亜人との共存
俺達は帝都ガイールに着いた。
馬車から降り、街にへと足を運ぶ。
城を目指し、歩いているとマギウスが珍しそうにお〜!、と声を上げながら、辺りを見渡していた。
「マギウスお兄ちゃん、煩い」
「お前は田舎から都会に移住してきた奴かよ…」
俺達まで田舎者に見られるのでやめろと、言うとマギウスは悪い悪い、と笑みを浮かべて謝る。
「それにしても…」
周りから、俺達…嫌、マギウスに向けられる嫌悪の目に嫌気が刺してた様に目を細め、息を吐くメリル。
この国でも亜人は良く思われていないのだろう。
確かに俺もいい加減この視線にはウンザリしていた。
まあ、この視線を向けられる事は予測済みだったがな…。
向けられ続ける嫌悪の目を無視し、城の前まで辿り着いた。
さてと、本題は此処からだが…。
「お待ちください」
城の入り口…その門の前を守る門番の男二人に俺達は止められた。
「此処から先は…」
「すみません。俺は可能の星のリーダー、麻生 アルトです。メルド様にお話があって来たのですが…」
俺自身の事を話すと二人の騎士は耳打ちで話し合い、頷いた。
「かしこまりました。貴方方はお通し出来ますが…」
二人の門番の視線はマギウスに向く。
…大方、亜人であるマギウスを城には入れたくないんだろうな…。
「…仕方ねえ。俺は此処で待っているから、行ってこいよ、アルト」
「バーカ、お前も連れて行かないと意味がないんだよ。それに俺達と一緒にいないと何されるかわかったもんじゃねえぞ」
マギウスの出した提案を拒否し、俺はどうやって城の中へ入るか、考える。
「あれ?アルト?」
そこへ、門が軽く開かれ、リフィルが顔を出した。
これはナイスタイミングだ!
「騒がしいと思って、覗いてみたら…何してるの?」
「実はメルド様に話があって来たんだが、俺の仲間の一人が城に入れなくてな…」
話を聞いたリフィルはマギウスを見る。
ふーん、と納得した彼女は視線を門番の二人に向ける。
「いいわ。そこの人も通してあげて」
「で、ですが王女様!」
「…私が良いって言っているのだけれど…?」
通せという言葉にさえ、反論しようとする門番に呆れ、リフィルはキッ、と睨みつける。
彼女の睨みに門番の二人はビクリ、と身体を震わせる。
「か、かしこまりました!」
「ど、どうぞ、お通りください!」
門番の二人によって、門が開き、俺達は城の中へと入った。
中へと入った俺達はリフィルと向き合う。
「助かったぜ、リフィル。あのままじゃ、入れなかったからな」
「このぐらいお安い御用よ。…それにしても…」
感謝の言葉を述べた俺にニコリ、とした笑顔を向けた後、視線をマギウスに向ける。
視線に気づいたマギウスは緊張しているのか、息を呑んでいた。
「あ、えっと…。先程はありがとうございました!」
完全に縮こまっているな、マギウスの奴…。
それを見て、俺とメリルは笑いを堪えていた。
しかし、マギウスから笑うな!、という視線を向けられるが、今の彼からその目線を向けられても説得力がない。
「…貴方、鬼族?」
「は…はい。正確には生き残りですが…」
自分は鬼族の生き残りだと話すとリフィルはそう、とだけ返し…。
「えいっ!」
「…⁉︎」
勢い良く、マギウスの頭に生えている二本のツノを握った。
彼女の行動にはマギウス本人だけでなく、俺達も困惑する。
「お、王女様…⁉︎」
「これが鬼族のツノ…凄い!」
「えっ…?」
何故か、物凄く興奮していらっしゃるリフィルさん…。
そんなに鬼族のツノって珍しいか?
…嫌、鬼族は本来なら滅んでいたんだったな…。
「絵本とかでは見た事があるけど、本物を見るのは初めて!それに握っちゃっているわ、私!」
「え、ちょ…!アルト!助けてくれー!」
どうすればいいのかわからず、マギウスは困り顔で俺に助けを求めてきた。
…仕方ねえな…。
「おーい、リフィル。マギウスも困っているから、話してやってくれないか?」
「マギウスって言うの⁉︎格好いい名前ね!」
…聞いてない。
結論、無理だ。
「…ごゆっくり」
「おい!諦めないでくれよ!…メリル!」
「オシロノナカキレイデスネー」
メリルにも助けを求めるが、完全に棒読みで言葉を発し、目線を合わせようとしなかった。
「お前もかよ⁉︎…アイムちゃん!」
「…ファイト」
アイムにも助けを求めたが、両手で拳を握り、ガッツポーズを見せられただけだった。
「お前等ァァァッ‼︎」
マギウスの叫びが響く。
結局、リフィルがマギウスのツノから手を離したのは十数分後の事だった…。
「…見苦しい所を見せて、申し訳ないわね、マギウス…」
「…い、いえ…」
十数分後、我を取り戻した様にリフィルが冷汗をかきながら、謝り、マギウスも疲れながらも、大丈夫です、と返した。
…そんなこんなありながら、俺達は王座の間の前に辿り着いた。
帝都ガイールの王と王女に会う事に緊張しているマギウスは軽く身体を震わせていた。
そんな彼の緊張を解す為、俺は彼の背中を叩き、ニィッ、とした笑顔を見せると、彼も少し深呼吸をして、笑顔になった。
マギウスの緊張が解れた所で、俺は王座の間の扉を開き、俺達は中に入った…。
