隠すものは
ここはどこだ。
私は確かにほんとうの自分探しに来たはずなのに。
いつのまにこんな厳重なロックと鋼鉄でできた扉の施設に入ってしまったんだ。
道行く人は、人じゃないな、ロボットか。
かすかに駆動音がする。
「ここから先はご本人様は通れません」
なぜだ。
私のことを知りに来たんだ。もし私に関わることなら私が通れないなんて理不尽だろう。通してくれ。
「エゴのご命令です。ご本人様だけは通せません」
わかった、じゃあこうしよう。
私は赤の他人になろう。
赤の他人なら通れるのだろう。
ポケットから取り出したサングラスをかける。
「赤の他人様……ご本人様以外なら通れます」
どうぞ、と鋼鉄の扉が開いた。
いったいどこにつながっているんだ。
いくつもの扉を赤の他人としてとおり、たどり着いたのは、ひときわ大きな扉。
この先にはとんでもないお宝があるのだろう。
私の隠された才能がついに見つかるのか。
センサーか、自動で扉が開く。
まぶしい、胸はどきどきとうるさい
ひらいた目に映ったのは、乱雑に置かれたものが積み重なってできた山だ。
山のてっぺんは白んでみえない。
天井から降り注ぐ光のせいだ。
天井は遠く見えないが。
もの、はよくみるとへんてこな形をした結晶だったり、くすんだ色味の使い道が分からないもの、ごみ……いや、ガラクタだった
「どうしてここに来たんだ」
逆光で見えないがガラクタの山の上に誰かいる。
本当の自分を探しに来たんだよ。
厳重なロックの先に必ずいいもんが見つかると思ってたんだけどなあ、肩透かしだ。
「お前にはこれがガラクタに見えるんだな」
ガラクタだろう、もしくは不法投棄の山だ。
「これはお前のカケラだよ」
わたしのカケラ?こんなガラクタのようなものがわたしの一部というのか。
「おれはお前がいらないと判断した、お前のカケラたちを集めてるんだ」
そんなの集めてどうする。
「いつかお前が探しに来る、その時を待ってるんだよ」
こんなガラクタを探しに来たわけじゃない、私はほんとうの自分を。
「まだ、いや、いつからお前にはこれがガラクタに見えるんだろうな」
「大丈夫。お前が気付くそのときまでおれがちゃんと守っておくから」
誰かはことさら丁寧にそういうと姿を消した。
私は足元のガラクタを手に取る。
橙色のそれはステッキに似てる。
そうだ、昔好きだったアニメに出てきてた。
どうして、ここにあるのだろうか。
だってあれは、すぐいらなくなるでしょうって、買ってもらえなかったものだから。
<これはお前のカケラだよ>
私さえ忘れたものをひとりコツコツと集めるあいつはなんなのか。
胸の奥が痛いのはどうしてだろうか。
もうすこしあいつと話をさせてくれないか、涙がなんでか出てくるんだ。
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