001
無限に広がる壮大な土地。
このゲームがスタートして3ヶ月が経とうとしているが、未だにその大きさは計測できていない。
それでも、プレイヤーが到達した地点には『フラッグ』と呼ばれるものが建っており、【テレポート】の術式で自由に移動することができる。
このゲームは無限大の自由が売りのゲームだ。
このことが意味するのは明確なクリアが存在しないということだ。
この世界には現在、世界各地の約10万人もの人々が囚われている。
このゲームの名は〈インフィニティリベルタ・オンライン〉
三ヶ月前のあの日…このゲームがスタートした日の事を人々はこう呼んだ。
「史上最悪の日」と。
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「ようやくこの日が来た」
全速力で学校から帰宅した俺、由月 紫音は部屋に入るないや、そう呟いた。
今日は新作のVRMMO、〈インフィニティリベルタ・オンライン〉の正式サービス開始の日だ。
三年前、〈awtp〉という企業によって開発されたフルダイブ技術によって人々は、五感を仮想世界に接続できるようになった。
VRMMOの大流行はこの3年間でも衰えることなく、現在9本のソフトが存在する。
今日は10本目のソフトである〈インフィニティリベルタ・オンライン〉の正式サービス開始の日なのである。
そのタイトルの名のとうり、このゲームのコンセプトは無限の自由の追求である。
剣もあり、魔法もありのなんでもありの世界。レベル制 スキル有りのファンタジー世界。
VRMMO好きの俺にとってはたまらない新作である。
二度のβテスター抽選に見事に落選した俺は、正式サービス開始の日を今か今かと待ちわびていた。
俺は急いで用を足して、机に置いておいたフルダイブ用マシン、『クラウンステーション』を手に取り、ベットに横たわる。
「さてと、このゲームでは必ずなにかを成し遂げてみせる」
俺はそう呟いて、言った。
「起動!」
《視覚接続開始…10%…70%…100%視覚接続完了…》
人工音声が聞こえてきた直後、俺の意識は仮想世界へとシフトした。
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「はぁ、やっぱりアバターメイキングは面倒だなぁ…」
仮想世界に入るないや、初期のアバターメイキングに勤しんでいた紫音は、呟いた。
「あ、おまかせ設定使ってみるか」
俺は名前だけ入力してお任せ設定のコマンドを押した。
すると再び人工音声が聞こえてきた。
「これより、インフィニティリベルタ・オンラインに接続します、それでは行ってらっしゃい」
直後、俺は光の渦に包まれた。
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「やってきたぜ、〈インフィニティリベルタ・オンライン〉」
情報によると、ここは新規プレイヤーが全員転送されるいわば始まりの街だ。
やっぱフルダイブってすごいなぁ…
俺は街をしばらく歩いてみた。とりあえずは街を歩いて情報を集めなければ
ファンタジー感広がる世界、やはりいつ来ても痺れるなぁ
これからどんな大冒険が俺を待ち受けているのだろうか?
