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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
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馬車での一時


 俺達やウィーズ達の前に現れた化け猫の正体を探る為に俺達、可能の星(ポッシブル・スター)は化け猫が最初に出現したコルドブームへ向かっていた…。


 暫く、馬車に揺られた後、馬車はついにガイールとコルドブームの中心にある山脈にへと差し掛かった。


 ちなみに御者はルルだ。何でも馬車を操った経験がある様で移動は彼女に任せる事にした。


「皆さん、そろそろ山道に差し掛かるので、少し揺れますよ」


 彼女の言葉通り、険しい山道な為馬車は揺れ出し始める。


 此処まで特に何も起きず、それぞれ暇を持て余していた。ちなみに俺はエンゼッターやブレッターの手入れ、メリルは技能(スキル)書を読んでいる。

 マギウスも何かの小さな肉の様なモノを頬張っていた。


「…マギウスお兄ちゃん、それ何?」


 マギウスの食べているモノが気になったのか、アイムは彼に尋ねる。


「ん…? これか? 《レッドバイソン》の干し肉だ。結構旨味があって美味いんだぜ。…アイムちゃんも食うか?」


 もう一つ、《レッドバイソン》の干し肉をメリルに手渡すと彼女は受け取り、小さな口で干し肉を頬張る。

 そして、数秒後、徐々に顔を真っ赤にさせていき…。


「ッ〜〜〜⁉︎」


 相当な辛さだったのか、声にならない悲鳴を上げる。


「ア、アイムさん…⁉︎」


「きゃ、きゃふぁい…! らんうぇ、しょんにゃきゃふぁいにょ、ちゃへぇにぇにぅにょ⁉︎」


 か、辛い…! 何で、そんなに辛いの食べれるの⁉︎ か…。

 あまりの辛さに舌が回らないんだろうな。涙目になってるし。


「ア、アイムさん! お水を飲んでください!」


水の入った水筒をアイムに手渡したメリル。水筒を受け取ったアイムは勢い良く、水を飲み干す。

 水筒から口を離したアイムの唇は赤く腫れ、未だヒリヒリするのか、回らない口でマギウスを睨み付ける。


「…きゃふぁいにゃら、おひぃへてお!」


 辛いなら、教えてよ! か。…って、俺に通訳をさせるなよ。


「それよりも魔導人形(サァリィ・ドール)でも味覚ってあるんだな!」


「にましゃりゃ⁉︎」


 今更⁉︎ か…。…って、だから俺に通訳させるなっての…。

 というか、《レッドバイソン》の干し肉の辛さって、確かタバスコの約一万倍だったな。…普通の人間の舌で感じ取れるのか…? 嫌、アイツは鬼か…。


 そんな話をしていると、馬車が突然止まった。


「ア、アルトさん…」


「どうしたんだ、ルル…?」


 荷台から顔を覗かせると目の前には複数の男が馬車の進行を阻んでいた。


「おい、お前等! 痛い目を見たくなければ、金目の物を置いていけ! …何なら、女も置いていけばもっと許してやるぜ?」


 …わっかりやすい山賊だな。


「どうしますか、アルトさん?」


「口で言っても聞いちゃくれないだろ」


「だったら、俺が…」


 力で黙らせようとマギウスが動き出そうとしたが、それをアイムが制止した。


「私がやる」


 …おっ? もう舌が戻っているな。

 アイムは荷台から降り、盗賊達の前に立ち、奴等を睨み付ける。


「退いてくれたら、痛い思いをしないで済む」


「あん? おいおい、嬢ちゃん。…ちょっと可愛いからって、おじさん達の邪魔しないでくれ。何なら、おじさん達が大人の遊びって、モノを教えようか?」


 君の悪い顔をアイムに近づける盗賊のリーダーらしき男。それに嫌気が差したのか、アイムは奴の顔面を勢い良く殴りつけた…。


 宙を舞い、地面に倒れ込んだ盗賊のリーダーを見て、取り巻き達が声を上げる。そして、顔を上げたリーダーは鼻血を流しながら、アイムを睨む。


「こ、このガキ…! 調子に乗りやがって!」


「…ガキだから教えて上げる…。子供を舐めるなって…。それから、私は今、とても機嫌が悪い」


 完全に後半は私情が混ざってるな…。

 だが、これ以上アイムを刺激すると危ない危険がする…。

 案の定、アイムの不機嫌な表情に盗賊達は怯え出す。


「き、機嫌が悪いって…」


「辛いの天敵…ナンパ男はもっと天敵!」


 仰向けで倒れながら、アイムを睨んでいた盗賊のリーダーの顔面を蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた盗賊のリーダーは再び地面に叩きつけられ、再びアイムを見る。


