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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第六章 レンドベル闘技大会編
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無の空間


《ヴァンパイア》の攻撃を受け、落下していく俺とキリヤを見たメリル達は驚きの声を上げる。


「アルト!」


「彼が最も簡単に…!」


落下していく俺にグレンとウィーズは悔しそうな顔をする。


「…ダメだったか…!こうなれば、我々騎士団が…「ダメでは無いです!」…⁉︎」


俺の変わりに騎士団が《ヴァンパイア》と戦うと言おうとしたルーク隊長の言葉をメリルが遮る。

彼女がルーク隊長に向けるその瞳はまだ諦めてはいない…俺が必ず勝つという自信に満ちた顔だった。


「アルトさんは必ず、勝ちます!…アルトさんは…不可能を打開し、可能に変えるお方です!」


目元に涙を浮かべ、訴える彼女の肩をマギウスが掴み、メリルが背後を振り返るとそこには笑みを浮かべたマギウスとアイムがいた。


「そうだな。アイツのしぶとさは異常だからな」


「マスターに簡単な敗北という言葉は似合わない」


「アイムさん…マギウスさん…!」


「…俺達がアルトを信じねえで…誰が信じるんだよ!」


「マスターは必ず勝つ」


チーム…ギルドの仲間による絶対的信頼…それをグレン達に向けるマギウス達。

すると、それを聞いたグレンやウィーズ、ルーク隊長もフッ、と笑う。


「羨ましい程の信頼感だな」


「…確かに我々が彼を信じなければならなかったな」


「すまなかったな、メリル君。…私も彼を信じよう」


「皆さん…!」


俺を信じてくれる…それを聞いたメリルは嬉しさでいっぱいとなった。

それと同時に俺への勝利の祈りも心に持つ。


「(アルトさん…必ず、勝って下さい…!)」


届くかどうかわからない祈りを…彼女は心の中で呟いた…。







《ヴァンパイア》の攻撃の前にダメージを受けた俺とキリヤは地面に落下してしまう…。

身体に突き刺さった光の刃は消えているが…。


「グッ…! おい、キリヤ…生きてるか?」


「当たり前だ。…そう簡単に死んでたまるか」


「それもそうだな…」


ヘヘッ、と笑う俺…だが、すぐに表情を真剣なモノに変える。


「さて…あの不死身の相手をどう倒す?」


「…方法がないワケじゃねえ…。だが、この方法は諸刃の剣…下手すりゃ、こっちの身も危ねえ」


「…だが、その方法でしか、アイツを倒す事が出来ない…そうだろ?」


俺の一切の迷いのない表情にキリヤは呆気に取られだが、すぐに笑う。


「正気かよ、テメェ?」


「逆にそれ以外の方法があるのなら、俺はそっちの方を優先するぜ。…でも、誰がやらないとダメなんだ」


「…一つ分かった事があるぜ。…テメェは相当バカだってのがな」


「ほっとけ」


皮肉を口にしながらも、俺は《ヴァンパイア》を倒す方法をキリヤに尋ねる。

彼も覚悟を決めたのか、洗いざらい方法を話した。


それを聞いて、多少は驚くもすぐにやろうと頷く。


「…やろうぜ、キリヤ!」


「…ハァ。テメェに力を貸した事を後悔するぜ」


呆れた様に溜息を吐いたキリヤは空高くにいる《ヴァンパイア》を睨みつける。


「まあ、やらなきゃならねえってのは本当みたいだからな。…仕方ねえ。だが、これっきりだ」


そう呟いたキリヤは俺と目線を合わせてくる。

俺も頷き、俺達は再び、《フォトン・ウイング》と《ダークネス・ウイング》を発動し、《ヴァンパイア》に接近した。







俺達が上昇した事に気づいたメリル達は喜びの声を上げていた。


「アルトさん!」


「キリヤ…!」


「っしゃあ! やっちまえ、アルトォォォッ‼︎」


メリル達が俺達に声援の声をかけた…。






彼女達の声援を受けた俺達…。

みんな…ありがとな…!


気がつくと《ヴァンパイア》の前にまで来ていた。


『貴様等…ドコマデシブトイのだ⁉︎』


「テメェをブチのめすまでに決まっているだろうがァッ!」


「今度こそ…お前を倒す!」


《ヴァンパイア》は俺達に向けて、再び、光の刃を放ってくる。

エンゼッターとビームソードでそれを斬り弾いていく。


どのタイミングでキリヤの作戦へ持って行くか…。

少なくとも失敗すれば、俺達だけが死ぬ危険性もある…。

だからこそ慎重にしなくてはならない。


合図はキリヤがやってくれるらしいが…。


「ハアァッ!」


兎に角、俺はキリヤの合図を待つまで奴に攻撃を続けるだけだ…!


