表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
97/174

アイムの迷い


 ーー受け入れられない現実…。

 

 それは生きていれば経験する事があるだろう。

 こうであって欲しくはなかった…。こうなるはずではなかった…。

 

 だが、実際ではそれを変える事は出来ない。どれだけ辛くとも起きた事は受け入れる事しか出来ないのだ…。


「どうして…どうして、エルスカーネさんが化け猫の姿に…⁉︎」


「見ての通りです。この猫の亜人こそがあなた達が探し求めていた化け猫の正体なのですよ」


「け、けどよ! エルスカーネちゃんは奴隷の館にいたんじゃねえのか⁉︎」


 嫌、彼女は以前購入された事があると言っていた…。向かおうと思えば、いつでも国の外へ行けたはずだ。


「このクソ猫は元々奴隷だぜ? 買われた主人を欺き、何処かへ行けるのは当然だろう?」


「そんな…」


絶望しかけている俺達を見て、ガランはククク、と笑い、化け猫と化したエルスカーネに指示を下した。


「さあ、猫の化け物よ! 今こそ、あの者達を切り裂け!」


 ガランの指示と共に俺達の周りの電気の檻は解除され、エルスカーネはグルグル、と俺達を睨む。


「エ、エルスカーネちゃん…!」


 エルスカーネの今の姿に未だ戸惑いを見せる俺達…。

 だが、そんな俺達に構わず、彼女はその鋭利な爪をギラつかせ、俺達に襲い掛かった…。


「ッ…! みんな、下がれ!」


 戸惑いを見せ、動けないみんなの前に立ち、俺はエルスカーネの攻撃をエンゼッターで防いだ。

 ギチギチ、と音を立てるエンゼッターと爪…。


 それにしても…何て力だ…⁉︎


『グラアアアアッ‼︎』


「グオアッ…⁉︎」


 そのまま力で押され、俺の身体は後方へ弾き飛ばされた。


「アルトさん!」


「マスター…!」


 弾き飛ばされ、地面に叩きつけれられた俺を心配するメリル達に俺は声を上げた。


「お前等、目を背けるな! 今のエルスカーネは敵だ!」


「で、ですが…!」


「戦わなければ死ぬぞ! 迷いがあるなら、邪魔だ!」


 迷いや戸惑いなら、俺にもある…。

 だが俺は…もう決めたんだ…!


「俺の仲間を傷つけるというのなら…誰であろうと倒す! それが例え…元仲間でも…!」


 今ここでまた迷えば、スノウの時の決意を汚す事となる。だからこそ、俺はもう迷わない…!


「アルトさん…」


 スノウに関しての俺の心境に気づいてか、メリルは渋い顔をする。


「わかった…!」


「やるしかねえ…!」


 俺に続き、アイムとマギウスもエルスカーネに挑み始める。


 マギウスは《エレキスマッシュ》でエルスカーネの動きを封じ、アイムは近接戦闘を仕掛けるが、《エレキスマッシュ》を耐え切った彼女がアイムを振り払った。

 爪でアイムを切り裂こうとしたエルスカーネにブレッターによる発砲で妨害した。


「俺が動きを封じる! 《エレキケージ》!」


 赤雷の檻を展開し、暴れるエルスカーネを捕らえた。


「今だ、アイムちゃん! 《エレキケージ》解除と同時に攻撃してくれ!」


「うん…!」


 アイムに指示を送ったマギウスだが、エルスカーネは暴れ、赤雷の檻が激しく揺れ、音を立てる。


「《技能(スキル)強化》!」


 音を立て始める《エレキケージ》にメリルは《技能(スキル)強化》をかけ、強化させた。


「メリル…」


「私も…あなたと共に戦うと決めましたから…!」


 ありがとな、メリル…。


「行け、アイム!」


「エルスカーネ…ごめん…!」


 マギウスが《エレキケージ》を解除したと同時に罪悪感を受けながらも目を閉じ、アイムは鋼鉄の拳でエルスカーネを殴り付け…。


『…!』


「アイム…」


 られなかった…。アイムはエルスカーネの鼻先の寸前で拳を止めてしまった…。


「出来ない…! 出来るワケない! エルスカーネは…大切な仲間! 私の妹分だから!」


「アイムちゃん…」


 自らエルスカーネとよく関わっていたアイムだからこそ、手が出せない…。

 俺は…俺自身の考えをアイムに押し付け…彼女にエルスカーネを倒させようとしたのか…?


