化け猫との遭遇
ーーレンドベルの一件から一ヶ月後…。
俺達は今日もクエストを行なっていた。内容は夜に現れる骸骨型のモンスター、《ボーンアンデット》の討伐だ。
討伐数は二十体…。
俺達は着々と《ボーンアンデット》を倒していく。だが、メリルだけは目の色が変わっていた。
「《ホーリーブレード》! 《ウインドカッター》!」
容赦の無い技能の連発の前に次々と《ボーンアンデット》達は消滅していく。
「メ、メリルの奴…どうかしたのか?」
「女神だから、アンデットとは天敵?」
「…そうかもな」
結局、討伐数は明らかにメリルが多い状態でクエストを完了する。
軽く息を吐きながら、エンゼッターを鞘に収め、メリルを見ると彼女は息を切らしていた。
まあ…あれだけ技能を連発していればそうなるよな…。
「おーい、メリルー? 大丈夫か?」
「フ、フフフ…! 女神の天敵は全て消し去りました…!」
怖えんだよ。…今のお前を見て、誰も女神だと思わねえぞ。
「兎に角、クエスト完了だ。さっさと完了報告を済ませて、帰ろうぜ」
「あの骸骨を倒した事でレベルもかなり上がったからな」
「…早く帰らないとルルお姉ちゃんが心配する」
ちなみにルルはギルドホームで留守番をしている。彼女は戦えない分、こう言う時に夕食の準備など、家事全般をやってくれるから助かっている。
「それじゃあ、ルルが拗ねる前に帰るか」
そう言い、俺達は歩き出す。…しかし、奇妙な殺気を感じ、俺は殺気の方向にブレッターの銃口を向けた。
アイムの索敵にも引っ掛かったのか、彼女も警戒している。
「…? どうしたんだ?」
「何かいるのですか?」
殺気に気付いていないのか、メリルとマギウスは首を傾げる。
「お前等…気を抜くな…! この殺気…只者じゃねえ…!」
俺達が警戒している方向には茂みしかないが、その茂みがカサカサ、と音を立てる。そして、そこから何かが飛び出てくる。
その飛び出てきた何かは地面に着地すると、俺達を睨み付けてくる。
その何かというのは…。
「化け猫…⁉︎」
二メートル程の身長を持つ、化け猫だった。
だが、コイツ…モンスターの類にしては、何か妙だ…!
その化け猫とは言うと、俺達を睨み付けながら、グルルル…、と唸り声を上げる。
「マスター…。あのモンスター…今噂になっている化け猫じゃないの?」
「…冒険者や通行人を襲っているってアレか…!」
言われてみれば、噂の見た目と合致するな…。
「まさか、この目で見る事になるとは…!」
「だが、アイツの討伐クエストも出ていたよな?」
「あぁ。…どちらにしろ、見逃しておく事は出来ない!」
俺達は戦闘態勢を取ると、化け猫は雄叫びを上げた。
武器であろう爪をギラつかせ、奴も戦闘態勢を取る。
「先手は貰うぜ!」
赤雷を右腕に纏ったマギウスが化け猫に殴りかかる。だが、化け猫は最も簡単に彼の右ストレートを避ける。
避けられたと気づき、左腕にも赤雷を纏い、両腕で何度も殴りかかるが、一撃も化け猫には当たらない。
そればかりか、蹴りによるカウンター攻撃を受けた彼は後方へ吹き飛ぶ。
次に左腕に剣を装備したアイムが斬りかかる。隙の無い振りで剣が直撃するに見えた…。しかし、爪によって剣は受け止められる。
だが、彼女は負けじと剣を振り続ける。ガキン、ガキン、と音が鳴り響くと同時に俺もエンゼッターで斬りかかった。
アイムの攻撃に気を取られていたと思っていたが、何と反対側の腕でエンゼッターをも防いだ。
反応速度が良すぎる…流石は猫と言ったところか。
それでもこれで両腕が塞がれている…。攻撃は防げない!
「マギウス!」
「オーライ! 喰らいやがれ!」
化け猫の背後から右腕に赤雷を纏わせたマギウスが殴りかかって来る。完全な直撃コース…彼の右腕は化け猫目掛けて、突き進んだ…。
まずは一撃…!
