メリル達の激闘
これは俺がガルナやカイリ達とパール鉱石を求め、クレアの鍛冶屋や洞窟に行っていた頃の事だ。
冒険者支援施設で俺とは別行動を取る事となったメリル、アイム、マギウスは《ウリイノシシ》討伐クエストの場所である草原に来ていた。
「《ウリイノシシ》は小さな身体で素早いと聞いています!それに突進の威力も凄まじいモノなので気をつけてください!」
「了解だ!」
メリルの指示に二人は頷き、それぞれ《ウリイノシシ》との戦闘を始める。
真正面から突進してくる《ウリイノシシ》達の進行を《バリア》で防ぎ、メリルは《ファイアボール》を奴等にぶつけた。
《ファイアボール》を受けた《ウリイノシシ》数体は絶命し、消滅した。
その攻撃方法を見たマギウスは引き攣った顔をする。
「突進してくる相手を《バリア》で防いで攻撃をぶつける…エゲツないな…!」
「ねえ、マギウスお兄ちゃん。少しやりたい事がある」
「やりたい事…?」
耳を貸してと言われ、アイムはマギウスの耳元でヒソヒソ、と話した。
「成る程…。複合技か!よし、やるか!」
「うん」
頷き合った二人は動き出した。
まずアイムが《ナックルミサイル》を《ウリイノシシ》達に向けて放つ。
「そらよ!」
そして、マギウスはアイムが飛ばした腕に赤雷を纏わせた。
赤雷を纏った腕は《ウリイノシシ》達に直撃し、大きなスパークが起き、スパークを受けた《ウリイノシシ》達は絶命した。
「よっしゃあ!うまくいったな!」
アイムの腕が戻ったのを確認し、技が上手くいった事を喜び、二人はハイタッチをした。
「お二人共凄いです!私も負けていられませんね!」
右腕を突き出したメリルは新たな技能を発動する。
「《ホーリーブレード》!」
手に光の剣が現れ、メリルは襲いくる《ウリイノシシ》達を斬り伏せていく。
「メリルお姉ちゃん…いつの間にあんな技能を…」
「俺だって!」
拳を握ったマギウスの周りに赤雷の矢が複数現れる。
「《エレキアロー》!」
赤雷の矢を放ち、次々と矢を受けた《ウリイノシシ》達は感電していく。
「アイムさん!トドメはお任せします!」
「うん…!」
右腕を砲身に変えたメリルが電撃のエネルギーをチャージさせる。
「《レールガン》!」
電撃を帯びた銃弾が残りの《ウリイノシシ》達に直撃し、メリル達はすべての《ウリイノシシ》を倒した…。
「やりましたね!」
「アルトがいなくてもやれるって事だな!」
「うん。マスターばかりに頼っていられないから」
討伐を完了させたので、彼女達はイズルリの街へ戻ろうとしたが…。
そんな彼女達を囲む様に複数の冒険者達が現れた。
「ちょーっと待った!此処から先へは行かせないぜ!」
何と、その集団の中心にいたのは冒険者支援施設で俺が追っ払った男だった。
「お前は…冒険者支援施設にいた!」
「最低男…」
余程、冒険者支援施設でメリルに行った行為が許せないのか、嫌悪の視線を向けるアイム。
「あの時は油断したが…お前等だけなら、何とかなるぜ!お前等!やっちまえ!」
雄叫びを上げながら、冒険者達はメリル達に襲い掛かる。
しかし、そんな奴等に向けて、炎が襲い掛かった。
その炎に相手の冒険者達やメリル達も驚き、炎を放った者を見る。
そこには五人の人物が立っていた。
その五人の中心にいた男にはメリル達も見覚えがある。
「俺のダチの仲間に手を出すなんて…いい度胸しているじゃねえか!」
「グレンさん!」
そう、グレン・アビスと彼のギルド、紅蓮烈火の仲間達だった。
「アイツが…アルトのダチのグレン…」
「お前が鬼族のマギウスだな!話はアルトから聞いているぜ!折角だ…加勢するぜ!」
「助かるぜ!」
紅蓮烈火の登場に戸惑い出す冒険者達。
「ビ、ビビるんじゃねえ!たかが冒険者だろ!俺達だって、冒険者だ!捻り潰してやれ!」
「…へぇ、それなら冒険者以外の者も参加しよう!」
メリル達を飛び越え、一人の男が舞い降りた。
緑の髪に騎士の姿をしたその者は…。
「ヴェイグじゃねえか!」
「やぁ、メリルさん達にグレン達!」
「なっ…⁉︎何故、騎士が此処に⁉︎」
ヴェイグの登場にリーダーである男も流石に困惑する。
「私の親友の仲間の危機は見逃せないからね。それに君達の悪評も聞いている。見逃すワケにはいかないな」
剣を抜刀し、グレン達の横に並び立った。
「…な、舐めんじゃねえ!騎士がなんだ!行け、お前等!」
戸惑いながらも怒号に近い指示を出し、冒険者達はメリル達に襲い掛かった。
「全く…状況が読めねえ奴等だな」
「では、我々も容赦なく行こう」
「はい!お手伝いお願いします!」
グレン、ヴェイグ、メリルを中心に彼女達も冒険者達を迎え撃ち、戦い始めた。
しかし、冒険者達がメリル達に敵うはずもなく、次々に気を失っていく。
そして、残るは男一人となった。
「残るはあなた一人」
怯え出した男にアイムは詰め寄る。
拳を握り、彼女はいつでも殴り飛ばせる準備を整えている。
