アイム
翌日…。
俺達はイズルリの街行きの馬車に乗る。
見送りにメルド様やリィル様、騎士達やリフィルがいる。
「何から何まで世話になったな、アルト殿、メリル殿」
「お二人共、お元気で」
俺達はメルド様やリィル様と握手をする。
「お世話になりました」
「またお会いしましょう」
そして、俺はリフィルを見る。
「リフィル…」
昨日のリフィルの顔が忘れられるず、俺は俯く。
リフィルも浮かない顔をしていたが、顔を上げる。
「アルト!」
俺の名を叫ぶと俺の頬にキスをしてきた。
だからコイツは人目も気にしないで…!
「待っているから!また遊びに来てね!」
「…ああ。絶対に来る。またな、リフィル」
そう言い、俺とメリル、グレン、16は馬車に乗り込み、走り出した。
メリルは見送ってくれている人達に最後まで手を振り、帝都ガイールは見えなくなった…。
俺達の馬車が見えなくなり、騎士達も仕事へと戻る。
リフィルも戻ろうとすると、メルド様に肩を持たれる。
「良き友人を持ったな、リフィル」
「お父様…」
「私も国王様も…彼ならば、貴方の婚約を認めるわ」
それを聞いて、リフィルは頬を少し赤らめ、言った。
「今は私だけには向かないけど…いつかは振り向かせて見せるから…」
雲一つとない晴天な空を見上げ、リフィルは笑った…。
馬車に揺られる俺達…。
「16さん!これも食べますか?」
「そんなにいらない」
馬車に乗ってからと言うとメリルは何かと16の面倒を見ている。
まるで姉妹でも見ている様に…。
すると、何か思いついた様にグレンがある提案を持ちかけた。
「そう言えばよ。16って名前はアームドシリーズの番号の名前なんだよな?」
「そう…。正式的にはA16…」
「折角だからよ、新しい名前をつけてやろうぜ!」
…確かに、いつまでもアームズシリーズの名前ってのもな…。
「16はいいか?」
「別にいいよ」
さてと…名前をつけるにしても…。
すると、メリルが手を上げる。
「では、′′エンジェルン′′というのはどうですか?」
「「却下」」
「何でですか⁉︎」
メリルの名前に俺とグレンは却下する。
それにツッコミを入れるメリルは16に目線を向けるが…。
「それは無理…」
厳しいお方であった…。
本人にも却下され、メリルはシクシク、と涙を流す。
次にグレンが手を上げる。
「次は俺だな?火炎子、これに決まりだ!」
「はい、馬鹿野郎」
「何を言っているんですか?」
「お前等、酷いな⁉︎」
俺は兎も角、先程の事で腹を立てていたのか、メリルの言葉も痛々しい…。
16に至っては…。
「最悪」
でしょうねぇ…。
今度はグレンが落ち込む。
「今度はアルトさんの番ですよ」
視線が俺に向かうが、正直…何も出てこない。
「うーん、…と言われてもな…。16は何かいい名前とかあるか?」
俺は16にも問うと彼女は考え出し、小首を傾げる。
「…わからない。麻生 アルトの付けてくれた名前なら、何でもいい」
おい、責任重大じゃねえか。
「…でも、名前ってのは重要だからな…。適当につけるのもな…。悪い、この話は保留でいいか?」
「…うん、いいよ」
いつかはしっかりとした名前を付けてやらないとな…。
そんな話をしていると、俺達はイズルリの街へ着く。
馬車は帝都ガイールへと戻り、それを見送ったグレンは俺達に視線を移す。
「それじゃあ、俺もギルドの仲間達の所へ戻るぜ」
「世話になったな、グレン!」
「報酬はしっかりともらったからな。気にするな。それに、俺達、もうダチだろ?」
「そうだな」
俺とグレンは笑い合い、握手をする。
それを見て、メリルと16は微笑む。
手を離し、グレンはじゃあな!、と言葉を残し、一足先にその場を去った…。
さて、と振り返り、俺達はイズルリの街へ入ろうとすると…。
「長旅ご苦労様、アルト君、メリルちゃん」
声が聞こえ、振り向くとガルナが立っていた。
「ガルナ…迎えに来てくれたのか」
「たまたまよ、たまたま…。ん?そっちの子は?」
ガルナの視線は16に向かうが、その彼女はメリルの背後に隠れてしまう。
え…コイツって、こんなキャラだったか?
