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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第四章 赤雷の鬼編
50/174

真実


《イグニッションオーガ》、キリヤと連戦を終えた俺達はエルの村へと戻って来た。


俺たちの帰還に村人達は笑顔で駆け寄り、エルの母親も目に涙を浮かべながら、エルを抱きしめると、エルも目を覚まし、母親を抱き返した。


母さんか…。

俺の前世の両親は既に他界しているからな…。


物心ついた時にはもう施設で育てられていた…。

だから、親の愛情というモノをあまり知らない。


…なので、少しエル達が羨ましく見えた。



エル達の家へ戻った俺達。

アイムは母親に治癒の花を手渡し、彼女はそれを調合して、薬を作った。


その薬を父親に飲ませると、苦しんでいたはずの彼が落ち着きを取り戻した。

安らかに眠っている…。


「上手くいったのでしょうか?」


「…恐らくはな」


そう呟き、コンディションブレスを彼に向けると病名は記載されていなかった。

つまり、治ったという事だ。


「病名が記載されていない。完全に治ってる」


「ホント⁉︎」


微笑みながら、エルにそう告げると彼女は目を輝かせ、喜び、母親に抱きついた。


その母親も目元に涙を浮かべる。

しかしそれは嬉し涙だ。


「お兄ちゃん達、ありがとう!」


「本当に…何とお礼を申し上げればいいか…!」


「暫く安静にしていれば、目が覚めると思いますよ」


そんな彼女達にメリルは微笑む。

俺もクスリ、と笑ったが、マギウスに肩を掴まれた。


振り返り、マギウスの表情を見て、察した俺は頷く。


「すみません。少し話があるので失礼します」


エル達にそう伝え、俺達は家を出て、村の外れまで来る。

そして、俺はこの世界に転移した事を話し出す。


「俺の本当の名前は麻生 或都。地球という星に暮らしていた高校二年だ」


「本当の名って…」


「漢字だ、漢字」


「あぁ、成る程」


ってか、この世界、漢字で通じるんだな。


「地球?高校二年?聞き慣れない名前だけど…」


「…当然さ。あのキリヤが話した通り、俺は異世界から転移して来たんだ。このラインバルクにな」


「その異世界転移って…違う世界から来るってヤツだよな?誰かに転移させられたのか?」


…正直メリルはともかく、ここにいないイネスの事は話していいのだろうか…。

そう考え、メリルを見ると、彼女は頷いた。


良いって…事だよな?


「俺は女神、イネスの手によってこの世界に転移させられたんだ。そして、この世界に来た俺はこの世界で暮らす為に冒険者になった」


「…メリルお姉ちゃんは?」


俺についての話が終わり、今度はメリルについて話を聞こうとする。


「私は…駆け出しの女神です」


「女神って…イネスってのが、女神だったんじゃないのかよ?」


「イネスさんは私の上司なのです。それで私は立派な女神となる為、アルトさんと共にこの世界へ舞い降りたのです」


「メリルお姉ちゃんが女神…見えない」


「それ、俺も思った」


「酷いです!お二人共!」


アイムとマギウスの言葉に涙目になるメリル。

実際、初見で女神だと言われても無理があるだろうがよ。


「アイム、マギウス。つまり、俺とメリルはこの世界にとってイレギュラーな存在なんだ。…これからはあの夕暮 キリヤ達の様な奴等が敵として立ちはだかって来るかもしれない。…それでも、一緒に戦ってくれるか?」


彼女達の目を見て、俺は問いかける。

正直、異世界の問題にアイム達を巻き込む必要はない。


…でも、俺は…。


「…例え、マスター達が異世界の人間でも…仲間。私はマスター達のおかげで今ここにいる」


「そうだぜ。それにお前達がイレギュラーな存在でも、違う世界の俺達の為に戦ってくれているじゃねえか。…俺もアイムちゃんもお前達を見捨てる様な事はしねえよ」


「お前等…」


ヤバイ、嬉し過ぎて泣きそうになってくるぜ…。

俺の横にいるメリルは既に目元に涙を浮かべている。


俺とメリルはお互い見あって、微笑み合う。


「じゃあ、これからもよろしくな、アイム!マギウス!」


「はい」


「おうよ!…ん?」


返事したはずのマギウスが首を傾げる。


「なあ、さりげなく俺がお前等のキルドのメンバーの様な言い方だが…いいのか?」


「…あぁ、その事だな」


俺は息を整え、再びマギウスに視線を合わせる。

これは言っておかなきゃならねえからな。


「マギウス、頼みがある。俺達の仲間になってくれ!」


「…いいのかよ?俺は亜人だ。亜人が人間にどれだけ嫌われている存在か、知らないワケじゃないだろ?」


…確かにそうだ。

マギウスが加入した事によって、俺達も嫌われの目で見られる可能性がある。

それでもだ…!


