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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
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食事


 エルスカーネとの本当の意味での挨拶を終えた俺達は今後の事について話をする事にした。


「アルトさん。情報収集の方はどうでしたか?」


「…これと言っての情報は得られなかった。と言うよりもこの街の奴等…化け猫についての情報を何も知らなかったぞ」


 自分達の街の周りで起こった事さえ知らないとは…皮肉な話だな。


「…アルト様達は…この街の人達なのですか?」


 エルスカーネの問いに俺は彼女の耳元に口を持っていき、小声で答えた。


「俺達はこの街…いや、この国の人間じゃない。山脈を超えた先のガイール領で便利屋ギルドをやってる冒険者だ」


「えっ…⁉︎」


 トンデモないカミングアウトにエルスカーネは声を上げて驚く。

 …まあ、驚くなと言われても無理があるか。


「で、では、アルト様達は外の国の方々…良く、この国へと入って来られましたね」


「…まあ、それは優秀な情報屋の手引きで何とかな」


「…す、凄いのですね…」


 話が逸れたが、再び情報収集についての話をしようとするが、ギュルルル、と言う音にまたもや掻き消された。


「…メリル」


「なっ…⁉︎ ち、違いますよ! というか、お腹の音が鳴ったら私の所為にするのやめてください!」


「わ、私です…」


 声と腹の音の主はエルスカーネだった。彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら、俯いていた。


「も、申し訳ありません。お腹を鳴らしてしまって…」


…またかよ。


「エルスカーネ、もう簡単に謝るの禁止だ」


「…え?」


「お腹が鳴るのは当たり前」


「腹が減ってるってのは生きてる証拠だからな!」


「幾らでも鳴らしていいのですよ?」


 俺に続き、アイム、マギウス、ルルが声をかけ、エルスカーネはポカン、となった。


 まさか、この様な事を言われると思っていなかったのか、彼女は目を見開き、何度も俺達を見る。そんな彼女の頭を撫で、俺は彼女の手を引き、メリル達と食事屋へ向かった。


 ちょうど昼時だった為か、人は沢山いたが、何とか待たずに席を確保でき、俺達はメニューを開く。


「エルスカーネ、何か食べたい物はあるか?」


「な、何でもいいです」


「何でもいいではわからない」


 アイムからメニューを受け取ったエルスカーネはメニューに目を通して、少しした後閉じた。


「この野菜炒め定食で…」


 もうその手は読めてるっての。敢えて安いヤツを選んだな。


「野菜炒め定食な。…みんなは?」


「アルトさんと同じので良いですよ」


「私も」


「俺もだ」


「私もです!」


 だったら…俺はこのサイコロステーキ定食にするか。


「…すみません!」


 俺が店員を呼ぶと、女性店員が来る。勿論、マギウスとエルスカーネを見て、眉を潜めるが、すぐに注文を聞いてくる。


「サイコロステーキ定食を六つお願いします」


「………え?」


「かしこまりました!」


 頼んでいた物と違うとエルスカーネは目を見開き、俺を見て来たが、店員は注文を聞き、厨房へと去っていく。


「あ、あの…アルト様…」


「どうした? もしかしてステーキはダメだったか?」


「い、いえ…食べられますけど…。私が頼んだのは野菜炒め定食で…」


「気を遣って安いのを頼んだの見え見えだ。遠慮するな。金ならあるからよ」


「は、はい…」


 数分後、六人分のサイコロステーキ定食が運ばれて来た。ジュー、と音を立てて、焼かれているステーキのいい匂いが伝ってくる。


 目の前に出されたサイコロステーキとライスに目を輝かせたエルスカーネは俺達を何度か見た後、恐る恐るとサイコロステーキを口に運ぶ。