そう思い込んでいた俺だったが…。突然、目の前にいた化け猫が消えた。
それにより、エンゼッターと剣をぶつけていた俺とアイムは前のめりに倒れそうになり、マギウスも攻撃を急遽中断する。
「奴は…⁉︎」
「上…!」
アイムが叫んだ時には既に遅く、化け猫は俺達の上空を取り、奇襲を仕掛けられた。その奇襲に対応出来ず、俺達はそれぞれ攻撃を受けて、吹き飛ばされる。
俺は地面に倒れ、アイムとマギウスは同じ方向の木に叩きつけられる。
「皆さん…!」
吹き飛ばされた俺達を心配しつつ、メリルは《スプラッシュ》を発動し、攻撃するが、爪により水流は掻き消された。
《スプラッシュ》を掻き消した化け猫は斬撃を繰り出す。
メリルも《バリア》で防ごうとするが、あまりの威力に《バリア》が音を立てて割れ、斬撃をモロに受けてしまった。
「メリル!」
俺の叫びと共に彼女は吹き飛び、近くの木に激突する。だが、そんな彼女に構わず、獲物を見つけたとばかり、化け猫はメリルに急接近する。
このままではマズイと、アイムは《レールガン》、マギウスは《エレキガン》を放ち、化け猫の進行を阻もうとするが、全て両腕の爪で弾き消される。
そして、標的をメリルから、彼女達に変え、一気に距離を詰め、爪で彼等を斬り裂いた。
「ウッ…⁉︎」
「グアァッ…⁉︎」
斬り飛ばされた二人は地面に叩きつけられ、倒れ込んでしまう。先程のダメージが大きかったのか、何とか立ち上がろうとするも立ち上がれずにいる。
そんな彼女達に好機と見た化け猫はトドメの一撃を誘うとジリジリ、と彼女達に近づく。
「させません!」
化け猫とアイム達の前にメリルが立ち塞がる。だが、化け猫は驚きもせず、両手から二発の斬撃を繰り出す。
メリルはまたも《バリア》で攻撃を防ごうとするが、二発目で音を立てて割れ、斬撃を受け、悲鳴を上げながら、その場に倒れ込んだ。
「メリルお姉ちゃん…!」
「おい、メリル…!」
次々と地に伏せられていく仲間達を見て、俺は拳を強く握り、ブレッターを掴む。
そして、メリル達に接近する化け猫に向けて、連射する。銃弾を避け、標的を俺に変えた化け猫は両腕の爪で俺に斬りかかってくる。
エンゼッターと激しいぶつかり合いを行い、火花が散る。お互い一歩の退かない攻防にメリル達は見ている事しか出来なかった。
だが、この化け猫…強過ぎる…!これは《フォトン・ウイング》を使用せざるおえないぞ…!
激しい攻防を続けていた俺達…。だが、化け猫の一撃が決定打となったのか、エンゼッターが後方へ弾き飛ばされた。武器を失った俺に化け猫は爪をギラつかせた腕を振り下ろした…。
…だが、腕は俺の目と鼻の先で止まる。
化け猫が頭を押さえて、苦しみ始めたからだ。突然の事に俺達も戸惑いつつも警戒を続ける。
すると、苦しみつつも化け猫はキッ、と顔を上げ、俺を睨みつけるとそのまま遠くへ跳躍し、飛び去ってしまった…。
「な…何だったんだ…?」
トドメを刺さず飛び去った化け猫の方を見続けた俺はすぐに視線をメリル達に変え、彼女達の元へ駆け寄り、《ヒール》をかけ、ダメージを回復させた。
「アイツ…どうして、トドメを刺さなかったんだ…?」
「それに苦しんでいた…」
確かに突然苦しみ出したのは違和感がある…。あの状態だと洗脳されているという線も考えられるが…。
兎に角、考えていても始まらないな…。
「…兎に角、もう戻ろう。…ルルも心配する」
あの化け猫の事も気がかりだが、俺達はイズルリの街へ戻る事にした…。
だが、あの化け猫…本当に何者だったんだ…?