「…次はもっと強めに蹴る」


「ヒッ…ヒィィィィッ⁉︎」


 盗賊のリーダーはアイムに怯え、取り巻きと共に逃げ出した…。


「気晴らしにもならない」


 逃げ出した盗賊達を鼻で笑いながら、アイムは荷台にへと戻って来た。


「お疲れ様、アイム」


「…疲れていない」


 戻って来た彼女の頭を優しく撫でると彼女は照れを隠す様に顔を逸らす。

 そして、馬車は再び、コルドブームへ向かい動き出した…。


「そう言えばよ。前のレンドベルの時、アイムは小さな妖精になったよな?」


「妖精…?」


 そう言えば、メリルの妖精になる能力をアイム達は知らなかったな。


「はい。この世界に来た時、特典で手に入れた力です」


 力の説明をしながら、メリルは妖精の姿になった。


「身体も小さくなるんで、狭い場所でも通り抜けられますよ!」


 妖精の姿になったメリルを見て、マギウスは声を上げ、アイムはキラキラ、と目を輝かせた。


「か、可愛い…!」


「ア、アイムさん…?」


 目を輝かせつつ、アイムは妖精となったメリルにジリジリ、と近づき、手に取った。そして、頬擦りを始める。


「小さくて可愛い…!」


「ちょっ⁉︎ アイムさん⁉︎ くすぐったいです! やめてください!」


「やめない。可愛すぎる」


「アイムさんー!」


 まるで人形を抱き寄せる少女だな。メリルも必死に逃げようとするから、逆に絵になってやがる。


 


 それから、暫くして、山を渡り終わり、ついにコルドブーム領まで辿り着いた。後は城下町に向かうだけだな。


 そう言えば、と俺は馬車を動かしていたルルの隣に座り込んだ。


「ルル、疲れてないか?」


「大丈夫ですよ、アルトさん。昔、夜から朝にかけて、馬車を動かした事があるので」


「そっか。凄いな、ルルは。…そうだ!」


 何かを思いついた様に俺は小包を取り出し、中からクッキーを出した。


「それは…?」


「携帯食として、作ってあったクッキーだ。ルル、食べるか?」


「…いただきたいのですが、今手が離せないので…」


 何だよ、そんな事か。


「それなら食わせてやるよ」


「え⁉︎」


 俺は手に取ったクッキーをルルの口元へ持っていく。俺のその行動にルルは頬を赤く染め、戸惑っている。


 何故なら、どう見ても恋人同士がやる、あ〜ん…にしか見えないからだ。


「ア、アルトさん…これは…⁉︎」


「ん? 食べないのか?」


「い、いただきます…」


 頬を赤らめながら、彼女は俺の差し出したクッキーを頬張った。それも一口で…。


「お、美味しいです…」


「それは良かった。沢山あるからもっと食べてくれ」


「は、はい…」


 何とも言えない空気が俺達を包み、背後ではアイムから解放されたメリルが頬を膨らませて、睨み、アイムとマギウスがそれに苦笑している。



 そして、ついに城下町の門が見えて来た。


「…ついに来たな」


 マギウスの表情が険しい…。コルドブームは亜人を奴隷としている国だ。

 同じ亜人であるマギウスとしては怒りの覚える国なのだろう。


 俺がマギウスに声をかけようとする前にアイムが彼の手を握った。


「アイムちゃん…」


「マギウスお兄ちゃんは家族…。私が守る」


「…ありがとな」


 奴隷という言葉にはアイムもよく思っていない…。当然、俺達もだが…。


 城下町の門の前に着いた俺達は門番の二人に止められる。


「すみません。通行許可証の提示をお願いします」


 言われた通りに俺達は通行許可証を門番二人に見せる。手に取って確認し終えた門番二人は通行許可証を俺達に返す。


「確認しました。どうぞ、お入りください」


 …凄えな、ガルナ…。

 本当に入る事が出来たぜ…。


 そして、俺達はついにコルドブームの城下町へ足を踏み入れた…。


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