初依頼
森の茂み…。
ここには多くのモンスターが生息している。
そして、同時にこの付近には人間が暮らす村も存在している。
今、複数の狼がその人間の住む村に向かって、走っていた。
人間を狩る為…。
食事を得る為…。
狼達はただ真っ直ぐ突き進んだ。
しかし、先頭を走る二体の狼が吹き飛ばされた。
後方を走っていた狼達は何事かと、立ち止まると彼等の前には腰にチェーンを巻き、紺色の短髪を少し揺らし、頭には二本のツノがある男を見た。
その男は狼達を見ても怯えずに身構える。
握った両拳は電撃を纏っている。
仲間をやられた事に苛立った狼達は一斉に男に襲い掛かった。
しかし、男は怯みもせず、狼達を迎え撃ち…数秒後、辺りには電撃が起こり、狼達だけが倒れ、その男は仁王立ちしている。
全て狼を倒した事を確認した男は軽く息を吐いた。
「アイツ等には…絶対に手は出させねえ…」
それだけ呟いた男は暗い森の中へと入っていった…。
ーー朝というのは一日の始まりで必ず訪れるモノだ。
学校に行く者、仕事に行く者…。
様々だが、一日の行事を行う為、朝目覚めた者は身体を整え、学校や仕事場に向かう。
そして、一日の開始で力を蓄える為に必要なモノ…朝食だ。
中には寝坊して、朝食を抜く者もいるが、気を付けて欲しい。
朝食を食べないという事は頭の回転など衰える可能性があるという事だ。
だから、俺は前世でも必ず朝食が取っていた。
そして、この世界…ラインバルクでも…。
ギルドホームが完成してから一週間…。
俺はキッチンで朝食を作っていた。
卵とベーコンを焼く音がキッチンに響き、トースターにトーストを入れている。
…ってか、この世界にトースターがあった事に驚きなんだが…。
ちなみに、生活器具はみんなとパーティーをやった翌日に俺とメリル、アイムで購入した。
「さて、と…後はサラダの準備だな」
ベーコンエッグが完成し、サラダの調理に取り掛かろうとしたその時、アイムが起きて来た。
「おはよう、マスター」
「おう!おはよう、アイム…メリルはどうした?」
アイムとメリルは同じ部屋のはずだが…。
「メリルお姉ちゃんは起こしたのだけれど、あと五分と言って、起きない」
あのバカは…。
「アイム、サラダの調理を任せても良いか?俺はあの駄女神を起こしてくるからよ」
「了解。やり過ぎない様に」
「善処するよ」
サラダの調理をアイムに任せ、俺はメリルの部屋へ向かい、ドアをノックする。
ノックせずに部屋を開けて、メリルが着替え中という下手なラッキースケベは起こさないからな、俺は。
「メリルー、入るぞ!」
三回ほどノックしても返事がないので、部屋に入ると、ベッドで眠っているメリルを見る。
「おい、メリル。起きろ、朝だぞ!」
彼女の肩を揺すって、起こそうとするが、ムニャムニャ、と言いながら、寝返りを打つ。
さらに…。
「ヌアーッ!」
「ブッ⁉︎」
謎の声を上げながら、俺の顔面に裏拳を決めてきやがった。
裏拳を決めた本人は何事もなく、スヤスヤ、と眠っている。
それに俺はイラッとして、右手に電撃を纏わせ…。
「良い加減に起きやがれ、この寝坊助駄女神がぁぁぁぁっッ‼︎」
「イヤァァァァァッ⁉︎」
バチバチ、という電撃音、俺の叫び声、メリルの悲鳴が同時にギルドホーム内に響き渡った。
「よし、出来た!」
それと同時にサラダが完成した様だ。
それから数分後…。
漸く、食卓に揃った俺達は朝食を食べ始めた。
電撃を受けたメリルはプスプス、と身体中が焦げていたが、知った事か。
「このベーコンエッグ…美味しい」
トーストにベーコンエッグを乗せ、笑顔で頬張るアイム。
どうやら、彼女は俺の作る料理が好物となった様だ。
俺は珈琲を飲みながら、届いた連絡紙を読む。
連絡紙と言うのは簡単に言えば、新聞だ。
連絡紙には軍の動きについて乗っていた。
最近、軍にはよくない噂が出ている。
騎士団との衝突も時間の問題、か…。
「それにしても…依頼が来ませんね…」
深く溜息を吐きながら、メリルは呟く。
確かに、便利屋ギルドを結成してからここ一週間…。
全くと言って良い程、依頼が来ていない…。
この一週間はほとんど、冒険者支援施設に出向いて、クエストを行いっていただけだ。
いい加減来て欲しいモノだが…。
「まあ、立ち上げ当初ってのはこんなもんだろ。…気長に待っていようぜ」
…と俺は前向きに言い、珈琲を飲む。
「…でも、いずれ余裕もなくなって、倒壊する」
アイムの一言に俺は珈琲を吹き出してしまう。
それは前にいたメリルにかかってしまう。
「お、お前は突然、何を言うんだ、アイム⁉︎」
「…依頼が来ないとギルドを立ち上げた意味がない」
土正論の返をしながら、アイムはメリルにハンカチを渡す。
言っている事は最もだが…!
「仕方ねえだろう?…便利屋ってのは依頼人を待つしか方法がねえんだからよ…」
珈琲を飲み干し、俺も息を吐いた。
…すると、チャイムが聞こえる。
依頼人か…?
俺は入り口のドアを開くと前には男が立っていた。
「何か依頼ですか?」
「お…鬼を…鬼を倒してくれ!」
「鬼…?」
取り敢えず、依頼の内容を詳しく聞く為に俺は彼を中へと招き、お茶を出した。
「それで…その鬼というのは?」
鬼という言葉に俺は首を傾げる。
すると、アイムが語りかけて来た。
「鬼というのは亜人の一種です。二本のツノを持ち、凄まじい力を持つ存在と聞きます。…ですが、鬼族は過去に滅んだはずですが…」
「その鬼族の生き残りがいたという事ですかね?」
恐らくはメリルの考え通りだろうな…。
鬼の事は置いておき、俺は男の話を聞く事にした。
「実は数週間前…私達の村に鬼が現れたんです」
鬼、か…。
「その鬼が…村の住人を殺害し…村は滅びました…」
じゃあ…この人は村の生き残り…。
「私の愛すべき妻も…娘も…!全て、鬼に殺されたんです!お願いです!まだ付近にはたくさん村があります!奴を野放しにしていれば、必ずまた、多くの被害が起こります!」
男は俺の手を握り、訴えかけて来た。
家族や村の知り合いを失い…わざわざここまで来たんだな…。
「わかりました。その依頼、受けましょう。…すみませんが、鬼が出現する場所をお教えして貰えますか?」
男から場所を聞いた後、男はイズルリの街で休む事になった。
取り敢えず、俺達は早急に準備している。
皆殺しか…。
その鬼…許せねえ…!
準備を終えた俺達はその問題となる場所に向かった…。




