
どう見ても、『一見さんお断り』って感じに見える。
「フッフッフッ!違うんですよねぇ・・それが。要は自分達の事を知らない人間が来ると町が荒れるのを警戒しているんです。でも、私達は・・この場所を知っていて見つけた・・つまり」
「流れ者はお断り、だが旅人の中継地としては歓迎されるのか?」金と物資を落とす商人も含めて。
増やす人口はオアシスの民だけ、カネや物資を落とす旅人が出入りする事は自由。
[正し、場所を知る者だけ]か。・・・統治者が考えたのなら、オアシスの統治者は商売を・・経済を知っている。
「・・ヤール、認識阻害はどの程度いける?ゴラムも[多少大きな人間]で通せるか?」
ゴーレムの大きさは、勇者達が中に入っている馬車の天井と同じ高さ、横幅もほぼ同じ・・普通に大き過ぎると思うんだが。
ふふふ、「待機で」
「で、あるか」
予想通りの答えが返ってきた、キラーパンサーくらいならギリギリ[大きな猫]でいけたのだろうけど、やはり無理であったか。
「ですが、彫像として不審がられない程度には出来ますよ・・ただし動かなければばれない程度ですが」
「まあそれでいいか、馬車の見張りもあるし」
と、言うことで町の近くで馬車を止め、勇者達は砂漠の町[オアシス]の入り口をくぐる。
(すまんな、少し町を見て夜になったら泥棒に入るだけなんだ。それまで馬車を頼む。お土産の[足の速くなる装備]はやるからな)
・・しかしアレだな、堅く・腕力が強く・素早いゴーレムとか、敵からしたらインチキもいいところだろな。
「それにしても・・」
男は焼けた肌を布で覆ってはいるが、鍛えられた筋肉が布をもり上げ、手と指先がガントレットのように硬そう・・鍛えてあるのか。
「砂漠で鉄の武具は身体を焼きますからね、拳と・・ブーメラン・あとは弓ですかね、それで戦うんですよ」
近距離は拳・遠距離は弓と投擲武器・・夜は姿も見えない程暗く、明かりを付けると敵は的になるだけ。そして昼間は暑くて鉄の防具なんか着けて戦ったら、立っているだけで火傷する。
砂漠の兵士が少数でも強いのは、そういった天候・地形を熟知してゲリラ戦を使うからだろうか。
(夜中に鎧のこすれる音も立てず陣地に潜入してきて、拳で殲滅とか敵からしたら嫌過ぎる。もし失敗しても、鎧を着けないなら逃げる時も早いだろうし・・)
戦争の演習として、魔物と戦っているのかも知れない。
常在戦場とか、戦闘民族の血が濃すぎるんだろうか。
男は腰にブーメランを差し、女性は・・あんまりいない?
「ほとんどの女性は、昼間は女王様の所で働いているのですよ。お年寄りは体力の関係で室内に、子供達は訓練場か神官様の所で勉強ですよ。」
そうか、交易都市だから算数と多国語は必須、そのほかにも商売をやるなら他国の文化や習慣を学んでおけば役に立つだろうから。
[商武合一]合理性の塊みたいな感じか。
(資源も無く、住める土地も少ない砂漠の人間だから、無駄をそぎ落とした生活をしないと生きて行けないんだろうか)
「取り合えず・・休む所を・・」
ボーと立っていても暑いだけ、勇者がキョロキョロと日陰を探していると
「旅の人かね?・・水をお求めなら酒場を案内しようか?」
腰を曲げた[多分老人]に声を掛けられ、勧められるまま酒場に行く事になった。
「ありがとうございます、、どなたで?」
「ああ、いいよ。こうやって旅の人を酒場に案内するのが私の小遣い稼ぎの爺さね。
アンタさんは休む場所が見付かって、酒場は炎天下で呼び込みをせんでいい、そしてワシは小遣いが手に入る。みんなが得するんだ、それが一番さ」
それに、上手く行けば・・旅人さんが一杯奢ってくれる事もある。らしい。
(ちゃかりと言うか、なんというか)①
「この町の話を聞かせてくれるついでなら、奢らせてもらうよ。」喜んでね。
ホッホッホッ「そうだねぇ、旅の人にこの町の話をするのも楽しみの一つさ」
そう言って笑いながら、彼は歩いて行く。②(おもしろい爺さんだ)
「いらしゃい!・・おっ爺さんまた連れて来てくれたのか。相変わらず、すげぇな。
って、お客さんを放って置いちゃあ、また爺さんに笑われちまうな。お客さん全部で4人かい?ならテーブルだな。案内するぜ」
「亭主になっても、まだまだだ。ワシを入れて5人だよ亭主、この優しそうな旅人さんの顔を見たらわかるだろ?」なぁ旅人さん?
「・・ああ、同じ席で頼む。爺さんの酒はオレが奢るよ」
苦笑いで案内されたテーブルに銀貨を5枚・・6枚積んだ。コレで頼むって事なんだけど、大丈夫かな?
「・・お客さん、あんたこの町には向いてねぇな。この町は生きるも死ぬも金次第、値段も見ずに金を積んでたら、尻の毛まで抜かれちまうぜ。
・・まあそれでもこっちは商売だからな、きっちりもらわせて貰うけどな」
酒はでかいピッチのようなコップで5杯、肉が大皿で積まれ、削った岩塩が皿にのせられて運ばれてきた。
野菜は堅い瓜科の物を薄くスライスしてある、後は・・豆、乾燥したマメを茹でて潰した物をスープ状にしたやつだった。
「ワシはナツメをいただくよ、わけてくれるだろ?」
「この皿のヤツか?なんかフルーツっぽいけど」甘いのと酒ってあうのか?
「歳を取るとね、甘い物の本当の美味さってやつが解るようになるんだよ。ホッ、子供に戻っちまうのかね」
頭から被った日よけ布を取った男・・爺さんはニッコリ笑いナツメを口に入れもぐもぐとしてから果実酒を一口。(くっそ美味そうに食いやがって)




