カイリ・シリング
ま、まさかこの盗人女がガルナの妹だったとは…。
カイリという名の彼女がガルナの妹と知り、戸惑っている俺を放置して、二人は言い合いを始めている。
「ア、アンタこんな所で何しているのよ⁉︎」
「…べ、別に何もしていないよ。ただ、この男の人とぶつかっちゃっただけで…」
誤魔化す気か、コイツ…。
「そうだな。そして、そのぶつかりを利用して俺の財布をスろうとしたよな?」
「いっ…⁉︎」
堂々と犯行をカミングアウトされた為、カイリはなんで言うのよという、睨みを利かせた視線をこっちに向けてくる。
それを聞いたガルナは目を見開き、カイリの肩を掴んだ。
「アンタ、まだ盗賊紛いな事を続けているの⁉︎」
盗賊紛いって…ガルナも知っていたのかよ…。
「兎に角、アルト君に謝りなさい!迷惑をかけたんだから!」
俺に謝罪しろとカイリに言うガルナだが、カイリは一向に謝る気がない。
…少し揶揄ってやるか。
「カイリ、いい加減に…!」
「まあ、落ち着けよ。ガルナ…」
「ア、アルト君…」
今にも怒りで叫び出しそうなガルナを落ち着かせ、俺はカイリの前に立った。
彼女はそれでも怯んだ様子はなく、上目で俺を睨んでくる。
「…謝るのが嫌ならそれでいい。じゃあ、カイリ…だったな?今から一緒に騎士団の元へ行くか。お前の犯行を話して」
「ッ…⁉︎」
「アルト君…⁉︎」
俺の告げた言葉にはカイリだけでなく、ガルナも目を見開き、驚いた。
「お前のやっている事は紛れもなく犯罪だ。誰かから金を取るなんて余計にな。…自分の足で行かないと言うのなら…」
顔と目を逸らし、動こうとしない彼女の右腕を俺は掴み、力尽くで連れて行こうとする。
しかし、その行動を黙って見ていられず、ガルナが俺を止めに入る。
「ちょ、ちょっと待って、アルト君!確かにカイリは悪い事をしたわ!でも…それだけは…!許せないのなら、私が何度でも謝るから!」
…何だよ。喧嘩しても妹の事は心配なんじゃねえか。
「…別にお前に謝って欲しいワケじゃねえよ。…で、お前はどうするんだよ、カイリ?」
「…わかったわ。罰を受ける」
…へえ…。
カイリの言葉に俺は心の中で笑みを浮かべ、ガルナは驚く。
「カ、カイリ⁉︎何言っているのよ⁉︎」
「止めないでお姉ちゃん。私はそれだけの事をしてしまったのだから。私だって覚悟なしでスリなんてやってないのだから」
「カイリ…」
確かに覚悟は聞いたぜ。
「…合格だ」
「えっ…?」
合格、と呟き、俺は手を離すとカイリは驚いた表情でこちらを見てくる。
「き、騎士団に連れて行くんじゃないの?」
「…悪いが試させてもらった。お前には覚悟があるのか、ないのかをな。此処でもしお前が全力で抵抗してきたのなら、容赦なく騎士団に放り込んでいた」
「アルト君…」
クスリ、と目を閉じながら離す俺を見て、ガルナは微笑む。
「お前には罪を受け入れる覚悟がある。その覚悟に免じて今日は見逃してやるが…。あまり、盗賊紛いの事はお勧めしないぜ?」
ポンポン、とカイリの頭に手を置くと彼女は突然、顔を赤くさせ、頭からボン!、と湯気を出す。
「ん…?どうした、顔が赤いぞ?」
突然顔が赤くなった事が不思議に思った俺は彼女の額に手を置く。
「も、もう!」
顔を赤くしながら、彼女は俺の手を退かせた。
「何怒ってんだよ?」
「怒ってない!…あの、ありがとう…それからごめんなさい」
シュン、となって謝ってくる彼女に俺は微笑み、気にするな、と口にした…。
「…所でアルトとお姉ちゃんはこれからデートなの?」
……はい?
何を言っているんだ、コイツは…。
「なっ…⁉︎な、何言っているのよ、カイリ⁉︎私とアルト君はその様な関係じゃないわよ!」
「そうだぞ、カイリ。コイツには何度か高値の情報料売り付けられ…痛っ⁉︎」
事実を話しただけなのにガルナに足を踏まれ、睨まれた。
理不尽だ…。
しかし、高値の情報料と聞いて、カイリはガルナをジト目で睨んだ。
「お姉ちゃん…最低だね」
「盗賊紛いの事をしているアンタには言われたくないわよ⁉︎」
「ちょ!声大きいって!」
また姉妹喧嘩を始めてしまう二人。
…本当に仲がいいな。
だが、これではいつまでも洞窟に行けないと俺は息を吐き、声をかけた。
「おーい、ガルナ。そろそろ洞窟に行くぞ」
「えっ…?わ、わかった」
「洞窟…?」
洞窟という言葉に首を傾げたカイリに俺は説明する。
「実は鍛冶屋で銃を作って貰う為に西側の洞窟にあるパール鉱石を取りに行く所なんだ」
説明を聞いたカイリはそう、と考え始める。
そして、口を開いた。
「ねえ、私も行ってもいい?」
突然行くと言い出したよ。
「別に構わないが…どうしてだ?」
「パール鉱石って、レア鉱石よね?という事は高値で売れて…!」
…目がトレジャーハンターの目になってやがる。
「それに…さっき迷惑をかけたから、それも兼ねて手伝いたいの」
前者が最大の目的だと思うが…。
まあいいか。
「俺は構わないぞ。ガルナは?」
「…ハァ。断っても着いてくるだろうから、構わないわよ」
「じゃあ、少しの間だけど、よろしくね!アルト!」
「おう!」
俺はカイリと握手をして、俺達三人は西側の洞窟へ向かった…。