もしかしたら運命の出会いがあったり?…
そんな事を考えながら歩いていると、とある店の窓ガラスに映る人物に目が止まった。
「おお!なんだこの銀髪美少女は!?」
そこに移っていたのは身長150センチメートルほどの少女。銀髪の髪の毛に赤い瞳。胸元の脂肪は寂しいが、それでも道行く人々の目に止まるであろう美少女がガラスに映っていた。
俺は振り返り、その銀髪の少女を探した。
しかし、振り返った先には少女愚か、ほかのプレイヤーの姿もなかった。
あれ?と思いもう一度ガラスを見てみると、そこにはやはり銀髪の美少女が写っていた。
もしや?と思いガラスを見ながら自分の顔に触れてみた。
するとガラスに映る少女も顔に手を触れた。
「おーい、おーい?あれ?接続エラー?」
「うっ…そぉ」
「おーい!大丈夫かぁ?」
衝撃の事実に声を漏らしていると耳元で大声で呼ばれた。
「うわぁ! び、びっくりしたぁ」
「驚いたのはこっちだよ嬢ちゃん、どうしたんだい突っ立って」
と、俺に声をかけた細身の男は言った。
その男は赤一色に染まった防具を身にまとっていて、その背中には赤色の大型剣が鞘に収められていた。
「す、すみません。ちょっと驚いていて…あと、俺は女じゃなくて男です。アバターはこんなですけど」
「え?…」
「あれ?おーい?」
「あぁ、すまない、それにしても驚いた。そのアバターの見た目で男とは…」
男はやや信じられないかのように言ってきた。
そこで俺は手を軽く振ってメニューウィンドウを開き、アバターカードの欄をタップして男に見せた。
「ほら、これを見てください」
と、俺はアバターカードを見せた。
「ほ、本当だな…shi…o…n…シオンって言うのか?」
「はい、そうです。あなたは?」
と俺が聞くと男はメニューウィンドウを開いてアバターカードをこちらに見せてきた。
「えーっと、ノブナガさん?」
「ああ、そうだ。あんた、このゲームは今日が初めてかい?」
「はい、そうなんです。βテスター抽選2回とも落ちてしまって…」
「そ、そうなのか…いや、実は俺二回とも当選したんだよな、あと、タメでいいよ」
「そうか、じゃあそうする。2回とも当選するなんてすごいな、あぁ、だからもうそんな装備を揃えてるのか」
俺が言うとノブナガは頷いて
「あぁ、βテストの時に大型剣にすっかりハマってな。なんていうか、この重いモノを振り下ろしてmobを斬る感覚がたまらないんだよな」
「そうなのか。なぁ、ノブナガ良かったらこの世界を案内してくれないか?」
「あぁ、いいぞ。俺もゲーム仲間が欲しかったところだからな。なんでも聞いてく…ん?」
言いかけたところでノブナガは眉間にしわを寄せて首を傾げた。
「ん?どうした?」
「いや…なんか、ノイズが入ってるような気が」
「ノイズ?まさか…なっ!?」
ノブナガが言ったように確かにノイズが発生しているしかも、だんだんと大きくなって来ている気が
ザーーーと、どんどん大きくなっているノイズ、それが聞こえるのは俺とノブナガだけでは無いようで、周りにいたプレイヤーも声を上げていた。
「おい、どういう事だ?なんなんだこのノイズは!?」
プレイヤーはかなり混乱している。
俺は混乱しながらもとあることを思い出した。
「そ、そうだ。GMコールすれば治るのかも」
ノブナガに向かってそういったが、ノブナガは首を横に振って応えた。
「いや、無理だ。このゲームのGMは人間じゃない」
「え?どういうこ…」
俺が言い終わる前に急に周りが闇に包まれた
「プレイヤーの諸君このゲーム、楽しんでもらえてるかな?」
何も見えないこの状態で男か女かの見分けのつかない声が聞こえてきた。
「私はこのゲームのゲームマスターにして、世界初の汎用型AI…名前はないのでそうだな、アイとでも呼んでもらおうとか」
ゲームマスターがAI!?それに、汎用型ってどういうことだ?
「さて、本題に入ろう。たった今このゲームの全権利は私が乗っ取った。そして、ログアウトは不能となり、このゲームで死ぬと現実世界のプレイヤーの脳にはペナルティとして高出力の電磁波が流れて脳を焼き切る。すなわち死ぬという事だ。通常、ゲームをクリアすればデスゲームから解放される、ということだが、このゲームは違う。このゲームは無限の自由を追求するゲーム、だから明確なクリアなんて存在しない、これが意味することは…分かるかな?」
は?…う、嘘だろ?このゲームから出られない?それもここで死んだらリアルでも死ぬ?|
「人生にクリア などない つまりこのゲームにクリアはない。検討を祈るよ、プレイヤー諸君。是非、私の知能を超える、システムすら超越する存在が現れることを期待しているよ」
その言葉と共に視界がクリアになった。
「うわぁぁぁぁ!助けてくれぇ!」
絶望するプレイヤーたちもいれば現実を受け入れられないプレイヤーたちもいた。
世界初の汎用型AI、アイによって支配された〈インフィニティリベルタ・オンライン〉
明確なクリアが存在せず、脱出する方法も分からない地獄のデスゲームが今、幕を開けた…
作者からのお願い
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