冒険者登録
奥へと連れて行かれたマギウス達を待つ俺はこの場に残っているハルさんと話をしようとした。
だが、途中に奥からマギウスらしき悲鳴が聞こえるが、気のせいだろう…。
「それにしても亜人の子を仲間にするなんて…世間の目が痛いでしょう?」
「世間の目を気にして、冒険者なんてやれねえよ。それに亜人だろうが、人間だろうが、関係なく、接する事をモットーにしようと思ったんだ」
種族関係なく接すると言う俺の言葉にハルさんは流石ね、と返してくれた。
「それにハルさんだって、マギウスの事を受け入れてくれているじゃねえか。今のこの世の中、亜人と一緒にいるだけで追い出される店もあるってのによ」
「少なくともイズルリの街にそんな失礼なお店はないわよ。それに、彼が良い子と言うのは顔を見ればわかるから」
「流石は店主!見る目が違うな」
彼女を褒めるとフフン!、と胸を張って笑う。
さて…あの事についても聞いておかねえとな。
「ハルさん…〈モンスタードラッグ〉についての情報、何か入っているか?」
ハルさんは裏ルートとかにも詳しいから、〈モンスタードラッグ〉について何か知っているかを問いかける。
「ごめんなさい。結構ルートの深くまで探しているけど、情報は何もないわ」
ハルさんでも見つけられないとなると、相当ガードの高い物なんだな…。
〈モンスタードラッグ〉の存在はメルド様達やヴェイグ達騎士団やグレンやガルナ達にも話した。
騎士団の方で詳しく調べてくれるとヴェイグは言っていたが…。
それにあの一件には間違いなく、魔虎牙軍が関わっている。
と言う事は〈モンスタードラッグ〉の開発元は軍の奴等なのか…?
だが、それは逆に言うと軍が騎士団を凌ぐ程の戦力を得たと言う事になる…。
これはどうにかしないと近々、本当に戦争が起こるな…。
そう、考え事をしていると、俺を見つめているハルさんに気づく。
「何だよ?」
「アルちゃんは優しいからね〜。でも、あまり無茶し過ぎるのはダメよ。メリちゃんだけじゃなくて、今の貴方には沢山のお仲間がいるのだから」
ハルさんにも心配させちまっていたか…。
少し反省しないとな。
「勿論、私もアルちゃんの助けになるわ。だから、辛い時は私にも相談してね!」
「あぁ!ありがとな、ハルさん!」
全く…この人はこんな良い人だから、付き合いが困らないんだよな。
そう話していると奥からマギウス達が出てきた。
メリルとアイムはともかく、マギウスの奴は物凄く疲れた表情をしているな…。
そして、俺を見つけるや否、掴みかかってきた。
「アルト、テメェ!よくも見捨てやがったな!おかげで俺も未知の世界へ引き摺り込まれる所だったぜ!」
「よ、良かったじゃねえか!未知の体験をする事は良い事だぜ!」
「良くねえよ!」
そんなこんなで用事を済ませた俺達はブレス作成屋を後にしようとしていた。
「じゃあ、ハルさん。また何かあったら近いうちに来るよ」
「ええ、いつでも待っているわ!…アルちゃん、私との約束、忘れないでよね」
「了解だ!」
グッドポーズをハルさんに向け、俺は扉を閉めた。
外に出た俺達が次に辿り着いた場所は冒険者支援施設だ。
此処でアイムとマギウスを冒険者登録しておこうと思ったからだ。
扉を開き、俺達は中に入ると、何やら騒がしかった。
よく見ると一人の男が受付に立っていたルルさんに詰め寄っていた。
俺は近くにいた冒険者に問う。
「何かあったのか?」
「あの男がさっきからずっと、ルルさんを口説いているんだ。ルルさんは何回も断っているのに、聞かなくて…」
それはわかるが、何で誰も止めないんだよ…。
ハァ、とため息を吐いた俺は男に近づき、肩を持った。
「あのー、ルルさんも困っていますし、他の冒険者の人達にも迷惑になっているので、そこまでにしませんか?」
「アァ?何だ、お前?邪魔すんじゃねえよ!」
と、叫び俺の腕を振り払い、持ってきた酒瓶で俺の顔面を殴り付けた。
ビンは音を立てて、割れ、俺の殴られた部分から血が流れてきた。
それを見たルルさんは悲鳴を上げる。
当然、他の冒険者達も驚きの声を上げる。
「首突っ込むからそうなるんだよ、ガキが!」