迫ってくる光の刃を回避しつつ、ブレッターを発砲していくが、全て《バリア》で弾かれる。


その隙を突いてキリヤが二丁のビームソードで斬りかかる。

だが、《ヴァンパイア》も手に光の刃を持ち、攻撃を防ぎ、回し蹴りで攻撃されるが、間一髪避ける。


『クタバレェッ』


光の刃から無数の斬撃を放ってくる《ヴァンパイア》。

俺達はそれを防ぎ続ける。


「…麻生! コレを防ぎ切ったらやるぞ!」


「…了解だ!」


合図を受けた俺は頷き、斬撃を防ぎ切った…。


「今だ…!」


「喰らいやがれェッ!」


斬撃を防ぎ切った俺達はブレッターとビームソードを解除した両銃を構え、《フォトンビーム》と《ダークビーム》を放った。


『甘イ!』


光と闇の光線は最も簡単に避けられる。

だが、奴が避けたと同時にキリヤは口をニヤリ、と歪ませる。


俺自身もかかった…!、と心の中で口をした。

二つの光線は《ヴァンパイア》に避けられた後、一つに交わり衝突する。


衝突により、掻き消されるはずだったが…。

二つの光線の影響で空に人一人が入れるサイズの穴が出来た。


『何ッ…⁉︎ 何ダコレハッ…⁉︎』


空に出来た穴の存在に驚愕する《ヴァンパイア》。

俺達はそれを奴に説明する。


「空間の穴だ。俺達の技能(スキル)は特殊でな…。麻生が光、俺が闇の力を持っている」


「光と闇…陽と陰…本来、対となる存在がぶつかり合うとどうなるか…。それは…空間に穴を作り出すほどのエネルギーが生まれる」


「その先に待つのは無…。殺しても死なないテメェはそこにぶち込んでやるよ!」


コレがキリヤの作戦…。

無の空間に閉じ込める事で不死身の《ヴァンパイア》を封じ込める事が出来る。


『成ル程ォ…。ダガ、アノ空間ニ入ラナケレバイイダケノ話ダァッ!』


「確かにそうだな…。だからこそ…!」


「俺達があの穴の中へ案内してやるよォッ!」


俺とキリヤは一斉に動き出し、《ヴァンパイア》に攻撃を仕掛ける。

奴を空間の穴に打ち込む為に…。


『チカラ尽くデ穴二オレヲ入レルツモリカ…。無駄ナ事ヲ!』


「無駄かどうか…。その身に受けてから言いやがれ!」


空間の穴へ誘い込む為に連撃を浴びせる俺達。

だが、奴は攻撃を防ぐだけで動く気配はない。


このままじゃ、ジリ貧だぞ…!


「コレならどうだァッ!」


両銃のビームソードを伸ばし、何度も振るうキリヤ。

だがそれも光の刃で防がれていく。

いや、コレでいい…!


「《閃光》…!」


《閃光》で奴の背後に回った俺は奴を真っ二つに斬り裂いた。


『無駄ダト言ッテイル!』


「本番はここからだ!」


技能(スキル)、《ビームウィップ》を発動し、奴を捕らえた俺はそのまま奴を空間の穴付近まで押し込み始めた。


『キ、貴様…!』


「隙を見せたのがお前の敗因だ…!」


『ダガ、ソンナチカラデ、オレヲ押シ込メルト思ウナ!』


奴の言葉通り、空間の穴の目の前で奴は堪え出す。

その力に押され、俺も動きを止めてしまう。


だが、それで良いんだよ…!


「キリヤ!」


《ヴァンパイア》を押し込みながら、キリヤに視線を移し、叫んだ。

すると、彼は驚いた顔をで俺を見てくる。


「テメェ、正気か⁉︎ 此処でアレをやればテメェも…⁉︎」


「良いんだ! やってくれ!」


「…ッ…! 後悔すんじゃねえぞ! 《空間操作》!」


《空間操作》…。

その名の通り、空間を操作する事の出来る上級技能(スキル)だ。


彼が空間を操作すると空間の穴は勢い良く俺と《ヴァンパイア》を吸い込み始めた。


『グッ…! コンナ、モノ…!』


「お前は…俺とあの中に行くんだよ…! あの無の空間の中にな!…ウオオオオッ‼︎」


『グッ…グオオオオオッ⁉︎』


背中の《フォトン・ウイング》から光のエネルギーを放出させ、俺は《ヴァンパイア》を無の空間の中へ押し込んだ…。



無の空間に入った俺と《ヴァンパイア》…。

音も酸素や空気もない…。

本当に何もない空間だな…。


『貴様…!ヨクモ…! ヨクモォォォォッ‼︎…グッ…ヌウウウッ⁉︎』


「ッ…⁉︎」


突然、《ヴァンパイア》が苦しみ出し、奴の身体は消滅を始める。

それは俺も同じで、息が出来ない事もそうだが、身体に激しい痛みが生じる。


『マ、マサカ…! コノ身体ガ消滅スルトイウノカ⁉︎』


「…!」


や、やべえ…!