「お、美味しい…」


 余程美味いのか、勢い良くライスやステーキを食していく彼女を見て、暫くしっかりとした食事を与えられていないのだと、奴隷の館の奴等に対して、怒りを覚える。


 だが、それをエルスカーネに悟られる事のない様に俺達も料理に手をかける。サイコロステーキを一口食べると本当に美味しい。

 噛めば噛む程、熱々の肉汁が溢れ出し、肉の旨味が引き立たれていく。


 ステーキの味を堪能している俺達…だが、目の前で涙をポロポロ、と流しているエルスカーネに気がつく。


「美味しい…本当に美味しい…!」


 大粒の涙を流し、料理の一口一口をしっかりと味わっていく、エルスカーネ。腹が減っている人間程、料理の本当の美味しさというモノがわかるモノだ。


 そんな彼女をアイムが微笑みながら撫でる。


「うん。本当に美味しいね。これからもいっぱい美味しいモノを食べる事ができる」


「はい…!」


 その後、結局何もする事なく、夜を迎えた…。




 風呂に入り、宿屋を取った俺達は部屋で俺達の事をエルスカーネに話す。


「で、では、アルト様とメリル様はこの世界の方ではないのですか⁉︎」


「おう。そうだぜ」


「そもそも私は人でもありませんしね」


フフッ、と笑うメリル。


「まあ、女神っぽくないけどな」


「ひ、酷いですっ⁉︎」


 笑顔とは一変、目元に涙を浮かべて、俺に叫ぶメリルにエルスカーネは苦笑しながら、今度はアイムに視線を移す。


「転移者に女神様…。お、驚く事ばかりです…。アイム様は、その…魔導人形(サァリィ・ドール)…というモノなのですよね?」


「うん。ちなみに腕は取り外し可能」


 右腕を普通に取り外すとエルスカーネは小さく目を輝かせる。


「…アイム。いつも言っているが、そう易々と腕を取るな。…見てるこっちが恐怖なんだよ」


「それなら首を外す?」


「それは絶対にやめろ!」


 てか、本当に首が外れるのか? それはそれで気になるが、恐怖でしかない。


「それに鬼族の方がまだいらっしゃったなんて…」


「…もう俺しかいないけどな」


「エルスカーネさんのご両親は何処かにいらっしゃるのですか?」


 ルルの質問に先程まで明るい表情をしていたエルスカーネは暗い表情で俯き始めた。


「…わ、私の家族は…みんな、奴隷商の人達に…殺されました」


 トンデモない彼女の言葉に俺達は目を見開いた。彼女の両親を殺したのが人間と知り、怒りも覚えて来た。


「ご、ごめんなさい…! 私、不謹慎な事を…!」


「い、いえ…! 良いのですよ! 確かに辛い事ばかりでしたが、お陰でアルト様達と出会える事が出来ましたし!」


 ようやく俺達の事を信用してくれたみたいだな。


「…所でアルト様達はどうしてこの国に?」


「俺達の友人の騎士が、この国に現れた化け猫に襲われてな。その化け猫について調べたくて来たんだ」


「化け猫…」


 化け猫という言葉を聞き、エルスカーネは何かを考える様な仕草を見せる。それに何かあると考えた俺は尋ねてみた。


「何か知っているのか? 知っているなら、教えてくれ!」


「…い、いえ…何も…」


 まあ、長くあんな牢獄みたいな所に囚われていたら、わからないのも無理はないか…。


「…それで、明日からはどうするんだ、アルト?」


「…そうだな」


 少し考える仕草を取った俺はある提案を持ちかけた。


「情報収集しつつ、この街で少し、遊ぶとするか!」


 俺の提案にメリル達は微笑み、エルスカーネは小首を傾げた。

 実際、遊ぶとは言ったが、少しでもエルスカーネを楽しませてあげようと思っていての提案だ。


 彼女をこれ以上苦しませない為にせめてもの俺達が出来る事だ。


「…じゃあ、明日から大忙しだぜ!」


 遊びという用事のな。

 明日の為に俺達は早くに就寝した…。


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