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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
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亜人も仲間


 翌日から俺達は起き、エルスカーネを連れ出して、遊びまわった。それは五日間ほど続いたが、1日おきに交代し、それぞれがエルスカーネと共に行動していた。


 一日目はルルでエルスカーネの新しい服を選んだり、帽子を選んだりした。


 二日目はメリルで一緒にお風呂に入ったり、遊園地を回ったりした。


 三日目はマギウス(+付き添いに俺)でゲームセンターなどを回った。


 四日目はアイムで動物園や水族館を回ったりした。


 そして、五日目現在…。俺はエルスカーネとカジノに来ていた。正直メリル達には滅茶苦茶反対されたが、来たかったんだよ、カジノ…。



 そして今、俺は一人の貴族とチェスで対決していた。ちなみにチェスや将棋は元の世界での俺の得意ゲームだ。元々頭を使うゲームを得意とする俺は良く友人とチェスや将棋、ブラックジャックやポーカーなどをやっていた。


「これでチェックメイトだ」


「なっ…⁉︎ ば、馬鹿な…⁉︎」


 負けた現実を受け入れられず、椅子からガタッ、と崩れ落ちてしまう貴族。恐らく、俺の様なガキ相手なら簡単に勝てるとでも思っていたのだろう。甘く見過ぎだ。


 その後も様々なゲームを繰り広げた…。


「ブラックジャックだ」


「ノオオオオオッ⁉︎」


 ブラックジャックで出鼻を挫いてやったり…。


「そうだな…黒の5」


「お、大当たりです…!」


 ルーレットを見事当ててやったり…。


「フッ、悪いな小僧。ストレートフラッシュだ。なかなかやる様だったが、残念だったな!」


「…本当に残念だ。…アンタに勝たせられなくて…ロイヤルストレートフラッシュだ」


「何…だと…⁉︎」


 ポーカーでボロクソに勝ってやったり…。


「ん? なんかまた大当たりだな」


 スロットで連続トリプルセブンを引き当ててやったりしてやった。

 結果凄まじいコインの数になってしまったので、半分を景品に回り、もう半分を資金にへと回した。


「ア、アルト様…強運の持ち主ですね…」


「たまたまだ。たまたま」


「アレをたまたまと言うのですか…?」


 あまりの俺の運の良さに顔を引きつらせるエルスカーネ…。


「コインの半分を景品に使うが…何か欲しいモノはあるか?」


 俺にそう言われ、棚に並べられている景品に目を通すとある一つのペンダントに目がいく。


「…あのペンダントか?」


「は、はい…」


「わかった。すみません、そのペンダントを下さい」


「毎度あり!」


 コインの半分をペンダントに変え、もう半分を資金に変えた俺達はカジノから出て、宿屋へ向かう。


「アルト様は…どうしてそこまで亜人の私達を気にかけてくれるのですか? 普通、亜人は恐れられたり、汚らわしく思われたりする種族です」


「…人間だろうが、亜人だろうが関係ない。同等に生命を持つモノ…。だから、俺は亜人を見下したりなんかしない」


「アルト様…」


「安心しろ。お前はもう俺の仲間だ。…お前は俺が守ってみせるからよ」


 ポン、と彼女の頭に手を置いた後、俺は再び歩き出した。


 手を置かれた場所を摩った後、エルスカーネは頬を少し赤らめ、彼女は俺の後を追った…。








 奴隷の館の施設内…そこでは店主と部下数人が話し合っていた。

 その話の内容というのは…。


「何? あの購入されたクズ猫女の亜人がいい思いをしているだと?」


「は、はい…。何となくあの亜人を購入した男達を監視していたのですが、食事を与えられたり、風呂に入れられたり…徐々に笑顔になっています」


「…亜人風情がいい思い、か…。下らねえ…! やはり、ガキに亜人を与えたのは間違いだった様だな。だが、奴等の所に鬼の亜人もいた…。アイツを手に入れる事が出来れば、高値で売れる事間違い無いな…!」


 エルスカーネがいい思いをしている事に対して、険しい顔をさせたが、すぐに何かを思いつき、ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる。


