仲間として
化け猫と化したエルスカーネを元に戻し、取り戻した俺達は気を失ったエルスカーネを抱き寄せるアイムの元に近寄った。
「バカな…! こんな事が…!」
忌々しそうに奴隷の館の店主は俺達を睨みつける。
だが、俺達はソイツは眼中になく、ガランに視線を移す。
「形勢逆転だな…!」
ブレッターの銃口をガラン達に向けるが、奴はククク、という笑いを浮かべる。
「形勢逆転…? フフフ、面白い事を言いますねぇ。…まだ形勢はこちらに傾いていますよ」
「何…?」
何が言いたいと、奴に尋ねる。だが、奴に答える気配はない。
「いずれわかりますよ。いずれ…ねぇ」
ガランはテレポートアイテムを取り出す。
「なっ…⁉︎ 待て⁉︎」
「では、ご機嫌様」
そう言い残すとガランは奴隷の館の奴等と共に何処かへテレポートした…。
テレポート先がわからない以上、追う事は不可能か…。
「取り敢えず、街に戻る。…エルスカーネを休めないとな…」
俺達は街に戻り、エルスカーネを宿屋に休ませる事にした。今はルルが看病をしている為、俺達はアルシエルさんの装備屋にへと足を運んだ。
「坊主、無事だったのか!」
「アルシエルさんも…ご無事で何よりです!」
俺達が無事と知り、笑顔になったアルシエルさんだが、すぐに表情を暗くさせ、申し訳なさそうにする。
「あのガランって奴の事は聞いた。すまねえ…俺がまんまと騙されなければ、お前等にも危険が及ばなかったのによ…」
「謝らないでください。疑わなかった俺達にも落ち度はあるんです」
謝るアルシエルさんに俺は首を横に振る。
「それで猫の亜人の嬢ちゃんは?」
「今、宿屋で休ませています。時期に目を覚ますと思いますが…」
大ダメージを受けたワケじゃないから大丈夫だとは思うがな…。
「にしても亜人の嬢ちゃんが化け猫の正体だったとはな…」
本当にそうだったのか…?夜だとしても噂とは違っていたはずだが…。
それか本当にエルスカーネが…。
「また目を覚ましたら連れてきます。じゃあそろそろ…」
みんなを連れて、戻ろうとしたその時、アルシエルさんに呼び止められた。どうやら話があるみたいなので、他のみんなを先に宿屋に戻らせた。
「それで…話ってなんですか?」
「お前さん…亜人の嬢ちゃんを倒そうとしたんだよな?」
「…」
確かに俺はエルスカーネを倒そうとした…。メリル達を守る為に…。
「最低な男ですよね、俺…。大切な仲間のエルスカーネを手にかけようなんて…」
「嫌、お前さんは間違っていないさ。あそこで判断を鈍らせていれば、お前さん達は確実に全滅していた。だが…」
だが…?
「後悔だけはするな。生命は一つしかない。誰かのためだけではなく、お前さん自身がどうしたいか…それを叶えてからでもいいんじゃねえか?」
俺が…どうしたいか…。
「お前さんには心を許せる仲間がいる。…だからこそ、亜人の嬢ちゃんもお前さんを信用したんじゃねえのか?」
「エルスカーネが…」
「確かに仲間を守る事がギルドリーダーとしてのするべき事だ。だが、自分自身を押し殺している奴に他の奴を束ねる事は出来ない。周りだけでなく、自分自身にも目を向けろ。そして、後悔がない道を選び、生き続けろ」
重みがあるな…本当に…。
「ありがとうございます。俺…頑張ってみます!」
「おう! またな!」
アルシエルさんに元気付けられ、俺は装備屋を後にした。外に出ると辺りは既に夜で暗くなっていた。
「早く帰らないとメリル達が心配するな…」
急ぎ足で宿屋に向かっていると不意に声をかけられた。俺はその声のした方へ振り向くと以前夜中に出会った女がいた。
「久しぶりね」
「アンタは…怪しい女…」
「ちょっと! 神秘的なお姉さんって言っているでしょう⁉︎」
だから、無理があるっての…。
「何か、随分とすっきりした顔してるわね。何かあったの?」
「装備屋の店主さんにいい事を教えて貰ってな…。ホント、俺は誰かに元気付けられてばかりだ」
全くダメだと笑いながら、話す俺に彼女は首を傾げた。
「それでいいんじゃないの?」
「え…?」
「人は一人じゃ生きていけない…。だからこそ、仲間や友達、家族がいるんでしょう? 辛かったら、誰かに頼って一緒に悩んだっていいじゃない。助け合って生きていく…それが人ってモノよ」
助け合って生きていく…か。確かにそうだな…!
「何か、見ず知らずのアンタにまで元気付けられてしまったな。ありがとう、怪しめのお姉さん!」
「どういたしまして! …って、神秘的なお姉さんって言ってるでしょう⁉︎」
「そうだったか? あ、そろそろ戻る。ホントに助かった! またな!」
そう言い残し、俺は駆け足で宿屋に向かった…。
そんな俺の後ろ姿を眺めながら、彼女はため息を吐いた。
「全くもう…強いのか弱いのかわからない人ね…。でも、何があってもあなたは私が守るから…」
そう、何かの決意を露わにし、彼女はその場を去った…。
宿屋に戻ると既にみんなは眠っていた…。未だ目覚めないエルスカーネにシーツを掛け直し、彼女の頭を撫でた。
「俺が必ず守る…。メリルも、アイムも、マギウスも、ルルも…そして、お前も…」
そう小さく呟き、俺もベッドに横になり、眠りに着いた…。
昔…俺は彼女…歌音に守ると約束した事があった…。
「ねえ、どうして或都はいつも守ってくれるの?」
いじめられっ子だった歌音を俺は必ず守ってきた…。
だが、ふとした時に彼女は何故自分を守ってくれるのかと、尋ねてきた。
お前が好きだから…、何て、恥ずかしい事は言えず、俺は照れを隠す為に顔を逸らしながら答える。
「お前は俺の幼馴染だ…。だから、守って当然だろ? それとも俺なんかに守って欲しくないのか?」
「そうじゃないんだけど…或都が傷つくのも嫌だな…って」
心配そうな表情で俺を見てくる彼女に俺は笑いかけた。
「俺がお前を守りたい…だから、守っているんだよ」
「或都…」
彼女は頬を赤らめ…そして、笑顔になった。
「じゃあ、これからも私の事…守ってくれる?」
「当たり前だ。何があっても俺がお前を守る。…約束だ!」
俺達は笑い合い、指切りをした…。この時から俺は誰かを守る為に奮闘していたのかも知れない…。
翌日…。
「アルトさん! 起きてください、アルトさん!」
眠っている俺の呼ぶ声が聞こえる…。
「…ん…うぅん…?」
眠たい身体を起こし、俺は目を擦った。
「悪い…寝過ぎたか…?」
薄らと目を開け、目の前の者を見る。その相手は笑顔で俺に声をかけてきた。
「起きましたか、アルト様?」
その声と視界に入った姿を見て、俺の頭は完全に覚醒した。
「エルスカーネ!」
朝だと言うのにあまりの嬉しさに声をあげてしまった俺にエルスカーネは優しく微笑みかけ…口を開いた。
「おはようございます、アルト様」
その彼女の言葉を聞いた俺は不思議と安心感に包まれたのだった…。