しかし、何かを思いついたのか男はニヤリ、と笑い、土下座をする。
「ご、ごめんなさい!申しません!大人しく、捕まるので許してください!」
男の土下座を見て、グレンやヴェイグ達も武器を収め、アイムも警戒を解いた。
いや、それが仇となってしまったのだ…。
「かかったな!」
「ッ…!」
スッ、と顔を上げた男はアイムの右腕をナイフで切り裂いた。
咄嗟に事でアイムも防ぐ事が出来ず、擦り傷程度だが斬り裂かれる。
すると、次の瞬間、アイムは力を失った様にその場に倒れそうになるが、男がそれを捕らえ、彼女の頬にナイフを突き立て、メリル達を見る。
「しまった…⁉︎」
「メリルさん!」
人質の様に囚われてしまったアイムを見て、ヴェイグ達は再び、武器を構える。
「へっ!このナイフには麻痺薬をたくさん塗ってあったんだよ!」
「ご、ごめん…みんな…!」
麻痺状態となり、身体が痺れて動けないアイムでは抵抗できなかった。
それにより悔しそうな表情を浮かべるアイム。
「おい!この女を殺されたくなけりゃ、武器を捨てろ!」
アイムを人質に囚われている為、反抗できず、ヴェイグ達は武器をその場に置く。
「動くなよ?コイツは俺が逃げるまで人質だ。…ちょっとでも動くいたら、この女を…」
「…この女を…どうするつもりだ?」
「えっ…ヒイッ⁉︎」
突然、男の背後から声が聞こえ、男が振り返ると恐怖の表情を浮かべた。
ある人物がいて、その人物は右手で男の頭を強く掴んだ。
「本当に懲りてねえみたいだな…。お前は?」
その人物は鋭い目線で男の事を睨んでいた。
アイムとメリル達はその人物を見て、笑みを浮かべる。
「アルトさん…!」
「マスター…!」
そう。ブレッターを手に入れ、冒険者支援施設に戻った俺…麻生 アルトだ。
ルルさんにこの場所を聞いて、様子を見に来て正解だったな。
「大丈夫か、アイム?遅くなっちまって悪かったな…。とにかく、眠ってろ!」
俺は男の腹に拳を入れ、男は気を失った。
それにより、アイムも解放されたが、力を失っていたため、前に倒れそうになるが、俺が支え、彼女に麻痺ポーションを飲ませた。
麻痺ポーションを飲んだ事でアイムの麻痺は解除される。
「マスター…ありがとう」
素直に感謝の言葉を口にした彼女の頭を優しく撫でる。
「無事で何よりだ、アイム」
アイムと笑いあっているとメリル達が歩み寄ってきた。
「アルトさん!」
「助かったぜ、アルト!」
「すまない、アルト。私が油断した所為で…騎士としてまだまだだな」
頭を下げてくるヴェイグの肩を叩き、気にするなと俺は言った。
「グレン達もサンキューな!」
「おう!」
取り敢えず、アイムが無事で良かったぜ。
「それにしても…銃の方はどうなったんだ?アルト」
マギウスに銃の事を聞かれ、俺はブレッターを取り出した。
ブレッターを見たメリル達はおぉ!、と声を上げる。
「綺麗な銃です!」
「ふむ、外見にパール鉱石を使っているね」
流石はヴェイグ。使っている素材も分かったか。
「名前はもうつけたのか?」
「よくぞ聞いてくれました!」
俺はふふん、笑い、ブレッターをクルクル、と回した。
「コイツの名前は…ブレッターだ‼︎」
ニヤリ、と笑いながら銃を構え、ブレッターの名前を口にすると、メリル、マギウス、ヴェイグ、グレン達はポカン、と口を開け、俺を呆れた顔で見る。
…お前等もかよ…。
「ブレッターって…どういう意味だ?」
「…ブラスト、バレット、シューターを合わせただけだろうね」
ホントに凄えな、ヴェイグ!
そこまで気がつくのかよ⁉︎
「相変わらず安直だな…」
「煩え!」
「アルトさんのネーミングセンスはその程度ですね」
「撃つぞ、テメェ⁉︎」
…もう、コイツ等の前で下手な名前をつけるのはやめた方がいいかもな…。
そう思っていた時、顔を伏せていたアイムが俺の腕を掴んでフルフル、と震えていた。
「ア、アイム…?どうしたんだ?」
怒っている…?
ワケじゃないよな…?
すると、アイムは勢いよく顔を上げる。
その彼女の目は光り輝いていた。
「格好いい名前!」
え…?
「マスターはセンスの塊!凄い!」
目を輝かせ、褒め言葉を連発する。
それには俺もメリル達も声を上げ、驚いている。
「ア、アイムちゃんって…ズレてねえか?」
「そ、そう言えばアイムという名前もすぐに気に入っていましたね…」
「ははっ。流石はアルトの仲間だね」
ヒソヒソ、話しているが聞こえているぞ、お前等。
しかし、アイムは聞こえていないのか、小首をコテン、と傾げている。
そんな話をしていると、一体の《ウリイノシシ》が俺に向かって、突進してきた。
…丁度いい。
ブレッターの性能を試すいい機会だ!
俺は《ウリイノシシ》を限界まで引き付け…ブレッターを発砲し、見事にヘッドショットが決まった…。
まあ、何はともあれ…これから、よろしくな。ブレッター!
ブレッターを空に掲げ、そう呟いた…。