 でも…どうしたら…!


『アイム…様…』


「えっ…?」


 化け猫と化したエルスカーネから聞き慣れた声が聞こえた為、俺達は彼女に視線を移すと…そこには姿は戻っていなくとも表情は優しいモノに戻っていたエルスカーネがいた。


「エルスカー…ネ…?」


 エルスカーネの声が…元に戻った…⁉︎


『ありがとうございました…私の為に…思い悩んでくれて…』


 目元に涙を浮かべながら、エルスカーネはアイムに訴える。


「ば、バカな…⁉︎ 獣と化した状態で元の意識が戻るなど…⁉︎」


 今の状況はガランでも予測不能だったのか、驚愕している。


『お願いがあります、アイム様…』


「な、何…?」


『私を…殺してください…』


 ッ…⁉︎ エルスカーネ…!


『このままでは私が皆様を殺してしまいます…。今は何とか抑え込んでいますが、もう…』


「そ、そんな事…出来ないよ!」


『私は…これ以上大好きな皆様を傷つけたく…ないのです…!』


「でも…でもぉッ…!」


 何か…何か打つ手はないのか…⁉︎

 このままでは、本当にエルスカーネを…!


『グッ…アァッ…! グガアアアアッ‼︎』


「クッ…⁉︎」


 理性を保っていたエルスカーネは再び、暴れ始め、アイムを弾き飛ばした。


「アイムちゃん!」


 どうする…どうすればいい!


「(私の所為で…皆さんが…! 何か…何かないの…? 誰も傷つけずにエルスカーネちゃんを戻す方法を…)」


 俺が思考を巡らせていると同時にガランに捕らえられているルルも思考を巡らせていた。


 そして彼女はガランの手に持つネックレスに視線を集めた。


「(アレが影響でエルスカーネちゃんは…という事は…!)…ッ!」


「な、何を…⁉︎」


 ガランの隙をついたルルは奴の拘束から逃れ、奴の手からネックレスを奪い取った。


「アルトさん!」


 俺に向かって、そのネックレスを投げつけた。彼女の視線を見て、その考えに気付いた俺はブレッターの銃口を宙に舞うネックレスに向け…発砲した…。


 弾丸は真っ直ぐネックレスに向かい、そして…直撃し、ネックレスは音を立てて、粉々になった…。


『ウッ…アアアアアッ⁉︎』


 ネックレスが粉々になった影響か、化け猫と化したエルスカーネの身体が輝き出し、変化していく…。


 そうか…あのネックレスを破壊すれば…!


「よくもやってくれましたね!」


 ネックレスを破壊された事で怒りを露わにしたガランはルルに拳銃を突きつけたが…。


「《ファイアボール》!」


「ッ…⁉︎」


 そのガランに向けて、メリルが《ファイアボール》を放ち、奴はルルから距離を取る。


「ルル!」


 その隙にマギウスがルルの手を引き、俺達の元へと戻ってきた。


「忌々しい…!」


 ガランは俺達を睨みつける。

 すると、エルスカーネの姿が元に戻り、気を失った彼女は前に倒れるが、アイムがそれを受け止めた。


「良かった…エルスカーネ…」


 安らかに眠る彼女を見て、アイムはホッと胸を撫で下ろし、微笑み、エルスカーネの頭を優しく撫でた…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