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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第六章 レンドベル闘技大会編
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新たな一歩


ー翌日となったのか、俺は窓から突き刺す陽の光で目を覚ました。

…そういや、昨日いつの間にか眠っていたんだな…。


あれだけ泣きじゃくったのは歌音を失った時以来だったな…。

そう言えば、メリルは…?

部屋に戻ったのか…?


そう思い、身体を起こそうとしたが、何かに抱かれていて、起きられなかった。


何事かと、掛け布団を取ってみるとそこには…。


「スー…スー…むにゃむにゃ…」


俺を抱き枕にして、メリルが心地良さそうな表情で眠っていた。

…え? どういう事だ?


思い出そう…確か、昨日、俺はメリルの優しさに溜め込んでいたモノを全て吐き出し、彼女に泣きつき、そのまま眠ってしまった…。

それで、何でメリルまで此処で寝ているんだ…?


と、兎に角起こすか…。


「おい、メリル! 朝だぞ」


「んっ? …うぅーん…」


揺すっても起きないので、額を軽く叩くとメリルの目がゆっくりと開かれた。


二度三度瞬きをして、まだぼーっとしている状態で身体を起こし、辺りを見渡す。


そして、ふぁ〜、と欠伸をした後、再び瞬きをした後、俺を見る。


「おはよう、メリル」


「おはようございますぅ…アルト…さ、んっ…⁉︎」


漸く頭が覚醒し、メリルは今の状況を理解し、少しずつ顔を真っ赤にしていき、口をパクパクさせる。


「あ、あ、あ…!」


「あ…?」


「す、すみませんでしたー!」


逃げ去る様に彼女は俺の部屋から勢いよく出て行った…。


「…朝から騒がしい奴だな」


フッ、と笑いながら俺は立ち上がり、服を着替え、部屋から出た。

今の状況をマギウス達に見られなくて良かった…。



宿屋の受付に着くと既にアイムとマギウス、ルルが俺達を待っていた。

その場にはメリルの姿はない。


「おう、おはよう。アルト」


「おはよう。待たせたか?」


「私達も今来た所…。それにしても…」


アイムが小首を傾げながら、俺の顔を見上げてくる。


「…何だ?」


「…何でもない」


同じく首を傾げ、彼女に尋ねるも顔を逸らされる。

だが、彼女の顔には明らかな微笑みがあった事に俺は気づく事はなかった。


するとそこへ駆け足でメリルが駆け寄って来た。


「お、遅れて申し訳ありません!」


息を切らし、肩で息をする彼女をルルが落ち着かせる。

だが、アイムは気になった事があるのか、メリルに尋ねた。


「メリルお姉ちゃん…昨夜はどこに行っていたの? 部屋にいなかったけど…」


「へえっ⁉︎」


尋ねられたくない事を尋ねられ、情けない声を上げたメリルはアタフタとしながらこちらを見てくる。

だが俺も逃げる様に彼女から視線を逸らした。


俺達の反応がわからず、アイムとマギウスは顔を見合って首を傾げるが、ルルだけは何かわかったのか頬を膨らませる。


準備を終えた俺達は宿屋から出ると既にイズルリの街行きの馬車が停泊していた。

そしてそこにはウィーズやルーク隊長の騎士団とグレン達紅蓮烈火のメンバー、そしてカイリがいた。


「アルト…! もう大丈夫なの?」


「あぁ。心配をかけて悪かったな」


ニカッ、と笑った俺は心配の表情を浮かべていたカイリの頭を撫でる。


「アルト…お前…」


今の俺を見て、グレンが何かに気づき、話しかけてくる。


「どうした、グレン?」


「…いいや、何でもねえ」


だが、それ以上の追求はなかった。

すると、今度はルーク隊長はガハハハッ!、と笑いながら俺の背中を何度も叩く。


「昨夜はゆっくりと休めたか?」


「はい。グッスリと」


メリルのおかげでな…。

咲夜のメリルとの話を思い出し、目を閉じていると突然、剣が空を切る音が聞こえ、エンゼッターを鞘から引き抜き、防いだ。


ガキン!、と金属音が鳴り響き、俺は剣を斬りかかってきた者を睨む。


「…何のつもりだ、ウィーズ…?」


斬りかかってきた者…ウィーズを睨みつつ俺は尋ねると彼は剣を下ろし、フフフッ、と笑った。


「いきなりですまない。…どうやら腕は鈍っていない様だ。…アルト、私との約束を覚えているか?」


約束…?

