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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第三章 帝都ガイール編
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可能の星《ポッシブル・スター》


イズルリの街に戻って来てから数週間後…。


16(シックスティーン)…いや、アイムも俺達に打ち解け、共にクエストや依頼などをこなしていた。


しかし、この数週間で思った事はアイムが完全に妹キャラとなった事だ。


出会った頃の命令だけを聞く存在でなくなったのは嬉しい事だが、メリル達をお姉ちゃんと呼ぶ様になったり、たまに俺が寝ているベッドに潜り込み、添い寝して来たりと大変だ。


だが、同時に笑顔を見せる事も多くなった。

まだ稀に無愛想の時もあるが笑ったり、喜んだりする様になっている。


街中でも人気者になっているしな…。

しかし、懐いている者には笑顔を見せる反面、人見知りを全開に発動し、懐いていない者を目の前にすると俺やメリルの背後に隠れてしまう。


…本人曰く、元々人見知りなのを無理をしていた様だ。

無理って…それでよく、ザイガンの谷で通行人に攻撃を仕掛けられたな…。


さて、今日はついに俺達のギルドホームが完成する日だった。

今、俺達はギルドホームの場所まで向かっている所だ。


「ついにギルドホームが完成したんですね!」


「数週間で出来上がったって事は、相当な腕の大工が作業に携わったんだな」


期待に胸を膨らませる俺達…。

暫く歩いていると、巨大な家が見えて来た。


アレが…俺達のギルドホームか…?


って、よく見れば、ギルドホームの前に複数の人がいる。


ギルドホームの前にいたのは大工らしき人達とガルナ、ルルさん、ヴェイグ、グレン、ルークさん、ギル隊長と共にアクアースへ向かった騎士達、それからリフィルだった。


「あ、来た来た!」


ガルナが俺達に気付き、手を振ってくる。

それを返す様にメリルも手を振る。


みんなの前に着いた俺達は彼等にこの状況を問う。


「みんな、これは一体…?」


「それじゃあ、みんな!せーの!」


「「「三人共、ギルド結成おめでとうー!」」」


パ、パ、パン!、とクラッカーが鳴らされ、みんなが後ろに下がるとそこには白いテーブルに大量の料理とケーキがあった。


突然の出来事に俺とメリルは状況が掴めず、困惑する。

すると、ヴェイグ達がクスリ、と笑いながら、説明を始める。


「驚かせてすまない。実は君達のギルド結成記念として勝手にパーティーの準備をさせてもらったんだ」


「アルトさんにはお世話になりましたので!」


「みんなで用意したんだぜ!」


ヴェイグ、ルルさん、グレンの順で説明される。

みんなの想いに俺達は嬉しさに包まれた。


「ちなみに提案したのはアイムよ」


リフィルの言葉に俺とメリルの視線はアイムに向く。

その彼女はというと、照れているのか、頬を赤く染め、下を向いている。


「マスター達には…お世話になったから…」


その言葉を聞いて、メリルは我慢できなくなったのか、嬉し泣きしてしまいアイムに勢い良く抱きついた。


俺も嬉しさがいっぱいになり、アイムの頭を撫でた。


「ありがとうな、アイム。最高の祝いだ!みんなもわざわざありがとう!」


そして、パーティーの前に俺達はギルドホームに入った。


結構な大きさで二階建ての一軒家だな…。

これなら十人程、問題なく住める広さだ…。


リビングに自室、キッチンにトイレ…それからメインとなる依頼室…。

これだけ揃っていれば充分過ぎる出来だ。


ギルドホームを堪能した俺達は外に出て、パーティーを始めた。


「それでは、僭越ながら俺が乾杯の挨拶をさせてもらうぜ!」


「どうして貴方なのよ?」


「ここはアルトでしょ、普通…」


「冷たいな二人共⁉︎」


酒の入ったグラスを持ち、乾杯の挨拶をしようとしたグレンにガルナとリフィル冷たくツッコミを入れる。


「アルトさん!」


メリルに呼びかけられ、俺が前に出ると、みんなの視線は俺に向く。

俺はみんなを見渡した後、息を吐き、話し始めた。


「えーっと…みんな!今日は俺達のギルドホーム完成を祝ってくれて本当にありがとな!まだまだ至らない点はあるが、ギルドになったからには恥じない様な活躍を見せる!だから、これからもよろしくな!…じゃあ、乾杯!」