不機嫌そうに息を吐く男…。
ってか、酒臭えなコイツ…。
酔ってんのかよ。
「テメェ!」
「やめろ、マギウス」
俺が殴られた事に怒ったマギウスが拳を握るが、俺が制止する。
「で、でもよ…!」
マギウスを止めた事を自身に敵わないからと勘違いした男は上機嫌になっていた。
「そうだ。お前等じゃ、俺には勝てねえからな。…それにしてもそこの金髪ちゃん、可愛いな〜。今日俺と遊ばねえか?」
鼻の下を伸ばしながら、メリルの頬を触れようとしたが、メリルはその手を振り払った。
「…申し訳ありません。お酒臭い人は大嫌いなので…」
メリルも俺が殴られた事に腹を立てているから、不機嫌そうだ。
しかし、手を振り払われた男はまた機嫌を損ね、メリルを睨む。
「ただの小娘が…お高く纏まってんじゃねえよ!」
そう叫び、彼女に平手打ちを浴びせようとした…のだが…。
その手を俺がガシッと掴んだ。
「おい…何してんだ、お前?」
腕を掴まれた事に対し、文句を言おうとした男に俺は声を低くし、ドスの効いた声で問いかける。
勿論、睨みつけも忘れずにだ。
「俺の仲間に手を出すとは…良い度胸だな」
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべつつ、俺は握る手を強めた。
ギリギリ、と音を立て始める男の腕…。
あまりの痛みだったのか、奴の苦痛の悲鳴が聞こえてくる。
「わ、わかった!すまねえ!離してくれ!」
謝られたので俺は勢い良く、男の腕を離す。
すると、男は俺を睨み、覚えてろよ〜!、とテンプレ感丸出しの言葉を残し、逃げ去った…。
俺が息を吐き、呆れているとルルさんに手を握られる。
「あ、ありがとうございました、アルトさん!あの男の人…しつこくって…!」
「無事なら良かったよ、ルルさん」
「それで、今日はどうしたんですか?」
「あぁ、アイムとマギウスの分の冒険者登録をして欲しいんだよ」
俺は冒険者支援施設に来た理由を話すとルルさんは笑顔で頷いた。
「わかりました!では、お二人の登録をするので、コンディションブレスをお貸しください」
ルルさんの案内に従い、アイムとマギウスはコンディションブレスを手渡し、ルルさんは慣れた手つきで登録書を作成していく。
そして、一分も経たずに終わらせてしまう。
「はい。登録完了しました!」
「相変わらず早いな。ありがとう」
彼女にお礼を言い、二人はコンディションブレスを受け取り、右腕に身につけた。
「これでお前等も正式な冒険者だな!がんばろうぜ!」
今現在、俺のレベルは40、メリルのレベルは35、アイムのレベルは30、マギウスのレベルは38だった。
「では、冒険者となったお祝いと言っては何ですが…実は良いクエストがあるんです」
良いクエスト…?
ルルさんは俺達にクエストの依頼書を見せてきた。
「何々…?《ウリイノシシ》討伐?…三十体討伐で討伐資金が六万ゴールドか…」
言い忘れていたが、ゴールドがこの世界の通貨になっている。
「確かに良いクエストだな」
「受けようぜ、アルト!」
「…それなら、お前等三人で受けてくれ。勿論、報酬も三人の山分けでいいからよ」
俺がクエストに乗り気ではないので、メリル達が首を傾げる。
まあ、冒険者なら、すぐに受けるほどのクエストだからな。
だが、悪いが、俺にはやる事があるんだよな〜。
「どうした?他に何か用があるのか?」
「…あぁ、前回の戦いでリボルバーガンが木っ端微塵になっちまったからな。新しい銃を作って貰いに鍛冶屋に行こうと思っているんだ」
俺の話を聞いて、メリルはキリヤ達について思い出し、険しい顔つきになるが、アイムが彼女の手を握り、落ち着かせる。
「そうか…。じゃあ、俺達三人はクエストに行くが…一人で大丈夫か?」
「問題ないぜ。ただ銃を作ってもらうだけだからな。メリル、二人を頼んだぞ」
「任されました!」
メリルの敬礼を確認した俺は微笑み、クエストを彼女達に任せ、冒険者支援施設を後にした。
俺は鍛冶屋まで向かう。
しかし、そんな俺を見ている者の姿があった事に気がつかなかった…。




