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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第五章 新銃作成編
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必死の救出と過去


口から血を吹き出しながら、倒れた俺…。

そんな俺にカイリは駆け寄ってきた。


それと同時に《ポイズンスコーピオン》も音を立てて、その身を地に伏せた…。

あの攻撃…道連れの一発だったのかよ…!


「グッ…ガァッ…!」


肉体を貫かれた痛みと全身に駆け回る毒による苦しみが同時に身体を襲い、俺は血を吐きながら、苦痛の声を上げる。


「アルト!しっかりして、アルト!」


絶望的な表情を浮かべながら、カイリが俺の名を何度も叫ぶ。

答えてやりたいがそれどころではなく、咳き込むと同時に血を吹き出してしまう。


《リカバー》を発動しようにも意識が朦朧として…ダメだ…!


「ど、どうしよう⁉︎どうすれば…⁉︎私は《リカバー》を取得してないし…。ポーションも意味をなさい…!どうしたらいいの…⁉︎」


苦しむ俺を目の当たりにして、カイリは焦りつつ、どうすればいいのか考え始める。


「ま、まずは傷を治さないと…!」


《ヒール》を発動した彼女は掌を貫かれた傷に当てると傷口は塞がっていく。


「グッ…!アァッ…!」


しかし、毒が癒えていないので、未だに口から血を吐く。


「アルト…!私には…どうする事も出来ないの…⁉︎」


このままでは俺が死んでしまう…。

しかし、何もできないとその場に膝をついてしまうカイリ。


すると、彼女のコンディションブレスに通信が入る。


それに気づいた彼女は応答する。

相手はガルナの様だ。


『あ、やっと繋がった!カイリ、アルト君!大丈夫なの⁉︎』


「お姉ちゃん…!助けてぇ!アルトが…アルトがぁっ!」


『何?アルト君がどうかしたの⁉︎』


「アルトが…私を《ポイズンスコーピオン》の攻撃から庇って、毒状態になったの!」


カイリは泣き叫びながら、落下した後に起こった出来事をガルナに伝える。


『無効化モンスター…こんな所にいるなんて…!』


「お姉ちゃん、助けて!私じゃ…毒を癒す事が出来ない!」


『何言ってるの⁉︎今、アルトを救えるのはアンタしかいないのよ!私が行っても間に合わない!アンタがアルトを助けるのよ!』


アンタが俺を助けろ、そう訴えるガルナの言葉を無理だと、首を振りながらカイリは口にする。


「無理だよぉ!私じゃ…もう…」


『諦めないで‼︎』


ガルナの通信越しの叫びにカイリはビクリ、となる。


『少なくともアルト君はそんな状態でも諦めないわ。アンタが毒に侵されても絶対にアンタを助けるわ!…アンタはそんなアルト君を見捨てるって言うの⁉︎』


「お姉ちゃん…」


『大丈夫。私も手を貸してあげるから!』


「…うん!わかった…やるよ!」


涙を力強く拭ったカイリは立ち上がり、苦しむ俺を見て、覚悟を決めた様だ。


『じゃあ、周辺に何かないか隅々まで探して!』


ガルナの通信越しの指示に頷いたカイリは周辺を探し始める。

もしかすれば俺を助けられる方法があるかもしれない…。


その期待を胸に周辺を探していると…微かな水滴が落ちる音が聞こえてきた。


「水…?」


すぐさま耳を澄ませ、水滴の音の場所を確認する。


「あっちだ…!」


場所が判明し、カイリがその場所まで駆け寄ると…彼女の目の前には小さな水たまりがあった。


「これは…お姉ちゃん。水滴が落ちて、小さな水たまりになってる!」


『水たまり…?カイリ、コンディションブレスでその水たまりを調べてみて!』


「う、うん!」


ガルナに言われた通りにコンディションブレスで目の前の水たまりを調べる。


すると、ある表示が現れる。

そこにはその水たまりの名前が記載されていた。


秘水…。

それがこの水たまりの水の正体だった。


「秘水…⁉︎お姉ちゃん、秘水があったよ!」


『秘水ですって…⁉︎それがあれば、アルト君を助けられるわ!カイリ!』


「うん…!」


カイリは立ち上がり、俺の元まで駆け寄ると俺を担ぎ、秘水の水たまりの所まで俺を連れていく。

秘水の下まで辿り着くと俺をゆっくりと寝かせた。


そして、秘水の水たまりに両掌をつけ、少量掬い上げた。

