お前、足手まといなんだよ、。
「お前・・足手まといだよ、そろそろ抜けてくれねぇか?」
砂漠を抜け、ピラミットを守る蟹に殴られ瀕死になったボクは、戦士に引き摺られて街に戻った時
そう言われた。
「確かにな、魔法も今一、剣の腕も戦士に劣る。罠も外せんし、防御も弱い。お前を連れて歩くのは……リスクでしかないんだ」
・・・でも、最初は皆、力を貸してくれるって・・
「・・ごめんね、弱すぎる仲間を連れて行くのは、結局私達の身にも危険にさらすのよ・・
回復にだって、限界があるのですから・・」
確かに、魔法はウイザードみたいに高レベルの魔法は使えない。回復だって神官のような奇跡は
使えない、でも・・でも・・
「王様達の支援だって」ボクがいなければ・・
「あぁ? あんな100や200ぽっちでお前みたいな、ガキのお守りしろってか?
こっちは命張ってんだよ! 上のヤツらがなんて言おうが、現場で痛い目をしているのはオレ達だ!」
ボクの言葉にイラつくように襟首を掴み上げ、戦士はボクをにらみ付けた。
「大体な?あの程度の支援なんざ、この辺の魔物を倒してたら一日で貯まるだろ?」
その程度の価値なんだよ、お前は!
「・・頑張るから、もっと頑張ってレベルを上げて」
強くなる、みんなを守れるような男になる。
「レベルを上げたら、オレより強くなるってのか?それともジジイのような魔法を使える様になるってのか?」
戦士は戦いのエキスパート・魔法使いは魔法に人生を捧げたような使い手、そんな人達に
並べるはずもないボクは、黙って下を向くしかなかった。
「いいかげん・うっとうしいんだよ!神に選ばれた、だあ?神様だって間違える事があるって証拠だろ?お前なんていなくても、オレ達だけも魔王討伐くらいやってやるさ・・・」
だ・か・ら・失せろ!
ガツッ!瀕死のボクの腹を蹴り飛ばし、肺の中の空気が逃げだし息が出来ない。
うっ・・うぇぇぇぇ・・
口の中に酸っぱい体液が上がり、鼻からも液体がこぼれ出す。
ただでさえカニにやられた体が、ズキズキと痛む。
「せめて・・回・・復・・し・・て・・」
「回復して下さい・・でしょ?」
神官は哀れな動物を見るように見下ろし、聖女のような笑顔で微笑んでいた。
「回復して・・下さい・・」
「そいつは、もうパーティじゃねぇんだ。回復に限度があるなら勝手に使うんじゃねぇ!」
戦士がボクの腹を踏み、足裏で捻ってから宿屋から放り出した。
「ごめんねぇ~~戦士が怒ると守ってくれなくなるから~~」
手の平をヒラヒラ振って、神官は扉を閉めた。
地面に転がされ、込み上げる胃液を吐き出し、目から流れた悔しさの味は、一生忘れないだろう。
その日、なんとか帰ったボクはドロだらけのままベットにもぐり込み、誰にも聞かれないように
泣いた、悔しさと無力感と[なんでボクが勇者なんだ!]って悲しくて泣いた。
・・・・・・・
「勇ちゃん!いいかげん起きて来て、話をしましょう・・ね・ね・?」
「うるせぇババア!金なら渡してんだろ!昨日だってスライムとコウモリとバッタぶっ殺してその金をやったろうが!」
あの夜からもう5年は経った、オレは仲間に捨てられた勇者として馬鹿にされ、
町を歩くとガキまでオレを指さして笑う。
町中のヤツらに嘲笑され、王のヤツも会うことを拒否するようになった。
オレが町中のヤツらに馬鹿にされている間にも戦士共は、やれ魔王の手先を追い払っただの、
どこかの塔を攻略しただのと聞こえてくる。
(反面、おれは町のヤツらに顔を見られないよう、夜中に町の外で弱い魔物を倒して鬱憤[うっぷん]
を晴らす毎日だ、クソッ!)
母親気取りのババァもいいかげんオレに、『出て行け』と、言わないが空気で解る。
夜中にこっそりと飛び出し、怪我をすれば帰る、その繰り返しを5年・・もう5年続けているんだ。
扉の外に置かれた飯をガッツいて放り出す、「クソッ!むしゃくしゃする!」
外ではオレを笑っているような声が聞こえ、オレはまた枕に頭を突っ込んだ。
(もう、ほっといてくれ!だれもオレの事なんか忘れてくれ!あいつらの話なんか聞かせないでくれ!)
歯ぎしりと手の震え、恐れと悔しさがあの時の戦士の顔と共に浮かび上がり、涙がかってに流れ出す。もう5年も経っているのに・・
さらに一年経った頃、オレは道具屋の扉を叩いていた。
「・・あんたか、・・いいかげん昼に来てくれねぇかな」
夕食時間だったらしく道具屋のオヤジは不満そうに口をもごもごさせてオレを見上げる。
毒のスライムに襲われ、どうしようも無くなったオレが真夜中に扉を叩いた時からの付き合いだ。
「じゃあ明日からは、早朝か真夜中だな、寝ていても叩き起こす事になるけど・・・どうする?」
「・・チッ、まぁ客は客だ、今日は何が欲しい?薬草か?毒消しか?」
「薬草と毒消しだ、それぞれ3つずつ」おれは金を突きだし、道具屋は手の平で受け取って数え出す。
「・・松明は、いらねぇのか・・」
今度はこっちが舌打ちする番だった、「うるせぇよ」それだけ言うと、背中を向ける。誰が好き好んで向こうに行くかよ、向こうにはヤツらがいる、偉そうに戦果を上げてにやけているヤツらが。
「・・オラよ、受け取れ」袋の中を確かめず、オヤジの出したソレを受け取り、
『じゃあな』がいつもの流れだ、が今日は。
「これは・・一人ごとなんだが・・聞け、戦士・・元お前さんのパーティの消息が途絶えた・・
道具屋連中のうわさなんだが・・魔王の側近かなんかにやられたって噂だ・・お前さん・・・
気を付けろよ」
「あいつら死んだのか!?」ざまあみろ!力も無いくせに、魔王なんかと戦うからだ!
これであいつらも弱者の気持ちってヤツが解るだろうよ!
「それがオレになんの危険があ」るって話になるんだよ。
そう言う前に道具屋の木戸は閉り、なんだかモヤモヤしながら・・
(今日はいいか、あのクソどもが、くたばった記念だ!魔物共に感謝して今日は殺すのは止めてやる・・ああ今日は、良い夢が見られそうだ)
今度はギャグなし、本気のファンタジーをお楽しみ下さい!
・・楽しみにしていただけたら、コメントとかお願いします。
ゾンビのような毎日投稿はできませんので、ゆっくりお楽しみください。