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005


「みんな!」


リュウの村に入り、少し進んだところで、やはり先程の男の仲間と思われるプレイヤーが3人と、その横で、リュウの友達だと思われる女プレイヤーが4人拘束されていた。


「おうおう、誰かと思ったら昨日の女か?ん?そこの男はβテスターのノブナガか、隣の女はわからんな」


不意に一人の男がそう呟く。


ノブナガがβテスターというのがわかるということは、この男もβテスターなのだろうか


「そうだ。俺がノブナガだ。あんたは?」


ノブナガが聞くと男は不気味な笑みを浮かべて言う


「俺はサイザー、この世界を支配するものだ」


「なぜ、こんな事を?」



「決まってるだろ?この世界を支配するためだ。このゲームは武器やモンスターのポップする場所が限られている。支配者としては愚民どもに狩場を渡すわけにはいかんからな」


サイザーと名乗った男は被っていたフードを取ってそう言った。


俺は一歩前に出て言う、


「そうはさせないな。人の命を軽くみるお前たちにこの世界を支配させるわけには行かない」


「女、お前βテスターじゃないだろ、よくそんなことが言えるな、それと、見張りをさせていたアイツはどうした?」


「俺が倒した。殺してはいない、戦闘不能にしただけだ」


「ほう、仮にもレベル28のアイツを倒したか、面白い。その実力、見せてもらおうか?」


「構わない、だが俺が勝ったらこの場を去り、二度とこんな真似はしないと誓ってもらおう」


「いいぜ、ただし容赦はしねぇ、いくらこの世界がデスゲームだろうとな」


サイザーは鎌を構えてそう言った。


俺も剣を鞘から抜き、サイザーに向かって構える。


すると、ノブナガが俺の肩を掴み声を震わせて言った。


「無茶だ…サイザー、思い出した…βテスター同士で行われたデュエル大会で2位になった鎌使いだ…お前じゃ勝ち目が無い…」


俺は肩を掴んでいるノブナガの手を退けていった。


「ノブナガ、さっきも言っただろ、ゲームは実力主義だ。レベルが高かろうが、βテスターだろうが関係ないだから、任せろ。おまえはリュウの友達を頼む」


「…分かった」


「面白い事を言うな、お前。そこまで言うんだから、死んでも文句いうなよぉッ!」


「ッ!」



サイザーから振り下ろされた鎌の一撃はさっきの男の剣撃よりも遥かに重かった。


俺は剣で受け、【カウンターブレイク】を発動しようとしたが、重すぎてうまく返すことが出来なかった。


両者、一度距離を取る。


村全体に緊迫した空気が流れた


「オラッ!」


「フッ!」


キィィンと、金属音が鳴り響く、再び相打ちになり、【カウンターブレイク】の発動チャンスがやってきた。


行けるッ!


発動(アクティベート)!【カウンターブレ…】」


鎌を受け、反動を利用して剣を返そうとしたその瞬間…


ピキッ!


俺の剣が音を立てて折れてしまった。


「フンッ!」


しまッ!


「グァァッ!」


受けていた剣が折れ、サイザーの鎌は振り降ろされ、俺の右腕が切断された。


「あッ! シオンッ!」


奥でサイザーの取り巻きと交戦していたノブナガが叫んだ。


「グッ!…」


クソ!クソ!クソォ!痛い!立ち上がれない!


俺のHPバーは今の攻撃によって大幅に減少した。


「フッ、確かにお前の言うことは一理ある。しかし、武器にこう差が出るとな、勝ち目ねぇだろ?」


サイザーが近づいてきて言う。


「なかなか強かったぜ、あばよッ!」


と、鎌を振り下ろして来た。


あぁ、死ぬのか…


と、目をつぶり諦めていた。


しかし、斬られた感覚はない、恐る恐る目を開けて見ると、俺の前でサイザーの鎌を剣で受け止めている金髪のプレイヤーの姿が目に入った。


「もう、大丈夫だよ。私が、来たから」


金髪のプレイヤーがいい、サイザーの鎌を払うと、目にも止まらぬ速さでサイザーの肩を斬った。


「グッ!お前は…その金髪の長髪にその金色の目…βテスターナンバーワンの、アリアッ!」


サイザーは鎌を落とし、斬られた肩を抑えながら言った。


「そう、だよ。これ以上斬られたくなかったら、ここから引いた方がいいよ?」


と、アリアと言われた女性は剣先をサイザーに向けて言った。


「チッ!仕方ねぇ、お前に免じて今日は引くとしよう。だが!次はお前の首を取る。そして、俺がこの世界の支配者になってやるッ!お前ら!撤退だ!」


「は、はい!」


そう言ってサイザー率いるプレイヤー集団は撤退して行った。



良かった。なんとかなったようだ…な


「シオンッ!おい!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は…気絶していたのだろうか。


情けない、肩を斬られて、痛みと死の恐怖で、


何も出来なかった。アリアさんが来なければ、俺は死んでいた。


「ん?…」


てっきり地面の上で気絶していると思ったのだが…なんか頭に柔らかい感触が…


考えていると、上から顔を覗きこまれた。


「あ…‥起き、た?」


俺は察した。現在俺は膝枕のようなことをされていて、しているのはこのアリアさんだ


アリアさんは俺のやたら長い銀髪の髪を優しく撫でてから言った


「頑張ったね、痛かったね、怖かったね」


「俺は…このゲームを…クリアして見せるって…決めたのに…腕を斬られた時、怖くて、痛くて、何も出来なかった…」


「うん、見てたよ。分かってる、君は、きっと強くなる」


耳元で優しく囁かれ、目頭が熱くなってきた


「あ…れ?俺は、泣いてなんか…」


「強がるのもいいけど、泣くのも大事なんだよ、泣いた数だけ強くなれるって、いうでしょ、だから、今は…」


アリアさんはさらに顔を近づけて囁いた


「泣いても、いいよ」


そう言われた瞬間、俺は歯止めがきかなくなり


アリアさんの膝の上で、静かに泣いた



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