レンドベル闘技大会Cブロック(前編)
フィールドに転送された俺や他の参加者達…。
転送される感覚…物凄く新鮮何だが…。
そう言えば、さっきからCブロック参加者の紹介をしているな。
『続いてはこの人!謎の男…その素性は誰も知らない!紫ローブのラース!』
このブロック…ラースさんと当たるかもしれない。
注意しないと…。
『そして、あの名を馳せている冒険者の初参戦だ!』
…ん?そんな奴いたか?
『電光石火の如く現れ、数々の強敵を打ち倒し、帝都ガイールのメルド国王も信頼を寄せ、名だたる騎士からスカウトされるが、これを却下!』
へえ…メルド様や騎士達から信頼を寄せられている奴か。
余程強いんだな。
『無職とは思えないその強さ!彼はこの大会でも皆の目を惹きつけるだろう!』
何…⁉︎
俺以外にも無職の冒険者がいたのか⁉︎
『便利屋ギルド可能の星のギルドリーダーで無職冒険者、麻生 アルト‼︎』
便利屋ギルド、可能の星のギルドリーダー……って…。
俺じゃねえか⁉︎
え、何⁉︎俺そこまで有名になっているのか⁉︎
てか、俺の説明長すぎだろ!
しかも、前半良かったのに、無職冒険者で台無しだよ!
…い、嫌…惑わされるな…!
集中だ、集中…!
息を深々と吐き、俺は気を引き締めた…。
客室では俺の姿を確認したメリル達は声を上げる。
「あ、皆さん!アルトさんが出て来ましたよ!」
「マスター…緊張してる」
「いや、緊張しているというより…あの実況者の説明に戸惑っていると思うぜ」
「あそこまで言われると流石に恥ずかしいでしょうね…」
あぁ、そう言えばモニターで見られていたんだな。
ヤバイ、マズイ、恥ずい…。
そんな俺に同情するマギウスと揶揄うように笑みを浮かべるカイリ。
「…あの様子だと、勝つ事は不可能かもね」
俺を馬鹿にした様に呟くアナトスの言葉にメリルはムッとなる。
「なっ⁉︎アルトさんは負けません!不可能を可能にする方ですから!」
「…この世には可能にできるモノとできないモノがあるわ」
確かに…、とメリルは口を閉ざしてしまう。
だが、目を一度閉じ、首を力強く横に振った。
「貴女の言う事は正しいです。ですが、理屈では測れないモノもあります。…出来るとかできないとか、アルトさんには関係ないのです!…アルトさんが悩むなら、私達が支えるだけですから」
メリルの言葉にマギウスとアイム、ルルが微笑み、頷いた。
それに同意し、カイリも微笑んでいる。
その彼女達の微笑みをアナトスは一度見入ってしまい、言葉を閉ざしてしまう。
だが、すぐに我を取り戻し、フン、と鼻で笑い、顔を逸らしてモニターを見る。
それに釣られ、メリル達もモニターを見た…。
参加者の紹介も終わり、ついに戦闘開始のカウントダウンが始まった。
それにより、俺は気を再度引き締め、背中のエンゼッターに手をかける。
そして…カウントはゼロになった。
それと同時に俺はエンゼッターを構え、周囲を警戒する。
実況の声も聞こえなくなり、静寂が辺りを包む。
いつ敵が襲い掛かって来てもいい様にエンゼッターを強く握り締める。
…嫌、待てよ…?
俺にはアレがあるじゃねえか…。
「…《索敵》」
特殊技能《索敵》を使い、辺りを索敵する。
頭の中に入ってくる周囲の情報…。
今、俺の頭には三十メートル程の周囲の情報が映し出されている。
頭の中にレーダーがある感じだ。
中心に位置する黄色い点が俺…。
そして、赤い点が敵って事だな…。
…待てよ、赤い点が二つ近づいてくるって事は…。
敵が来る…!
そう判断したと同時に茂みから二人の敵が出てくる。
成る程、奇襲を仕掛けて来たと言う事か…!
しかし、《索敵》のおかげで動きは把握済みだった俺は即座にブレッターを手にとり、勢い良く振り返る。
奇襲が気付かれていたとは思わず、俺に飛びかかりながら、驚愕している。
だが、遅いんだよ…!