「亜人とか、人間とか関係ない!お前は俺達を信じてくれた!俺にはお前の力が必要なんだよ」


「アルト…」


俺は右拳を突き出す。

…断られても構わない。マギウスにはエル達の村を守る使命もある…。

言う事は言った…後は結果次第だ…!


俺の突き出した拳を見て、マギウスは悩み込んだ。

俺達と共に行くか、それともこのまま村を守る為に生きるか…。


「行って、マギウスお兄ちゃん!」


そこへエルの声を聞こえ、俺達は声の方を見ると父親に肩車されていたエルとその手を握る母親、それからあの村の村人達だった。


「みんな…」


村人達を見渡すマギウスの表情は驚きに満ちていた。


「貴方には何度もお世話になりました。…貴方のおかげで私達は未だこうして生きています」


「しかし、この村は我々の村だ。…これからは我々の手で守っていく。もう君は必要ない」


「ちょっと、それは…!」


口を開いた父親の罵倒に近い言葉…。

それを聞いたメリルが言い返そうとしたが、言葉の真意に気がついた俺が彼女を止める。


「これからもマギウスお兄ちゃんに頼っちゃうかも知れない…。だから、マギウスお兄ちゃんには出て行って欲しいの!」


「我々だって、強いんだ。…君は君の行きたい道へ行きなさい」


「今まで、ありがとうございました!」


村人達が一斉に頭を下げた。

まるで出て行けと言う様な言い方だが、マギウスは目に涙を浮かべていた。


しかし、その涙を堪え、馬鹿にする様な笑みを浮かべる。


「本当に大丈夫なのか?ヘナチョコのお前等が生き残れるほど、甘い世界じゃないぜ?」


そのマギウスの言葉にムッ、となったエルは彼に右ストレートを叩き込む。

当然、マギウスに受け止められた。


「弱いぞ、エル。もう少し力を込めないとな。…でも、誰かを守りたいって想いは籠ってる…。しっかりとした拳だ」


「お兄ちゃん!」


罵りながらもマギウスはエルの頭を優しく撫でるとついにエルは泣き出してしまい、マギウスに抱き付く。


「エル…!」


そんなエルをマギウスも抱き返した。

今の光景を見て、村人達やメリルは目に涙を浮かべ、俺とアイムは見合って微笑んだ。


エルから離れたマギウスは俺を見る。

そして、拳を突き出した。


「アルト…もうコイツ等に俺は必要ない。だから、俺をお前等のギルドの仲間にしてくれ!」


突き出した拳を見て、俺はフッ、と笑い俺も拳を突き出し、ぶつけ合った。


「歓迎するぜ、マギウス!」


こうしてマギウスという新しい仲間を加えた俺達…。

その日はエル達の村で一夜を過ごす事になり、パーティーが行われた…。





翌日…。


俺達は村を後にしようとしていた。


「それじゃあ、みんな…。行ってくる!」


「お気をつけて」


「今までお世話になったね」


エルの両親と握手をし終えたマギウスはクスリ、と笑う。

そして、最後に彼の視線はエルに向く。


「俺が居なくなって、寂しくなって泣くんじゃねえぞ?」


「エル子供じゃないもん!お兄ちゃんこそ、泣かないでよね!」


笑い合う二人…。

それはまるで本当の兄妹の様に見えた。


「…お兄ちゃん」


「ん?どうした?」


「いつでも帰ってきてね。…ここはお兄ちゃんの故郷でもあるし…お兄ちゃんは、大切な家族なんだから」


家族…その言葉を聞いた彼は涙ぐむが、直ぐに顔を逸らした。

恐らく、泣いている姿を見られたくないのだろう。


「帰ってきた時に村が滅びていたとかはやめてくれよ!俺の大事な故郷なんだからよ!」


涙ぐんでいたマギウスの言葉に、村人達は大きく頷いた。

それを確認した俺達は馬車に乗り込み、発進した。


村人達が分かれの言葉を叫びながら、手を振ってくる。

メリルやアイムはそれに返して手を振る。


「またな、みんなー!元気でなー!」


マギウスも腕を大きく振りながら、叫んだ。

いずれ彼が村へ戻った時が楽しみだ。


「良い人達だな、お前の家族は」


「あぁ!」


笑顔で大きく頷いた。

そのマギウスの笑顔を見て、俺は心の中で決心を固める。


さて、此処からが本当の勝負だ。

これによって俺達のギルドの存在が大きく変わる…。


慕われるのか、嫌われるのか…。

どっちだろうと俺はもう立ち止まらねえ…!


後は…あの人を信じるしかねえな…。



俺達は馬車に揺られ、帝都ガイールへ向かった…。


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