部屋の奥にはメルド様とリィル様が王座に座っていて、道の端には貴族や公爵達もいる。
俺達はメルド様達の前まで歩く。
だが、やはり、マギウスに向けられる嫌悪の視線…。
これは周りの貴族や公爵達から向けられていた。
その視線を気にせず、メルド様達の前に着いた俺達は膝をつき、頭を下げた。
「お久しぶりです、メルド様。リィル様」
「うむ。ようこそ、アルト殿。…して、今日はどの様な用件で参ったのだ?」
「実は…」
俺は横目でマギウスを見る。
すると、メルド様の視線もマギウスに行く。
「その者は?」
「俺達の新しい仲間です。…マギウス」
挨拶をする様に彼の名を呼んだ俺にマギウスは頷き、彼は膝をついて、頭を下げた。
「初めまして、メルド様、リィル様。俺はマギウス・ゼルスと言います」
「…貴方は…鬼族…ですか?」
マギウスのツノを見て、鬼族だと理解したリィル様は興味深そうにマギウスを見る。
周りの貴族や公爵達はザワザワ、と話し始める。
「鬼族は過去に滅んだと聞いていたが…生き残りの方がいたとは…。して、仲間というのは?」
「…そのままの意味です。俺はマギウスを仲間として迎え入れたいのです」
マギウスを仲間として迎え入れたい…。
その言葉を聞いたメルド様の眉が動く。
当然、亜人は見下される世の中だ。
…それを奴隷等ではなく、対等の仲間として迎え入れると聞けば、驚くだろう。
現に周りからは対等に接する事に反対の声が聞こえてくる。
「ふざけるな!」
「亜人風情と対等に接するなど、どうかしている!」
彼等の言い分にはメリルとアイム、リフィルは嫌気がさし、睨みつける。
そして、ついには言ってはいけない事を言う。
「もういい!誰かあの鬼を引っ捕らえろ!」
王の前だと言うのに、よく勝手な指示を出せたな…!
だが、思い通りにさせるかよ!
俺はマギウスを守る様に立つ。
「…皆さんは亜人に対してよく思っていないのでしょう。それは俺も重々承知しています。…ですが、俺はもう、マギウスを仲間として迎え入れると決めました…。だから、彼は俺が守る。彼に手を出すって言うなら…容赦はしないぞ‼︎」
貴族や公爵達を睨みつけ、俺は言い放った。
俺の怒号に彼等はビクリ、と怯え、何も言えなくなった。
「アルト…」
貴族達を敵に回しかねない行動を取った俺を驚いた顔で見るマギウス。
そんな彼に笑いかけると、俺は再び、メルド様達を見る。
すると、お二人はクスリ、と笑った。
「…貴族や公爵達を敵に回してでも、仲間を守ろうとするその姿勢…感服しました」
「よくぞ言ってくれた、アルト殿…。マギウス殿、良き仲間を持ったな」
マギウスに対して優しく微笑みかけるメルド様達にマギウスは頷いた。
「はい。俺には勿体ない人達です!」
笑い合ったメルド様達とマギウス。
すると、メルド様は王座から立ち上がり、皆に言い放った。
「彼等の動きに私も決意した!これから帝都ガイールは亜人共存の制度を始める!亜人をあしらう者がいれば、即座に処罰を与える…忘れるな!」
簡単に言うと亜人を傷つけるなと言う事だ。
「アルト殿。…これからソナタがどの様な亜人を仲間に率いれても構わない。だが、彼等を裏切る様な真似をすれば、私自ら、ソナタを斬り捨てる。…約束して欲しい」
「…この身に誓って、お約束します!」
メルド様と約束した俺達は王座の間を後にし、俺達はイズルリの街へ戻ろうとする。
見送りに来てくれたリフィルに挨拶を済まし、俺達は馬車へ乗り込み、発進した…。
「良かったですね、マギウスさん!これで問題なく、一緒にお仕事が出来ますね!」
「まあ、全ての人が亜人を良く思わないと思うが、気にせずやっていこうぜ!」
メリルと俺の言葉に頷いたマギウスはニカッ、と笑みを浮かべた。
「おう!これから、宜しく頼むぜ!」
「こちらこそ!」
俺とマギウスは拳をぶつけ、笑い合った…。
ある森にキリヤとアナトスがいた。
アナトスはキリヤの傷を癒し、傷が癒えたキリヤは立ち上がった。
「…麻生 アルト…。アイツをみくびっていたぜ。案外面白い奴じゃねえか」
「イネスさんが目をつける程あるわね…」
ククク、と笑いながら、キリヤは俺の事を思い出し、拳を握る。
だが、笑みを止め、彼はアナトスへ視線を送る。
「…アナトス。例の〈モンスタードラッグ〉とかいう薬について調べてくれねえか?」
「…どうして?その件は貴方には関係ないはずよ」
首を傾げ、彼を見るアナトス。
そんな彼女にキリヤは答えた。
「胸糞悪いのは嫌いなんだよ…。それも俺の邪魔をするモノは特にな」
彼の答えを聞いたアナトスは呆れ顔で軽く息を吐く。
「…わかったわよ。あまり期待しないでよね」
そう言い残し、彼女はその場を後にする。
それを見送ったキリヤは空を見上げる。
「イイゼ。麻生 アルト…。お前が光でい続けると言うなら、俺が闇で包み込んでやる。闇は…何処まで行っても光に変わらない事を教えてやるよ…!」
空に向けて拳を突き出し、ニヤリ、と笑ったキリヤ…。
光と闇…。
俺とキリヤ…。
二人の転移者の戦いの火蓋は此処から始まるのだった…。