ウィーズとの約束と言えば…。


そう言えば、いつか剣を交えるって、言っていたな…。

まさか…。


「アルト…。私との勝負、受けてもらう。異論は認めない」


先程の微笑みの表情から一変し、彼は俺は睨みつけた。

…そういう事かよ、ウィーズ…。


「いいぜ…ウィーズ。掛かって来い!」


「ならば、遠慮なしに行く!」


…悪いが、時間をかけるつもりはない…。

一瞬で終わらせる…!


斬りかかってくるウィーズの動きを捉え、俺は剣を振った…。

ウィーズも俺に向かって剣を振り、俺達はすれ違う。


だが、ウィーズの剣の剣身が音を立てて、真っ二つになり、剣先部分が地面に突き刺さった。


「…!」


すぐさま振り向いたウィーズの首元にエンゼッターの剣先を突きつけた。


「…俺の勝ちだ」


「…一瞬、か…。負けたよ」


敗北の言葉を聞いて、俺はエンゼッターを下ろし、鞘に戻した。


「剣を変えて挑んできてもいいんだぜ?」


「嫌、騎士の(相棒)は一つだけでいい。それを折られた時点で私の敗北は決まっている」


律儀な奴だな…。


「それにしても、迷いを持つ君になら勝てると踏んだんだが…克服していた様だね」


「…大切な相棒が俺を支えてくれたからな」


横目でメリルを見ると彼女は嬉しがる様にフフフッ、と笑った…。


「私は良き友人を持ったな。最高の友人を」


「最高って…言い過ぎだぜ、ウィーズ」


「いいや。ヴェイグ殿が君を友人だと言うのもわかる。…だが、次は騎士として負けるつもりはない」


「受けて立つぜ!」


ウィーズと握手をして、俺とウィーズは笑い合った後、俺達はイズルリの街行きの馬車に乗り、みんなに別れの挨拶を済まし、馬車は動き出した…。


騎士団やカイリ、グレン達も用事を済ませたら、それぞれ戻る様だ。





ー馬車に揺られる事、数時間後、俺達はイズルリの街に着き、後は自分達の足でギルドホームへと戻った。


「我が家へ帰ってきたぞー!」


家の中に入ったマギウスの叫びにメリルとルルは苦笑し、俺もツッコミを入れる。


「オヤジくさいんだよ、お前は」


「確かに…ちょっと臭う」


「物理的な臭いかよ⁉︎」


アイムの一言に傷付いたのか、マギウスは自分の身体を臭う。

アイム…稀に相手を揶揄う技術を覚えやがった…。


戦いが終わり、戻って来たんだなと思った俺はみんなに言わなければならない事がある事を思い出し、口を開いた。


「みんな聞いてくれ!」


俺に視線が集まるも気にせず、続ける。


「俺達は〈モンスタードラッグ〉を使っている奴等に目を付けられた。…これからも奴等と関わっていく事になると思う…。そしてそれは、モンスター化した人間を殺す可能性も…」


スノウの事を思い出し、俺は悔しさで拳を握る。


「お前達に…人殺しをさせてしまうかも知れない…。だけど、お願いだ…。これからも俺と一緒に戦ってくれ! 〈モンスタードラッグ〉を使っている奴等は必ず止める! だから、俺に協力してくれ!」


頭を下げ、俺はアイム達に頼み込んだ。


みんなに離れてもらう事も考えていた…。

でも、俺一人では何をする事も出来ない…。だからこそ、みんなの力が必要なんだ…!


例え、この願いを断られたとしても、俺は…!


「私はマスターのおかげでここにいる。…だから、マスターの願いは私が叶える」


「アイム…」


「まっ、お前には借りがあるからな。それに、お前を見限っちまったら、エル達にも怒られるしな。これからも…一緒に戦おうぜ!」


「マギウス…」


「私は戦う事は出来ません…。ですが、アルトさんを手助けする事は出来ます。だから、こちらこそ、これからも共に居させてください!」


「ルル…」


アイム、マギウス、ルルの順に俺に笑いかけると、俺は嬉しくなって、目から涙が流れている。


「ありがとう…みんな…!」


嬉し泣きをする俺を見て、メリルを含めたみんなが微笑んだ。


「何だよ、アルト? 泣いているのか? 案外泣き虫…あだっ⁉︎」


茶化す様に言ったマギウスの足をアイムが勢いよく踏みつけた。


「…加齢臭は黙っていて」


「俺はオッサンじゃねえよ!」


マギウスのツッコミが家中に響き渡る。

それにより、俺達は笑いに包まれた…。




ーーこれからも辛い事や苦しい事もあるだろう…。

だが、俺は仲間達と共にこれを乗り越える…。


それが、今の俺に出来る罪に対しての向き合いだからな…。


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