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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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夜の砂漠は色々あるのだ。

「・・・あれだな、[勇者の力]ってのは練習には向いて無いな」


 途中出て来る魔物相手に意識的に力を出そうとしても、仲間が倒してしまう。

 それにただの魔物相手に殺意を湧き出させる事も難しかった。


(同じような実力、少し強い程度の敵・・・教会の連中は勇者候補同士で練習してたんだなぁ・・)そう考えると、王国より教会の方が勇者の力に詳しいのだろうか。


(ピラミットの待機で時間を使い過ぎたか?)

「方向的にはあってるんだよな」


 太陽の光りが落ち、星空に包まれた砂漠は暗い。ホフメンが星空で方向を確認してくれている事だけが救いだった。


(夜空の星の位置で方角を見定めるって、訓練場じゃ習ったけどなぁ)

実際使うとなると、全然違う。


 [大まかな方向が解る]では、現実の移動はズレが大きすぎるんだ。


「そうですねぇ・・この方向に、あと半時くらい進めば」

 砂漠の町は水が少ないので、火事を出さない為に夜の明かりは少ない。そのせいで夜の星明かりに隠れて余計に見え辛くなっていた。


(それも含めて、砂漠の商人が流通を独占できているんだろうなぁ)


 砂の海を渡るラクダの商船。昼間は熱の地獄で、夜は寒く方向も見失う星の海。

(道理で『砂漠は世界が違う』って言われるわけだ)


 攻めても得る物は少なく、砂漠の民はこの土地では無類の強さを誇る。それ故に世界から独立した国だと。


(少しは落ち着いて休めるかもな)

 逃亡者である勇者が安心して休める、多分そんな国だと期待したい。

[金が有る限り]という前提ではあるが。


 やはり金、世の中は金が全てを解決する!


「その為にはまず船だな、なんとか客としてもぐり込むつもりだったが」

 自分の船を手に入れて世界中の海を渡る、そうすれば陸の事情なんて関係ない。


・・町はまだかな?

「もう直ぐですよ、もう直ぐ。オレだって数度来た事があるくらいなんですから、そこまで詳しくありませんが、距離と時間から考えてもホントもう直ぐです」

 勇者の質問に慌てたようなホフメンは答えた。


「・・なぁ、それって。馬車で砂漠を越えた時の話か?」

 馬って草食だろ?それに暑さにも耐えられたのか?


「フッフッフッ!ボクとパトラッシュにいけない道はありません!たとえ吹雪の高山だろうと!溶岩の湧く火山の火口だろうと進んでいけますよ!」


・・自慢気に・・いや本当の自慢なんだろうけど、それ本当に馬か?UMA[ユーマ]じゃないのか?


(そう言えばあいつ、こっちをじ~と見てたよな?人間の言葉が解る・・とか?)


 少し恐い、っていうか、そんな謎生物が家の納屋に住んでいる宿ってどうなんだ?

あの爺さん、食われてたり洗脳されたり、解剖されて中身が別人になってたりしないよな?


「ああ!そうですよ!ボクが子供の頃、パトラッシュに翼が生えて空を飛んでいたのを見た事があるんです!父は信じてくれませんでしたが。」


・・・(いや、家族の事だから口は出さないけどさ、それ、ほんとに馬か?それともホフメンはナニカを施された後だったりしてな・・・)


「そうだな、雪でも砂漠でも進んでいける迷馬なら空だって飛ぶさ・・」

ムフゥーー「そうですね、いつかゆうさんにもお見せしますよ。空を飛ぶ彼女の姿をね」


・・・その時は、ゴラムの他に、[動く石像]とか[サイクロプス]とかを仲間にして待ってるからよ。飛べるものなら飛んでみろよ!謎生物! 


 喧嘩を売ってるわけじゃないんだ、ただ飛んで連れて行かれ先に銀色の円盤とか、目玉の大きい銀色の小人とかいたら恐いじゃないか。


(そこに金色の竜はいるかも知れない)けどさぁ!


 進んでは止り、星の位置を見て方角を変える。その度に跳び上がってくるコウモリ猫と火を吹く芋虫。(中々蟹が出て来ない・・なぜだ?匂いか?)


 蟹食いの呪いとか?カニを食ったらヤツ等、本能的に砂から出て来なくなるとか?


「ゴラム!その辺の地面を殴ってくれ!カニを追い出すんだ!」


 少し小腹が空いたんだ、今度はそうだなぁ・・カニしゃぶでも・・

そう思ったんだ、その時は。


 砂を叩く音に現れたのは闇夜に浮かぶ人型の影、そいつは暗闇の中をコウモリのように羽ばたき赤い目を馬車に向けてきた。


「カニの代わりがコウモリ男かよ」ハズレだ、喰えないじゃないか。


「コウモリ男とは失礼な、夜の帝王にして暗闇の魔王、バンパイヤ様だ!人間め!恐れおののけ!」

 コウモリ男は急降下し馬車に蹴りを放ってホロを揺らす。


「ホフメンは馬車に待機だ!行くぞ!」

 言葉通りのヤツなら、人間が戦うのはマズイ。子供の頃に吸血鬼は、人間の血を吸って仲間を増やすって・・教会の神父か誰かに聞いた。


 馬車から飛び出したオレとピョートルとヤール、それに最前列で力を溜めるゴラム。

 一丁殺りますか、なんせ相手は・・夜の帝王らしいし。


 最初にヤールの[氷結]で羽根を氷らされ、落ちて来た所に勇者の斬撃が完全に羽根を斬り飛ばした。

 続いてピョートルの火炎斬りがコウモリ男の身体を焼きながら切り伏せ、痛みに悶えるその胸にゴーレムの巨大な拳が衝突した・・不幸だ。


「・・なんですか!アンタ達は!酷いじゃないですか!そんな本気で殴らんでも・・」

 砂漠を徘徊していたゴラムの事は知っていたようで、彼だけは警戒していたらしい。


「?・・アレ?貴方達、どこかで?・・スライムの騎士?・・それに後の方は・!?」

 コウモリ男はオレの顔を見た瞬間、腰を抜かしたようにガタガタと振るえ叫び声を上げて走りさって行った。なんだよアレは。


「意外と本当に夜の帝王だったのかもな」身体の再生力だけは凄い。


「バンパイヤは、夜の間は不死身・・のはずですから、所で勇者様はアレと面識が?」

 いや?知らない、砂漠に来たのは・・二度目だけどコウモリ男と戦った記憶は無い。

  

 そっちこそ、結構な悪魔なんだろ?ヤールに怯えたんじゃないか?

 

(それとも、あの頃のオレを・・ヤツ等の背中に隠れていた当時のオレには、見えなかったのかも知れないけどな)


「ヤツが自分で言うほど強く無かったし、夜にしか出ないなら追って殺す事も無いよな?ホフメン」

 多分だが、傭兵を雇った商隊なら追い払う事は出来る。危険度は低いし、数も少なそうだし・・問題は無いだろう。


「・・そうですね、コウモリ男の弱点[聖水]を持っていれば多分危険は無いでしょうし・・このままオアシスを探す方を優先しましょう」


・・?探す・・優先・・?

 やっぱり迷ってんじゃないか!全く!


「危険が少ないなら、少し休もうぜ。朝日と共に行動すれば、暑さも少ない時間帯で着くだろ?その方が見つけ易いなら体力は温存すべきだろ?」


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