襲いかかる二人に俺はブレッターを発砲し…ヘッドショットを決めた。
「な、なぜ奇襲が…バレた…⁉︎」
戸惑いながら、ヘッドショットによって体力がゼロとなった敵の二人は消滅する。
…行ける…!
《索敵》を使えば、奇襲でも対処出来る!
そう思っていると今度も赤い点が一つ、俺に接近していた…。
赤い点が俺と重なる…しかし、視界には敵らしき姿が見当たらない。
…考えられるのは空。又は…。
「地中か!」
俺の考え通り、跳躍したと同時に地中から敵の一人が小槌を振るい飛び出てくる。
しかし、攻撃の予測が出来た為、奴の顔面に蹴りをたたみ込み、身体にエンゼッターを突き刺した…。
悲鳴を上げる事もなく、相手は消滅する。
「どんどん行くぞ…!」
エンゼッターとブレッターを握り締め、俺は敵を探す為、走り出した…。
控室で俺の戦いを見ているグレン達…。
「アルトの奴。序盤から飛ばしているな!」
「着々と敵を倒している。案外、簡単に勝負がつくかもしれないよ」
俺の活躍に称賛の声をあげているグレンとスノウ。
…しかし、そこへ夕暮が歩み寄り、口を開いた。
「ヘッ、テメェ等の目は節穴か?」
そう呟き、あるモニターに視線を向ける。
それに続いて、グレン達もそのモニターを見ると、驚愕の表情を浮かべる。
モニターには正に無双と言っていいほどの実力で敵をなぎ倒すラースさんが映し出されていた。
武器であるバスターソードを振るい、周りの参加者達を駆逐していった。
「アイツもやるじゃねえか…!」
「だが、アルトは負けないよ…」
俺が戦うモニターを再び見た二人は心の中で俺に対してのエールを送った…。
周りの敵を倒し終えた俺は警戒しつつ、息を吐く。
今ので撃退数が六十四を超えたか…。
他の参加者の撃退数は分からないが、順調に来ているな。
「残り時間、十分か…。畳みかけねえとな…」
「…では、これでラストとしようか」
突如声をかけられ、俺は勢い良く振り返った。
そこにはラースさんがバスターソードを構え、立っていた。
「ラ、ラースさん…⁉︎」
《索敵》に引っかからなかっただと…⁉︎
この人…いつの間に俺の背後を…⁉︎
「《索敵》を頼りにするのは構わないが、頼りすぎるのはダメだな」
まさか…!
「《索敵妨害》の特殊技能…⁉︎」
俺が考えを口にすると、ラースさんはご名答、と拍手した。
…成る程、《索敵》に引っかからないワケだ…!
「さて、ゆっくりと話している時間はない。此処で君を倒して、有利に立たせてもらう」
「どちらにしても、貴方を倒せなければ、俺はこれ以上勝つ事が出来ません…。だから、貴方に勝ちます!」
「いい心がけだ…。行くぞ!」
その言葉と同時にラースさんは一気に俺の目の前まで距離を詰めた。
だが、対応出来ないスピードではなく、俺はすぐさま防御の態勢に入り、バスターソードの攻撃を防ぐ。
防いだのだが…。
「グォッ…⁉︎」
あまりの衝撃と威力に俺の身体は後方へ吹き飛ばされてしまう。
何とか、地面を引きずり、吹き飛ぶ身体を支える。
「休んでいる暇はないぞ!」
一撃を防いだだけで、あの威力…。
それを彼は何発も叩き込んでくる。
何とか、吹き飛びそうな身体を堪え、エンゼッターで防ぎ続ける。
防戦一方という言葉がピッタリな状況…。
何か、やり返さないとこのままじゃ、防御が崩れる…!
連続斬りの後、ラースさんはバスターソードを右から横に一閃しようとした為、それを読んだ俺は大勢をしゃがませ、一閃を避けた。
そして、そのまま跳躍して、彼の腹に膝蹴りを浴びせ、エンゼッターで斬り飛ばした。
彼は軽く吹き飛ぶも地面にバスターソードを突き立て、堪えた。
こっちこそ、休ませる気はない…!
