新たな銃を求めて
鍛冶屋にたどり着いた俺は扉を開き、中に入った。
店の中には青色の髪の女性がいた。
「いらっしゃ…何だ、アルトか」
「何だとは客に対して随分とご挨拶な態度だな、クレア」
彼女はクレア・マーリン。
鍛治職人では珍しい女性鍛治職人だ。
「今日は一人なの?」
「メリル達はクエストを受けているんだ」
メリル達の事を話し、俺は店内に並べられている武器と店内を見渡す。
それにしても…。
「相変わらずガラガラだな」
「大きなお世話よ!」
揶揄う様に笑みを浮かべて、人がいないと、話すと彼女からツッコミが飛んでくる。
「…ハァ、それで今日はどう言った用で来たの?」
クレアに対してこうやって揶揄うのが楽しいんだよな〜。
そうしていると彼女は落ち着く様に息を吐き、用件を聞く。
「実はリボルバーガンが木っ端微塵になっちまってな。それで新しい銃を作って欲しいんだ」
リボルバーガンが木っ端微塵に壊れた事を知り、クレアは目を見開いて、驚いた。
「ハァ⁉︎リボルバーガンが木っ端微塵って…あれの耐久力は相当のモノだったはずよ!それが壊れるって…。アンタ、どんな使い方をしたのよ?」
「あー、相手の銃に破壊された」
どんな威力の銃よ、それ…、と彼女は呆れる。
そして、呆れながらも俺も目を見て話し出した。
「あのね…。武器や防具にも生命が宿っているのだから、大事に扱ってあげないと可哀想でしょう?わかっているの?」
「…わかってる。マジでごめんなさい」
「わかっているなら、宜しい!」
頭を下げ、謝罪の言葉を口にすると、クレアは笑顔になり、頷いた。
「それで?どんな銃が欲しいの?」
「エンゼッター並みの耐久値がある銃を作って欲しいんだ」
「それはまた難しい注文ね…」
取り出したエンゼッターを受け取り、彼女はエンゼッターの耐久値を確認する。
「うーん、これ程の耐久値の武器を作るには素材が足りないわね…」
やっぱり、そう簡単にはいかないか…。
エンゼッターを受け取り、足りない素材が何なのかを尋ねる事にした。
「ちなみに足りない素材って何なんだ?」
「銃の外見に必要なパール鉱石ね。それだけが不足しているの」
パール鉱石って…おいおい…。
「パール鉱石って、レア鉱石じゃなかったか?そんな高級な物を使って、作ってくれるのか?」
「じゃなきゃ、エンゼッター並みの耐久値のある銃なんて作れないわよ。…でも、困ったわね…。パール鉱石なんて、簡単に仕入れる事は出来ないし…」
うーん、パール鉱石がある場所さえわかれば、俺が取りに行くんだが…。
すると、鍛冶屋の扉が開き、客が入ってきた。
「クレアー!武器のメンテナンス終わってるー?」
店に来た客とはガルナだった。
ガルナに気づいたクレアは笑顔になった。
「いらっしゃい、ガルナ!勿論、終わっているわよ!」
「…おい、俺の時とは随分と対応が違うじゃねえか」
「そんな事ないわよ」
俺とガルナの対応の違いに文句を言うが、彼女は顔を逸らす。
「あれ、アルト君?奇遇ね、こんな所で」
「おう、ガルナ。お前もこのボロ鍛冶屋に武器のメンテナンスをしに来たのか?」
「ちょっと!アンタのだけ、値段を二倍にするわよ⁉︎」
「冗談だ」
冗談が通じない奴だな…。
まあ、そこも弄っていて面白いんだが…。
「まあ、そうね。アルト君はどうしたの?」
メンテナスが終わっている大型ランスを受け取り、ガルナはゴールドを支払いながら、俺に問いかけた。
「リボルバーガンが木っ端微塵になったから、新しい銃を作ってもらおうと思ってな。…それで作る為にはパール鉱石が足りないって言われたんだ」
「パール鉱石ねぇ〜」
それを聞いたガルナは右手の人差し指を顎に当て、考え始める。
数秒後、彼女の表情が何かを思いついた様な悪い笑みに変わる。
「…何だよ、その。とんでもない事を思いついた様な笑みは…」
怪訝な表情で彼女を見るが、彼女はその笑みを止めずに話しかけてくる。
「実は丁度、パール鉱石のある場所の情報を知っているのだけど…」
「マジか⁉︎何処だ!教えてくれ!」
教えてくれと頼み込んだ俺にガルナは手を差し出してきた。
掌を広げ、何かを欲している手だ。
…まあ、何を要求しているかは大体、予想がつくが…一応聞いてやるか。
「…何だよ、その手は?」