すぐにこの空間から出ないと…!


《ヴァンパイア》を蹴り飛ばし、無の空間から出ようと動き出した。

しかし、俺の足を掴む者がいた。


《ヴァンパイア》だ…。

奴は俺を逃すまいと足を掴んできたのだった。


『逃すモノカ…! コウナレバ、貴様モ道連レニシテヤル!』


「クッ…!」


何とか奴の手から逃れようとするが、手を離そうとしない。

しかし…。


『グッ…! オオオオオッ…⁉︎』


悲鳴を上げながら、《ヴァンパイア》は消滅した…。

それにより、手を離され俺は再び、穴の外へ向かう。


『逃すスカァァァッ‼︎』


だが、すぐに再生した《ヴァンパイア》が俺に接近し、光の刃を振りかかって来る。

俺は振り返り、エンゼッターで攻撃を防いだ。


「何処まで…しつけえ、んだよ…!」


『貴様ニ言ワレタクハナイ! 貴様ダケハココデ…!』


「それは…俺の台詞だ…!」


《ヴァンパイア》を弾き飛ばし、《フォトン・ウイング》から光のエネルギーを放出させ、光のエネルギーをエンゼッターの剣身に纏わせる。


「お前だけは…俺が絶対に倒す…! 生命を守る為に…!」


そのまま剣身から巨大な光の剣を形成し、《ヴァンパイア》に接近した…。


「《フォトンスラッシャー》…! ウオオオオッ…!」


『グオォアァァッ…⁉︎』


再び消滅を始めた《ヴァンパイア》を《フォトンスラッシャー》で真っ二つに斬り裂いた…。


だが、奴はすぐに絶命せず、真っ二つになった身体で俺を睨みつける。


『無駄ダ! スグニ再生シ、貴様ヲ殺ス…!』


「…再生、しようが…俺は、お前を倒す…! 再生と死を…この無の空間で永遠に繰り返せ…!」


『グゥッ…! 麻生 アルトォォォォッ‼︎』


俺の名を叫びながら、《ヴァンパイア》は再び消滅した…。

さて、奴が再生する前にこの空間から出ねえと…!


急加速し、俺は出口に急いだ。

目の前に出口が見え、後もう少しの所で…俺の身体の消滅を加速し始め、息も辛くなってきた。


グッ…! 後少しなのに…!

もう、保たねえ…!


薄れていく意識の中…俺は出口は手を伸ばす。

だが、そのまま俺は意識を手放してしまった…。


此処で終わるのか、俺は…。

罪と受け入れると決めた途端コレかよ…!


俺は結局…此処までの男だって事なのか…。

ゴメン、スノウ…歌音…。




ーー…さん!


…え?


ーーアルトさん!


誰かが…俺を呼んでいる…?


ーー目を覚ましてください! 私達の所へ帰って来てください!


私達の…所へ…?

この声は…そうだ。忘れてはいけない…。アイツの声を…!


俺は意識を取り戻し、目を覚ました。

そこには妖精になったメリルが俺の右手を掴んでいた。


「アルトさん!」


俺が目を覚ました事にメリルは気づいた様だ。


「メ…リル…!」


「アルトさん! 待っていてください! 今助けます!」


小さな身体で俺の手を必死に引っ張るメリル。

だが、力足らずで引っ張れないでいた。


そこへ、俺の左腕を掴む者も現れる。


「…ったく、世話のかかる奴だな、テメェは」


キリヤ…!

お前まで俺を…!


「おい、シーニング。一気に麻生を引っ張るから、手を離すんじゃねえぞ」


「はい…!」


俺達はそのまま無の空間から出る。

一気に空気が身体に入って来て、俺は息を吹き返した。


『麻生 アルトォォォォッ‼︎』


ッ…⁉︎

《ヴァンパイア》が追いかけて来た…⁉︎


「チッ…! 何処までしぶとい奴なんだよ! 永遠にその空間で生きていやがれ!」


《空間操作》で穴を閉じていくキリヤ。


『オノレ…オノレェェェェッ‼︎』


徐々に穴が小さくなり、隙間から《ヴァンパイア》の姿が見え、奴の叫びが響く。

だが、そのまま空間の穴が閉じ、叫び声は掻き消された…。


不死身になった事を恨みやがれ…サシェス…。


こうして本当の意味で俺達は勝利したのだった…。


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