すぐさまブレッターを取り出した俺はブレッターを何発も発砲する。
ラースさんへ向けて放たれた銃弾…それは真っ直ぐラースさんへ向かい、直撃するかに見えたが…。
「フンッ!」
しかし、彼がバスターソードを勢い良く振るうと剣身から巨大な斬撃が放たれ、銃弾を呑み込みながら、俺に向かってくる。
防御が遅れ、俺は斬撃を受けてしまい、その場に転がる。
エンゼッターとブレッターを手放してしまい、フラつく身体で何とかその二つに手を伸ばすが…。
すぐ側までラースさんが近づいて来ていた…。
バスターソードを逆手に持ち、剣先を俺に突き立てていた。
「…終わりだ!」
「終わる…かよ…!」
俺の身体を突き刺そうとバスターソードを振り下ろして来たが、俺は転がり、それを回避。
そのまま、勢い良く起き上がった。
地面に落ちているエンゼッターとブレッターに目をやるが、すぐに取れない距離にあり、どうするかと考えていたが、バスターソードを構え、ラースさんが斬りかかって来た。
防ぐ事もできず、俺はバスターソードによる攻撃を避けていく。
すると、バスターソードを縦に振り下ろして来たので、真剣白刃取りの要領でバスターソードを受け止めた。
だが、力尽くで俺を叩き斬ろうと力を強めてくる。
やられっぱなしには…させない!
ラースさんの腹を蹴り、彼を後方へ軽く吹き飛ばす。
両拳に炎や電撃を纏わせ、何度も殴りかかる。
しかし、避けられたり、バスターソードで防がれ…逆に懐に潜り込まれ、光弾を叩き込まれた…。
俺の懐で光弾は破裂し、小さな爆発を起こした…。
「グアァッ…⁉︎」
爆発に巻き込まれ、俺は大きく吹き飛び、後方にある岩に激突する。
岩にめり込んだ俺の身体…。
すぐに追撃が来ると思い、その場から動こうとしたが、既に遅かった…。
「遅い!」
既にバスターソードの剣先を俺に向けて構えたラースさんが俺の前にまで接近して来ていた。
マズイ…!
接近の速さに俺は動けず…バスターソードによる突き刺しをその身に受けてしまった…。
バスターソードを突き刺され、俺の身体は動かなくなった…。
俺が動かなくなったのを確認したラースさんはフゥ、と息を吐く。
「…手こずったが…これで私の勝ちだな。…さて、少し時間が余ったな。残りの時間で周りの敵を…ッ?」
周りを見渡し、俺に突き刺したバスターソードを引き抜こうとする…。
だが、引き抜けず、彼は再びバスターソードの剣先を見た…。
そこには消滅したはずの俺の身体があった。
体力がゼロになり、倒されれば消滅する…それが大会のルールだ。
だが、俺の身体はその場に残り、徐々に凍り出した…。
そのに伴い、俺の身体を伝ってバスターソードも凍り、引き抜けなくなっていたのだ。
「な、何だ、これは…⁉︎」
ラースさんは既に氷の像となっていた俺の身体を見て、目を見開いた。
だが、ある気配を背後に感じ、再び驚愕の表情を浮かべる。
だが、遅い!
「…それは分身ですよ。俺が作り出した…ねッ!」
エンゼッターを振るい、《ファイアスラッシュ》でラースさんを斬り裂いた。
燃えさかりながら、彼は吹き飛び、地面に倒れる。
その衝撃でバスターソードは引き抜かれ、氷の像となった俺の身体は砕け散る。
ゆっくり立ち上がりながら、ラースさんは今起きた事を俺に問いただしてくる。
「分身だと…⁉︎」
「ええ。貴方の隙を作る為に入れ替わっていたんですよ。ラース…さ…んッ⁉︎」
先程の《ファイアスラッシュ》の影響でかは分からないが、ラースさんの紫ローブが取れ、素顔があらわとなった。
しかし、彼のその素顔を見た俺は膠着してしまう。
マジかよ…ラースさんの正体って…!
「ん?どうした、アルト君?」
「ロ、ローブが…外れていますよ…」
「……え?」
俺の指摘に彼は被っていたローブを確認するが…ない事に気づき、動きを止めてしまい、ゆっくりと顔を上げ、俺を見てくる。
「…や、やあ、奇遇だな!」
「本当に何しているんですか……。ルーク隊長」
そう、謎の紫ローブの男の正体は聖凰騎士団、騎士大隊長…ルーク・ヴォルンド隊長だった…。