「…部下の何人かを連れて、あのクソ猫を捕らえろ。そして、ついでに鬼の亜人も手に入れる。教え込んでやらないとなぁ? 亜人はどこまで行っても奴隷だと言う事を…」


 奴隷の館の店主の不気味な笑い声が施設内に響き渡った…。







 翌日…。

 一通り遊び終えた俺達はエルスカーネを加えて、化け猫についての情報収集を再開させていた。


 一時間ほど、二手に分かれ、情報収集をしたが、やはり、これと言って有益な情報を手に入れる事ができない。


 仕方なく合流した俺達はお互いに収穫がなかった事を話し合った…。


「やっぱりダメだな…。どいつもコイツも化け猫のばの文字も知っちゃいねえ…」


「手っ取り早いのはこの国の王様に聞く事ですが…」


「無理だろうな。メルド様達と違って、この国の王は俺達の事を知らない。…門の前で追い返されるだけだ」


 ここに来て完全な手詰まりか…どうすりゃいいんだよ…。


「あ、あの…。すみません、アルト様。少し…おトイレへ行ってきます」


「…着いていく」


 モジモジとし出したエルスカーネはトイレに行きたいと言ってきたので、アイムが着いていくと言う。しかし、エルスカーネはこれを断る。


「大丈夫です。私一人で行けますから」


 そこまで迷惑をかけるといけないと、彼女は小走りでトイレまで向かった…。





 トイレで用を済ましたエルスカーネは手を洗いながら、少し微笑み、鏡を映る自分を見た。


「今の私…凄く楽しい…! アルト様達と居ると心が躍る」


 自分を奴隷としてではなく、一人の生命あるモノと見てくれる俺達の事に微笑んでいると彼女はある事を思い出す。




 それは彼女が幼い時…両親と話をしていた時の記憶。


『エルスカーネ…私達亜人は人間達に嫌われの目で見られている。だけど心配するな。いずれ、私達亜人の事を大切に思ってくれる人にお前も出会うだろう』


『その人に会う為にも今は頑張りましょうね!』


『うん!』



 そして、その後に起こる忌まわしい記憶…。


『子供は捕らえ、大人は殺せぇー!』


 亜人狩り達によって、殺されていく同族達…そして、エルスカーネの両親は彼女を守る為に亜人狩り達の前に立ちはだかった。


『エルスカーネ…お前は生きろ』


『きっと…貴女の事を大切に思ってくれる人と出会えるわ』


『嫌! お父さん! お母さん!』


 エルスカーネが両親に手を伸ばす…。しかし、両親は無残にも彼女の目の前で殺害されてしまう…。


『うわぁぁぁぁぁんッ‼︎』


 目の前で両親を失い、泣き叫ぶエルスカーネ。そんな彼女に構わず、亜人狩り達は彼女を捕らえた…。





 両親を失った記憶を思い出し、エルスカーネは悔しそうに唇を噛む。


「お父さん…お母さん…やっと会えたよ。…私の事…大事に思ってくれている人達…」


 ハンカチで手を拭きながら、彼女はトイレから出た…その時だった。


「むっ…⁉︎」


 突然、複数の何者かに襲われ、口を何かで抑えられると、彼女は気を失い、その際手に持っていたハンカチを落としてしまった…。







 エルスカーネの帰りを待つ俺達…。


「遅いなぁ、エルスカーネの奴…」


「マギウスさん、デリカシーがないですよ!」


 遅いと待ちくたびれているマギウスをメリルが注意する。だが、確かに遅すぎる…。


「…見てくる」


「私も一緒に行きます!」


 アイムとルルがエルスカーネの様子を見に行った…。そして、数分待っていると二人が焦った表情で戻ってくる。


「ア、アルトさん!」


「どうした?」


 ただ事ではないと、俺達は顔を見合わせた後、走ってくるアイム達に歩み寄る。