乾杯、という言葉と同時にグラスを突き出すとみんなも乾杯と言い、グラスを突き出し、パーティーは始まった。


みんな、ここぞとばかりに楽しんでいる。

ガイールで飲み比べをしていたグレン、ギル隊長、ルークさんはまたもや飲み比べをしている。


しかし、そこにヴェイグも参加し、三人を圧倒していた。

…やるな。


ガルナは何とか、アイムに気に入られようとしていたが、逆に警戒され、アイムはルルさんの背後に隠れ、ルルさんは苦笑している。


騎士達や大工達も騒ぎながら、酒を飲み、食事を口にしている。


この世界に来た時はメリルと二人だったが、今ではこれだけの人達に囲まれている…。

決して、この世界が嫌いだったワケじゃない。


だからこそ、この世界の人達がもっと好きになったんだ。

同時に守るモノも増えてくるな。


「アルトさん、アルトさん!」


物思いに耽っているとメリルに呼ばれ、俺は我に帰る。


「どうした?」


「私達も飲み比べしましょうよ!」


コイツ…意地でも酒が飲みたいのかよ…。


「ダメだ!お前は酒飲むと後が面倒な事になるからな」


それを拒否した俺を不機嫌そうに頬を膨らませて、メリルは睨みつけてくる。


すると、そこへリフィルとアイムが来た。

…アイムの息が切れている事については触れないでおこう。


「楽しんでる、二人共?」


「あぁ、どの料理も美味いぞ」


「この料理の大半はアイムが作ったのよ」


いつの間にそんな事を⁉︎、と俺はアイムに視線を送る。

そのアイムは頬を赤くさせている。


「リフィルお姉ちゃんに…教えてもらった…」


「そうか!リフィルもアイムもいいお嫁さんになりそうだな」


「お、お嫁ッ…⁉︎」


俺の発言にリフィルは顔を茹で蛸の様に真っ赤にさせる。

横にいるアイムはボーッと俺を上目遣いで見る。


「マスターは…お嫁さんが欲しい?」


「ん?そりゃまぁ…いつかは欲しいな」


前世では彼女すらいなかったからなぁ。

すると、アイムはスッと俺の手を握った。


「私でも…マスターのお嫁になれる…?」


……何を言っているのかな、この子は?


「あ、えーっと、アイム?お嫁さんってのは、好きな人との間でなるって事だ」


「マスターは私が嫌い?」


そっちの好き嫌いじゃない。


「い、いや…そういう意味じゃなくてだな…!」


「私…身体は機械だけど…子供も産める」


待て!何か、アイムが怖いんだが⁉︎

そして周りの視線も痛い!


「何やってんだよ、アルト?」


そこへ酔いから覚めたグレンとヴェイグ、ルルさんとガルナが来た。


「い、いや…」


今の状況を見たガルナは察したのか、ニヤリ、と笑みを浮かべる。


「ふーん、また罪を作っているのね」


「何の罪だ⁉︎」


嫌、何の事だか本当にわからないんだが…。


「それよりも、アルト。もうギルド名は決めたのかい?」


苦笑しながら、ヴェイグが問いかけてくる。

確かに、ギルド名はまだ決めていなかったな…。


「ギルド名か…。考えてなかったな…」


「エンジェルンです!」


「却下だ」


それ引っ張るな。

そんな…、と落ち込むメリルをルルさんが宥める。

すると、アイムが手を上げた。


「不可能を打開して、可能に変えるギルド…可能の星、ポッシブル・スター…というのはどうかな?」


可能の星(ポッシブル・スター)か…。

良いなそれ!


「俺は良いと思うぞ?メリルは?」


「私も賛成です!」


アイムがつけてくれたギルド名に賛成の言葉を述べる俺とメリル。


「それじゃあ、全会一致という事で、今から俺達のギルド名は可能の星(ポッシブル・スター)に決定だ!」


これから忙しくなる…。

だが、メリルとアイム…。

そして、俺達を支えてくれる人達がいる限り、俺は戦い抜く…。


見ていてくれ、歌音…!

新たな決意を胸に俺達は未だ続くパーティーを楽しんだ…。







俺達のギルドホームから少し離れた場所に俺を見張っていた男と少女がいた。


「それで…アイツ等はどうだったんだ?」


「私達程の力ではないけれど…いつか邪魔になるわ」


「じゃあ、潰すって事だな?」


男の言葉に少女は頷く。

ついに俺達を潰すと決めた少女は静かに男に呟いた。


「あの方の為…貴方にも手伝ってもらうわよ、夕霧 キリヤ」


「ああ、いいぜ。その為に俺をこの世界へ転移させたんだろう?手伝ってやるよ、女神、アナトスさんよ」


ニヤリ、と笑った夕霧 キリヤという男とアナトスという少女…。

その彼等にティラノサウルスの様なモンスターが襲い掛かったが…。


突如、ティラノサウルスの首が吹き飛び、身体が音を立てて、倒れた。

夕霧 キリヤの手には剣が握られている。


技能複写(スキルコピー)か…。俺の技能捕食(スキルプリディシャン)とどっちが優秀か…楽しみではあるな」


ケタケタ、と笑いながら、夕霧 キリヤは倒したティラノサウルスの肉を喰らった…。


夕霧 キリヤとアナトス…。

彼等の存在が俺達にどの様な影響を与えるか…。

この時の俺は知らなかった…。


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