それを俺の口元へと持ってくる。


「アルト、秘水よ!飲んで!」


何とか、秘水を飲ませようとしてくれるカイリだったが、俺は既に意識が保てず、自分自身で口を動かす事も出来ない。


口を開こうとも苦痛の声が漏れているだけだ。


「…こうなったら…!」


このままでは飲ませる事が出来ない…。

そう思ったカイリは秘水を自身の口に含み…唇と俺の唇を重ね合わせ…そこから秘水を俺の口の中へと流し込んだ。


喉の奥にまで秘水が流れ、俺はゴクリ、と秘水を飲み込んだ。

数分後、苦しみが引いていき、俺は落ち着いた様に気を失った…。


「アルト…⁉︎…気を失っただけか…」


気を失った俺に驚き、唇を離した彼女は気を失っただけだと、安心した。


「…お姉ちゃん、秘水が効いたみたいだよ」


『フゥ…良かったわ…。取り敢えず、アルト君を安全地帯まで連れて、休みなさい』


「うん。そうする」


疲れた様に息を吐いたカイリは通信を切ろうとするが…。


『カイリ…』


「ん?何?」


『お疲れ様。よく頑張ったわね。…それから、アルト君を助けてくれてありがとう』


恐らく、ガルナは通信越しで微笑んでいるだろう…。

そう思ったカイリはクスリ、と笑ってどういたしまして、とだけ返し、通信を切った…。


通信を切ったカイリも軽く息を吐き、穏やかな顔で寝息を立てる俺を見る。

そんな俺の額を彼女は笑みを浮かべながら、撫でた後、俺をゆっくりと担いで、安全地帯まで連れて行った。


安全地帯だと確認し、俺をゆっくりと寝かせ、彼女もその場に座り込んだ。


「…誰かの為、か…。盗賊紛いの事をしていた私が…。変わる事って、出来るんだね…」


俯きながら、カイリは過去の出来事を思い出す。




ーカイリ・シリング。


幼少期に彼女はガルナ・シリングの妹や故に彼女はよく周囲からガルナと比較されていた。


何もかもが出来るガルナと見比べられていた彼女はどれ程、努力しても評価される事はなかった。


何故なら、出来て当たり前と言われたからだ。


姉のガルナは努力すれば、評価される…。

しかし、自分は評価されずにドンドン、ガルナとカイリの距離が遠くなっていく。


カイリはそんなガルナを妬ましくも思い、嫌っていた。

…しかし、そんなカイリを評価してくれた人間が一人だけいた。


それがガルナだった。

だが、ガルナ自身に評価されると馬鹿にされた気分となり、カイリは怒りを込め、ガルナの頬を叩いてしまった。


「カ、カイリ…?」


突如、叩かれた事に戸惑うガルナ。

そんな彼女にカイリは目元に涙を浮かべながら、胸の中に秘めていたすべての想いを打ち上げた。


「私の努力も知らないのに…知った様な事を言わないで!」


「ッ…!」


「私はカイリ・シリング!お姉ちゃんじゃない!…それなのに…どうして、私はお姉ちゃんと見比べられないといけないの⁉︎私だって…頑張ってるのに…!」


胸に秘めた想いを打ち上げた彼女はずっと堪えていた涙を流す。


「どうしてみんな…私を私として見てくれないの⁉︎どうしてみんな…私をガルナ・シリングの妹でしか見てくれないのよ‼︎」


自暴自棄になるにまで叫び続けるカイリ。

そんな彼女をガルナは優しく抱き締めた…。


「ごめんね、カイリ。…私のせいで辛い想いをさせちゃって…。でも、私はカイリの努力を知ってるよ?どれだけ頑張っているか…だって、カイリは私よりも頑張り屋さんだもん!」


「お姉、ちゃん…!」


「今は私だけだけど…。カイリの努力を評価してくれる人は絶対に現れるよ。私が保証するよ。カイリは…私の妹である前に…一人の人間なんだから…」


「お姉ちゃん…ごめん、なさい…!叩いちゃって…ごめんなさい!」


強くガルナを抱き返し、カイリは胸に秘めていた悲しみを全て出す様に泣き崩れた…。

泣き続け彼女をガルナは優しい表情を浮かべながら、彼女の頭を撫でた…。


この日からカイリはさらにガルナを越えようと努力する事を誓ったのだった…。




幼少期の事を思い出しながら、カイリはその場に横になった。

そして、隣で眠っている俺の右腕に額をつけた。


「私の事を評価してくれる人を見つけたよ。お姉ちゃん…」


麻生 アルト…。

私の初恋の相手を…。

カイリはそう思った後、静かに眠りについた…。


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