「トイレの前にこれが…」


 そう言ってルルが見せてきたのはハンカチだった。


「このハンカチは…!」


 ルルが買ったエルスカーネのハンカチか…。


「私が買ったエルスカーネさんのハンカチです…」


「まさか…連れ去られたのか⁉︎」


「恐らくそう。ハンカチにこれが挟まっていた」


 アイムは一枚の紙を俺達に見せた。そこには予想どおりの文字が書かれている。


「…ケットシーは我々が連れ去った…。返して欲しければ、鬼の亜人を連れて来い…」


 これはどう考えても奴隷の館の奴等だな…。


「ど、どうしてマギウスさんを…⁉︎」


「…マギウスが唯一生き残った鬼の亜人だからだな。…お前も捕らえ、高値で買い取るつもりだ」


 何処までも亜人を商売道具としか見ていない様だ…。


「俺が行ってくる! アイツ等の狙いは俺だ!」


 一人で行くと言い出したマギウスだが、メリルが反論する。


「一人では危険です! 私達も行きます!」


「待ってください! 今ここで騒ぎを起こせば、私達はこの国にいられなくなりますよ!」


 ルルの言っている事は最もだ…。ここで俺達が騒ぎを起こして、目立ってしまえば一環の終わり…。だが、それでも…。


「そんな事関係ない!」


 それでもエルスカーネを助けに行くと言いかけた俺の言葉を遮る様にアイムが叫んだ。

 本来あまり叫んだりしないアイムが力強く拳を握り、怒りの表情を見せている。


 エルスカーネと出会ってからと言うモノアイムはずっとエルスカーネを気にかけていた…。だからこそ、助け出したいのだろう…。


「エルスカーネは私達の仲間…。仲間を助けるのが私達、可能の星(ポッシブル・スター)…違う?」


 既に覚悟を決めた表情をしているアイムに俺はクスリ、と笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でた。


「そうだな。アイムの言う通りだ。…騒ぎになった時の事はその時に考えたらいい。悪いな、ルル」


「いいえ。私の方こそすみません! 少し弱気になっていました」


「…ううん。ルルお姉ちゃんが言っている事も間違ってないから」


「よっしゃあ、行こうぜ!」


 笑い合うアイムとルル、気合を入れたマギウス…。


「アルトさん!」


「…じゃあ、エルスカーネを助けに行くぞ!」


 俺達はエルスカーネを助け出す為に奴隷の館へ向かった…。







 今向かっている奴隷の館の施設内…そこでは連れて来られたエルスカーネは店主に鞭で打ち付けられていた。

 店主の後ろにも複数の男達がいる。


「い、いやッ…! やめてください!」


 バチン、という音が響き渡り、エルスカーネは声を上げる。


「やめろだと? 暫く見ない間に随分と生意気な口を聞く様になったじゃねえかよ」


 鞭を打ち付ける手を止め、口に加えていた煙草を吐き捨てる店主。反抗的なエルスカーネの態度に苛ついている様だ。


「テメェがいい思いしてると聞いてな…。やっぱり、あんなクソガキに奴隷は早すぎたな。…奴隷を仲間とか、訳の分からねえ事言いやがって」


 俺の事を馬鹿にした男の言葉を聞き、エルスカーネはキッ、と男達を睨みつけた。


「しないで…!」


「あん?」


「アルト様達の事を馬鹿にしないでください…! 貴方達の様な下劣な人達にアルト様達の何がわかると言うのですか!」

 

 今まで奴隷の館の男達に反抗した事のないエルスカーネは初めて反抗の意志を示した。自分の事を大切に思ってくれた俺達を馬鹿にした奴を許さないと彼女は怒りを露わにしたのだ。