「嫌〜。知っているのだけどね、簡単には教えられないのよね〜。教えて欲しいのなら、それなりの対価ってモノを貰わないとね〜」
コイツ、此処で情報屋の本領を発揮してきやがったな…。
そのやり取りを見ていたクレアもざまぁみろ、と言いたげな笑みで俺を見てくる。
「…お前、良い性格しているな。悪い意味で…」
「あら、それなら、教えてあげなくても良いのよ〜?」
「だーもう!わかったわかった!ほらよ!」
背に腹は変えられないと俺は情報料をガルナに手渡した。
それを確認し、良い笑顔になったガルナは毎度あり、と声を上げ、情報を話し出した。
「此処から西側にある洞窟の奥にパール鉱石の目撃情報があったわ。私の情報や仲間で直接確認しに行ったから、確実情報よ」
「西側の洞窟だな…。わかった!クレア、取りに行って来るから待っていてくれ!」
「わかったわ」
情報を得た俺は早速、その洞窟に向かう事にしたが、ガルナに呼び止められる。
「アルト君、私も行くわ」
「え?何でだよ?」
「クレアにメンテナンスしてもらった大型ランスの振りも試したいしね。それにメリルちゃん達は別のクエストに行っていていないんでしょ?手伝ってあげるわ」
…流石は情報屋…そこら辺も筒抜けってワケかよ…。
「わかった。頼りにしているぜ、ガルナ」
「大船に乗ったつもりでいなさい!」
腕をぶつけ合った俺達は鍛冶屋を出る。
すぐにでも向かおうとしたが、ガルナが支度をしたいと走り去った。
勝手に行くワケにもいかず、俺は待つ事になった。
すると…。
「キャッ⁉︎」
「うおっ⁉︎」
突然、桃色の髪の女子が俺にぶつかって来た。
余程急いでいたのか、俺にぶつかって来た彼女は吹き飛ばされ、尻餅をついてしまう。
すぐさま、俺は尻餅をついている女子に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「い、いえ…こちらこそすみません。急いでいたモノで…」
彼女を立たせた俺は怪我はないか、と問い、大丈夫、と返された。
「で、では…急いでいるので!」
そう言い残し、彼女は走り去ろうとした…。
まあ、そう簡単に逃すつもりはいかないが…。
「そうか。それにしても…随分と内ポケットの中の石…大事なんだな?」
俺の発した石という言葉に疑問に思った女子は立ち止まり、内ポケットの中を弄り、掌サイズの石を取り出した。
「なっ…⁉︎これは…!」
「お探しの物はこれか?」
そう言った俺の掌には財布があった。
勿論、俺のだ。
俺の財布をポンポン、と低空で投げ続け、掌でキャッチする仕草を彼女に向ける。
「スリをするなら、もう少しわからない様にやった方がいいぜ?盗人さんよ?」
マズイ、と引き攣った顔をした彼女だが、すぐさま表情をただの笑顔に戻した。
「な、何を言っているのですか?私は何も…」
「そうか?あまりにも低レベルなスリ過ぎて…」
尚も惚ける彼女に俺はある物を見せた。
「そ、それは…!」
彼女の財布だ。
俺はぶつかった瞬間に彼女が俺の財布を抜き取ろうとしたので、瞬時に落ちていた石と俺の財布を代え、彼女の財布を抜き取ったのだった。
「ほらよ!」
俺は彼女に彼女の財布を投げ渡す。
それを受け取った彼女は俺をキッ、と睨み付けてくる。
「あ、貴方、何者…?今まで私から何かをスッた人なんていなかったのに…」
へぇー、スリに余程自信があったんだな。
こりゃ、自信を壊しちまったな…。
「俺か?俺は…」
「おまたせ、アルト君!」
そこへガルナが駆け寄って来た。
どうやら、支度は終わった様だな。
そして、ガルナの視線は俺から桃色の髪の女子に変わり、女子の方もガルナを見る。
すると、二人は同時にあー!、と声を上げ、お互いに指を指した。
知り合いだったのか…?
「ん…?知り合いなのか、ガルナ?」
知り合いかどうかを尋ねるが、彼女達は答えようとせず…。
「カイリ、アンタ何しているのよ⁉︎」
「お、お姉ちゃん…!」
へえ、彼女の名前はカイリと言うのか…。
って…カイリって子は何と言った…?
お姉ちゃんだって…?
「お姉ちゃん…?ガルナ、この子は何者なんだ?」
再び、尋ねるとガルナはゆっくりとこちらを向き、答えた。
「彼女の名前はカイリ・シリング…。私の、妹なの…」
ふーん、妹、妹なのか…。
……は?
「い、妹ォォォォォッ⁉︎」
俺の驚愕の叫びが、街に響いた…。