「あら…もしかして、人見知り?」
「いや、それはないはずだ」
しかも、ガルナの奴、若干傷ついてんじゃねえか。
「16、彼女はガルナ・シリング。情報屋で俺達の友人だ」
そして、俺は16についてもガルナに話した…。
「それは辛かったわね…。16《シックスティーン》ちゃん…。もう大丈夫よ、私は味方だから…」
「信じる…」
16の笑顔を見て、ガルナの目が輝き出した。
まるで小動物を見る様な彼女の表情…。
そして、16を抱き寄せ、頭を撫で出した。
「か、可愛い…!何なのこの子⁉︎魔導人形とは思えない可愛さ!」
…ガルナのキャラまで変わっていやがる…。
抱き寄せられている16は何とか抜け出そうと踠いている。
「…ガルナ、16が嫌がってるから、やめてやってくれ」
「でも、こんな可愛い子…!」
「…嫌われるぞ」
その言葉に名残惜しそうにガルナは16はガルナから離れ、俺に抱きついた。
その事にショックを受けるガルナ。
面倒臭い奴だな…。
そして、16自身もガルナを威嚇する様な視線を向ける。
そんなこんながあり、俺達はイズルリの街に入り、冒険者支援施設に入る。
すると、ルルさんが出迎えてくれた。
「アルトさん!」
「久しぶり…でもないな、ルルさん」
一応、ルルさんにも16について説明すると、ルルさんは目に涙を浮かべながら、16の頭を撫でた。
しかし、ガルナと違って、優しくだ。
ルルさんの撫で方に16も抵抗はせず、心地よさそうにしている。
まあ、それを見て、どうして私にだけ…!、と羨ましがっているガルナもいるが、無視だ無視。
「あ、そうだ。ガルナとルルさんの二人にも話があるんだけど…」
ガルナとルルさんにも16の新しい名前について話をした。
「うーん、16ちゃんの新しい名前ねぇ…」
「アルトさんがこれで良いと思った名前でよろしいのでは?」
…って、言われてもなぁ…。
「…じゃあ、アイムなんてのはどうだ?」
「…アイム?」
俺が口にしたアイムという名前に他のみんなは首を傾げた。
「いや…元の名前がA16だから、アイムでいいかと…」
それを聞いて、16以外のみんなはガッカリした表情で俺を見る。
「アルトさん…」
「貴方ねぇ…」
「名前は重要モノで適当につけてはいけないと言ったのは誰ですか…」
「いや、お前等が良いと思った名前で良いって、言ったんだろうが!」
頼むからそのジト目はやめろ!
肝心の16に視線を移すと…。
「アイム…アイム…」
俺が思いついた名前を連呼していた。
まさか、コイツまで俺を馬鹿に…⁉︎
「き、気に入らなかったか?」
戸惑い気味に問いかけると彼女は首を何度も横に振り、口を開いた…。
「アイム…良い名前…」
…マジで?
「い、良いのですか…?物凄く安直ですよ?」
「いいの。…彼が付けてくれた名前だから…」
待て待て、何故そこで頬を赤らめる?
「アイム…。これから、これが私の名前…」
笑顔で自分はアイムだと口にする彼女に俺達も微笑む。
「まあ…気に入ってくれたのなら、良かったぜ」
「うん。ありがとう、アルトお兄ちゃん」
何と、アイムは俺の事をお兄ちゃんと呼んだ。
しかし、俺は兄ではないと話す。
「待て待て、俺はお前の主じゃない。お兄ちゃんはやめろ。普通にアルトでいい」
「…マスター?」
いや、何でだよ⁉︎
普通に呼んで良いと言ったのに何故、マスターなんだよ⁉︎
「いや、だからアルトでいい!マスターとかマジでやめてくれ!俺はお前の主じゃない!」
「…私は私の決めた様に生きるって、決めた。だから、貴方はマスター…」
「それ言葉の意味が違っているぞ⁉︎」
ダメ?、と小首を傾げ、上目遣いで俺を見上げるアイム…。
その後ろでニヤニヤ、しながら俺を見るメリル達の姿があった。
…これは、もう、逃れられない…!
「あぁ、もう!わかったよ!お兄ちゃん以外なら好きに呼んでくれ!」
「わかった。それならマスターって呼ぶ」
クスクス、と笑うアイム。
もうかつての無表情だった頃の彼女ではなく、一人の本当の女の子の様な笑いを見せてくれた。
「これからよろしくな、アイム」
「うん、マスター」
微笑み合う俺達…。
こうして新たな仲間…16ことアイムが加入した…。
後はギルドホームが完成するのを待つだけだな!