「…何だテメェ…? 誰に向かって、そんな態度を取ってんだ⁉︎」


 エルスカーネの態度が気に喰わず、苛つきが頂点に達した店主は再び、彼女を鞭で打ち付ける。それも先程よりも力強く…。


 それでももうエルスカーネは弱音を吐かない。どれだけの痛みを受けても悲鳴一つあげないのだ。


「仕方ねえ…もう一度調教してやるよ。恐怖を刻み込んでな!」


 腕を振り被り、鞭を彼女の顔に直撃させようとしたその時だった…。

 ドゴォン!、という激しい音と共に扉が破壊される。何事かと奴隷の館の男達とエルスカーネは破壊された扉に視線を移す。


 すると、破壊された扉から俺を中心にメリル、アイム、マギウス、ルルが入ってきた。


「アルト様…! 皆様…!」


 俺達の登場にエルスカーネは目元に涙を浮かべ、笑顔になる。


「待たせて悪かったな、エルスカーネ。もう大丈夫だぞ」


 そんな彼女に俺は笑いかけた後、奴隷の館の店主の男を睨みつける。


「これはこれは…お久しぶりです、お客様! どう言ったご用件で?」


「惚けんなクソ野郎。…こんな置き手紙をしておいて白々しいにも程があるだろ」


 奴等からの置き手紙を目の前に叩きつけると店主の男は俺の左隣にいるマギウスを見た。


「おやおや? てっきり来るのはそこの鬼の亜人だけだと思いましたが?」


 男達が俺達を取り囲む様に動き出す。


「そんな約束…守るワケないだろ? それに俺達が引き取った子に随分な事してくれたじゃねえか?」


「いえいえ、彼女の行動に苦情の声が殺到したので、もう一度調教を…」


「…なら、もういいだろ? その子を返せ」


 エルスカーネを返せという俺の言葉に店主は顔を険しくさせる。


「その子は…エルスカーネは俺の大切な仲間だ…。それ以上、傷つけるって言うのなら許さないぞ…!」


「…下らねえ…! 何が仲間だ! 所詮、亜人は奴隷なんだよ! もういい、お前等…やっちまえ!」


 店主の指示に男達は俺達に歩み寄る…。


「アイム、マギウス…」


 俺もアイムとマギウスの名を呼ぶと、二人は俺の前に出て…歩み寄ってきた男達全員を殴り飛ばした…。


 男達は店主の男の後方まで飛ばされ、店主の男は目を見開いて驚いた。自分を除く部下全員が吹き飛ばされると思っていなかったからだ。


 そして、俺はブレッターの銃口を店主の男に向ける。


「もう一度言う…エルスカーネを返せ」


「っ…! う、動くな!」


 それでも尚を抵抗しようと奴は拳銃を取り出し、エルスカーネの頭に銃口を突きつけた。


「動くとコイツの頭をぶち抜くぞ!」


 人質ってワケか…。

 仕方なく、俺はブレッターを下ろす。


「そ、その銃をこっちに投げろ! …早くしろ!」


「…」


 店主の言葉に従い、俺はブレッターを奴に向かって投げる。ブレッターは宙を舞い、店主に向かって飛んでいく。それを確認した奴は警戒を一瞬解いてしまう。


 それを見逃さなかった俺は勢い良く、動き出し、右腕で奴の首元を抑え、壁に叩きつけた。突然の押し飛ばしに、店主はエルスカーネを離してしまい、壁に激突した際、ドン!、という音が響く。


 さらにこちらに向かって飛んできたブレッターを掴み、店主のこめかみに銃口を突きつけた。


「テ、テメェ…⁉︎ ヒッ…⁉︎」


「油断したのが失敗だったな…」


「ひ、人を殺すってのかよ⁉︎」


「警告したはずだぜ? 悪いが覚悟は出来てる。…これ以上俺の仲間を危険に晒すってんなら…相当な対処をさせてもらうぞ…!」


 更に銃口を突きつけられた店主はヒッ⁉︎、という情けない声を上げる。


「わ、わかった! もうお前達には関わらねえ! だから、許してくれ!」


 反省していると判断した俺はブレッターをしまい、店主を離す。すると、奴は悲鳴を上げながら、部下達と共に走り去った…。


 それを見送った俺は軽く息を吐き、メリルが《ヒール》をかけ、打身が治癒されたエルスカーネに歩み寄る。


「怖かっただろ? 遅れて悪かったな、エルスカーネ」


「アルト様…!」


 目元に涙を浮かべ、今まで溜め込んでいたモノを全て吐き出す様に彼女は俺に勢い良く抱きついた…。


 俺はそれを受け入れ、俺も軽く抱き締めた…。


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