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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
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神秘的なお姉さん


 奴隷の館を後にした俺達は宿屋に戻るべく、歩いていた。エルスカーネは泣き疲れたのか、眠ってしまったので俺がおんぶで背負う。


 安らかそうに眠っている彼女の頬をアイムが突くとむにゅ…、という声を出すのでクスリ、と笑ってしまう。


「それにしても、アイムちゃん…何だが、エルスカーネちゃんの姉貴みたいだな」


「はい。面倒見が良くて、優しいお姉さんですね!」


 姉の様だと指摘され、照れを隠す様にアイムは顔を逸らす。

 彼女もキーズによって、奴隷の様に命令され、戦わされていた…。思う所があるのだろう…。


「…ですが、あの人達…アレで諦めるとは思えません」


 メリルの言う通り…奴隷の館の奴等があんなモノで退くワケないだろう。…暫く単独行動は控えた方がいいな。


「…次にエルスカーネに手を出したら、必ず息の根を止める」


「怖いっての」


 姉らしくなったとはいえ、逆に怖すぎるぞ、アイム…。

 まあ、俺も人の事は言えないが…。


「こちらから深入りできない以上、受け身を取る事になるが、取り敢えずは様子見だ」


「我慢するしかねえって事か…」


 俺の提案にマギウスは渋々了承する。下手に奴等の事を詮索し、騒ぎになれば、こちらが確実に不利だ。ましてや、今回の出来事がある為、よりいっそう慎重に動かなければならない。


 何にしても早く化け猫についての情報を得て、この国から出なければ、騒ぎになるのも時間の問題なのかも知れない…。


 宿に着いた頃には夜だった為、泣き疲れ眠っているエルスカーネをベッドで寝かせ、夕食を取った後、早めの就寝に着こうとする。


 アイムはエルスカーネの横で眠り、メリル、ルル、マギウスもそれぞれ眠りに着いた。だが、俺は目が冴えてしまい、眠れないでいた為、久々に身体を動かす為に城下町の外にへと足を運んだ。


 夜中に出現するアンデッドモンスターが襲い掛かってくるが、エンゼッターで斬り裂き、トドメにブレッターから銃弾を放ち、仕留めた。


 この世界に来て、数ヶ月が経過している…。最初はメリル一人だった仲間も今は彼女含め、五人いる。

 それに伴い守る対象も増えていく。


 …だからこそ、俺は少しでも強くならなければならない。その事を再度自覚し、城下町へと戻る。


 …ってか、門番二人とも寝ているが、大丈夫なのか、この国…?


「あら、こんな夜中に何をしていたの?」


 突然、声をかけられた俺は振り返るとそこには月の光に照らされ、光沢に光る黒髪の女性がいた。


 左目は前髪で隠れており、唯一見える右目はジッと、俺を眺めてくる。その右目で俺の全てを見透かしてくるかの様に…。

 そんな彼女に軽く警戒をし、いつでもブレッターを取り出せる準備をする。


「…言っておくけど、貴方がそれを取り出す必要はないわ。…私は貴方に何もしないもの」


 ッ…! この女…俺がブレッターを握っている事に気がついていたのか…!

 見た所、年齢は俺とさほど変わらない様だが…。


「それよりも答えて…こんな夜中に何をしていたの?」


「…寝付けないから、アンデッド狩りをしていた」


「ふーん、確かにアンデッドのモンスターは迷惑な存在だものね」


 自分の長い前髪を弄りながら、俺がしていた事を知ると何度か頷いている。


「俺からも質問いいか?」


「ええ、勿論いいわよ」


「…アンタは何者だ?」


 その質問を聞いた彼女は前髪を弄るのをやめ、フフッ、とおかしい様に笑った後口を開く。


「神秘的なお姉さん…とだけ言わせてもらうわ」


「…は?」


 何言っているんだ、コイツは…?


「むっ…! 貴方、私を馬鹿にしているでしょ⁉︎」


「嫌、馬鹿にするも何もアンタ、俺とそんなに歳変わらないだろ。…同い歳相手にお姉さんとは言わない。…後、全然神秘的じゃねえ」


「ええ〜? これでも神秘的に振る舞っているつもりなんだけどな〜」


「神秘的に振る舞うって、何だよ…」


 考えが読めない彼女に対し、呆れる俺…。


「それにしても貴方…奴隷の館から亜人を購入したでしょ?」


 …どうして彼女がそんな事を知っているんだ…?


「どうしてそんな事を知っているのか気になるが…一つ訂正させろ。購入したのではなく、引き取ったんだ」


 まあ、ゴールドを払ったから側から見れば、購入したにも見えるが…。


「引き取る…? どうしてその様な事を? 彼女は奴隷で貴方の好きに出来るのよ?」


 質問責めだな…。


「…生命を持つ者が生命を持つ者を奴隷として使うなんて、反吐が出る。…俺達人間も亜人達も同等の生命ある存在なんだからな」


「人間と亜人は同じ存在…」


 そんなに珍しかったのか彼女は目を見開く。


「珍しい事でもないだろ。…まあ、この国の奴等の考えじゃ珍しいと言うのも無理はないな」

 

「何か物凄く馬鹿にされた気分ね…。…この国?」


 ヤバッ…! ついやっちまった…!


「今この国って言ったわよね?」


「そ、そろそろ戻らねえと…!」


 彼女にバレる前に回れ右し、逃げ去ろうとする俺だが…。


「あ、ちょっと待って!」


 逃げ去ろうとしたが、彼女に腕を掴まれた。振り解く事も出来ず、視線を彼女へ戻す。


「な、何だよ…?」


「貴方の名前を教えて!」


「…麻生 アルトだ。アンタの名前も聞いておこうかな」


「…私はいいの」


 …何だよそれ⁉︎


「良いワケあるか! こっちは名乗ったんだ! 教えてくれよ!」


「じゃあ、さっきのこの国って言う言葉の意味、教えてよ。教えてくれたら、私の名前、教えてあげるわ」


 き、汚え…!

 正しくしてやられたって感じだな…!


「わ、わかった…。じゃあ、俺は戻る。おやすみ」


「ええ。おやすみなさい」


 彼女はマズイ…! 何がマズイかよくわからないが、相手にするとこちらが危うい状態になる…!


 俺はそのまま宿屋に戻った…。







 立ち去る俺の後ろ姿を見送った彼女の背後にフードを被った人物が立っていた。


「姫様…彼はどうですか?」


 フードの人物から発せられた声は女性のモノ…その彼女は黒髪の少女の事を姫様と呼んだ。


 その姫様はフフッ、と笑い、先程まで俺がいた場所を眺める。


「面白い人ね。…もしかすれば、彼がこの国を変えてくれるかも知れない…そんな気がするわ…」


 姫様と呼ばれた少女の正体…この時の俺は知る由もなかった…。


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